「第4回 NICe全国定例会」レポート
「第4回 NICe全国定例会」
2010年9月27日開催 第4回 NICe全国定例会
「第4回 NICe全国定例会」は、2010年9月27日(月)、プレゼンテーターに株式会社GDP 代表取締役・鈴木一樹氏を迎え、「NICeさんちゃ」で開催されました。
プレゼンテーターを務めた、
株式会社GDP 代表取締役 鈴木一樹氏
エコな自転車広告を全国へ!
だが、条例に阻まれ資金難に。
どう挽回する? 進路はどっちだ?
(左)司会は佐藤浩司氏。WebカメラはここからUstream+Twitterで映像配信
(右)ファシリテーターを務めるNICeチーフプロデューサー・増田紀彦氏からあいさつ
【プレゼンテーション】
「自転車広告事業における1年4カ月の経過報告と、ビジネスモデル確立に向けて」について
環境に優しいエコな自転車広告『アドクル』を展開している株式会社GDP・代表取締役の
鈴木一樹氏は、かつてオーストラリア在住時に目にした自転車広告サービスが、日本にはないビジネスであることに着目し、自転車の輸入元と総代理店契約を結び、2008年8月に日本で起業した。
『アドクル』とは、広告盤を搭載した特製の3輪自転車による広告メディアで、通行人と同じスピードで走行することにより、広告への注目度と親近感を高め、ドライバーと通行人とのコミュニケーションや、高輝度LEDライトによる夜間広告も可能にしたもの。排気ガスはもちろんゼロで、トラック広告に比べて車幅も明らかに小さいため、走行範囲の小回りも効く。そのため、環境意識が高くCRSに注力する企業や、特定の地域での広告効果を望む店舗からのニーズが多い。
鈴木氏は、自社ドライバーによる走行サービスと、ロイヤリティなしで車体リースを含むパッケージでの全国販売展開を目指し、まずは一般道で走行するための走行許可を2009年5月に警視庁から得た。また、同月に旧NICeの第1回定例会(レポート)でプレゼンテーターを務め、NICeメンバーから多数の意見やアドバイスを得て、まさに、順風満帆に走行スタートを切る、かに思えた。
だが、それから1年4カ月。東京都の屋外広告条例をクリアできず、苦闘の日々が続いた。鈴木氏は、自身の拠点が東京であること、また広告依頼主のほとんどが都内の企業であることなどから、東京都での走行を切望していたが、許可が下りないために、広告依頼がありながらも断らざるを得ない状況が続いていたのだ。
その間、再三にわたり東京都と交渉を続けるが状況を打開できず、他府県での走行実績がありながらも資金繰りは悪化の一途。
2010年6月には、鈴木氏は東京都に関して望む結果を得るのは困難だと決断を下し、経緯をつづった自身のブログからもその記述を削除。この1年4カ月の出来事を、その時々の気持ちを冷静に述べながら赤裸々に報告した。
近況としては、地道に営業に取り組んだ成果として、同年9月に日本経済新聞に『アドクル』が取材掲載されたのを機に、環境に配慮した企業やメディア取材の申し込みが寄せられていると、明るいニュースも報告した。
鈴木氏は、「昨年5月スタートのはずが、今まさにスタートラインに立った心境」と語り、収益性があるビジネスとしての再スタートを果たすべく、今後の方針のブラッシュアップと課題克服のために、今回のプレゼンテーションに臨んだと意欲を語った。今後は、単なる走行サービスにとどまらず、広告主の利益数値の可視化(チラシ配付、クーポン発行、QRコード広告、フェリカリーダーを利用した会員登録、自社での広告効果測定など)を図り、本社機能を強化したうえでのボランタリー・チェーン化を目指したい方針。そのための課題として、1.本部の営業力の強化、2.資金調達、3.本部のマンパワー増強、4.ビジネスモデルの確立、の4項目を挙げて、プレゼンテーションをしめくくった。
【参加者からの質問、意見、提案、アドバイス】
◆条例に関する質問
・屋外広告条例は、固定の広告ではなく動くものの広告も規制されるのか。規制に自転車が明示されていないのであれば、本来は問題がないのでは?(齋田和夫氏)
・許可する側の認識は逆の発想だと思う。条例に含まれていればOKで、記されていなければNGという判断(小谷野幸夫氏)
・東京都との交渉がもどかしい。せっかく福岡市や川崎市で走行できたのだから都以外で取り組んではどうか(石田恵海氏)
