儲けの秘密~模倣困難性~(上)
同業他社が羨むほどの強力な商品・サービス、
ないしは事業というものがある。
「そういうものを作ると、そんなに売れるのか。ではウチもやろう」
と、同業他社は考える。
だが、本当にやろうとしてみると、早晩、頓挫する羽目になる。
「ダメだ。我が社ではできない……」と。
そして、首をかしげる。
「あの儲かっている会社は、なぜ、そんなことができたのか?」と。
結局、その理由を考えつかず、あきらめる。
あるいは、一生懸命調べるが、やはりわからずあきらめる。
運良く、秘密(儲けの仕組み)に到達する場合もある。
が、仕組みを自分たちが導入するのは無理だとあきらめる。
同業他社の参入を防ぐこの秘密は、
「模倣困難性が高い仕組みによる事業展開」ということになる。
一例。私自身のケースのである。
私は、NICeとは別に、株式会社タンクという制作・編集会社を経営している。
この会社で、1999年から2007年までの8年間、
『独立事典』という200ページ超のムックを、年2回編集してきた。
リクルートが発行する『アントレ』の別冊という位置づけで書店に並んだ。
1冊980円のこのムックが、化け物のように売れる。
広告宣伝なし(広告費0円)で、10万部印刷して、
実買率が80%台というしろものだった。
出版・雑誌業界の方なら、「信じられない数字だ」と思うはず。
よく売れるから、当然、よく広告も入る。
(もちろん広告営業担当者の奮闘あってのことだが)
で、他の出版社や新聞社なども、同様の本を出そうとした。
が、計画段階で断念したり、
何号か出して廃刊になったりした。
なぜなら、「つくれない」からだ。
『独立事典』には、全国津々浦々の3ケタに達する起業・独立事例が
記事として掲載されている。
マスコミに取り上げられるようなことのない、
小さな独立事例も山ほど掲載している。
競合他社には、それが大きな壁なのだ。
「なぜタンク(私の会社)は、そんなにたくさん、
しかも日本中の独立事例や起業家の様子を知っているのか???」
つまり、他社はネタを集められないのである。
一方の我が社は、ネタなら売るほどあるのである。
(って、実際、記事にして売っていたわけだが)
ここに儲けの秘密があるし、
仮にその秘密をバラしたところで、
他社にはまねできない仕組みがあったのだ。
その秘密とは? 仕組みとは何か?
(下)に続く。
<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>