→実際に広告の依頼があるのは都内が多い。そのため、都内での走行にこだわってきた
・広告代理店が絡んでいるのであれば、代理店から交渉してもらっては。また、申請すれば許可が下りないことが多いので、逆に申請しないのも手では?(武本之近氏)
→代理店からは、それは自社で対処すべき問題と言われている。申請しない件は、万が一走行時に警官がドライバーに質問などすれば、通行人がその光景を目にし、広告に対するイメージが損なわれることが懸念される。広告主への配慮から、許可を得ることにこだわりたい
・公道ではないイベント会場などでの走行も認められないのか?(藤原純衛氏)
→都内の公園などでも屋外広告条例が適用されるのでNG。私有地ならばOK
◆広告主の利益数値の可視化、事業展開について
・効果の即時性を望むならクーポンはわかりやすい(小谷野幸夫氏)
・プレゼンにもあったフェリカのほかに、ネットでのアンケート収集やメアド獲得はビジネスモデルになりやすい(齋田和夫氏)
・iPhoneアプリのような、リアルタイムでダウンロード数がわかるのは企業に喜ばれると思う。また、個人経営の店は大きな広告を出しにくいのでお勧め。地域性も独自性もあるし、効果もわかりやすい(原克也氏)
・ファッション系などの広告宣伝は効果数値が難しいが、データが得やすいのはパチンコ業界だと思う。整理券を配付するなどすればわかりやすい。データが得やすいのは、人がすぐに行動を起こす業界だと思う。また、通行人の反応を街頭ビジョンのように上から撮影するのも効果的(武本之近氏)
・エコといいながらも広告としていかがかと思うような業界もある。そういうのは逆効果ではないか。観る人が不快にならない、楽しい広告で、Twitterで話題にするとか、ウォーリーを探せのようなゲーム性があったら話題にもなりやすい(石田恵海氏)
プレゼンの合間にこれまでの走行実績の
ファイルが回覧された
・組合で取り組んでいるような大きな商店街や大きな駅のコンコースはどうだろう。駅構内の旅行会社のツアーパンフレットを手にする人を多く見かけるので、アドクルにラックを付けて走行する。効果もわかりやすいのではないか(田村康子氏)
・搭載できる広告が両面とはいえ、1社なのはもったいない。電子広告にして、時間帯や場所で入れ替われるようにしたら参画数も増えるだろう。また、イベントなどではモニターとしても使え、動画での広告を配信して購買をうながす方法もある(相澤松吾氏)
・動画広告で朝の通勤時、昼の時間帯、夜はというように、何社かの広告を時間帯で料金設定も変えて登載してはどうか。そうすれば、同じエリアで広告依頼も取りやすい。地域に根ざした広告主のほうが、人と触れ合える自転車というコンセプトに合うと思う(上久保瑠美子氏)
・たとえば東京の丸の内で「今日のランチは○○丼」のような活用もありだと思う。アナログだか即時性は高い(小林京子氏)
・セールの時期に繁華街を走行するだけでも効果はあると思う(細谷裕代氏)
・オープンしたての飲食店(ラーメン店)などは数値化しやすいのでは(桑原陵氏)
・自転車のドライバーが取材することも可能(原澤雅和氏)
・環境に関係する商品の広告などはどうか(目次哲也氏)
・婚活、結婚式場などの連携でプロポーズやメッセージ、赤ちゃん誕生、仲直りなど日本中を一家族として考える発想。全国で道を歩きながら喜べるといいと思う(大山美幸氏)
・CSRに注力している企業から営業しては(前田政昭氏)
◆ビジネスモデルの確立に向けて
・氏の事業の強みを考えると、直接的な効果数を狙うことに疑問を感じる。効果の数字ではなく、視認性が強みではないのか。集客数でカウントする効果測定そのものが古い方法ではないのか。視認率が強みになると思うので、どれだけの人が見ているのかをビデオ撮影し、それをYouTubeで流すとか、広告主あてに映像を送るとか。営業的にも、都内では難しいのであれば、映像を地方都市の経営者に見せたほうが、効果予想数字よりも感覚的に理解を得やすいと思う。また同様に、地方都市で力のある広告代理店にアドクルをひとつの武器にしてもらいやすいのではないか(鬼頭秀彰氏)
・鈴木氏ひとりでできるかマンパワーが問題だが、車体レンタルで終わりではなく、広告業務を含めたサービスを提供できたら企業に喜ばれると思う。アドクルのキーワードは、エコでnetだと思う(齋田和夫氏)
・オーストラリアで見たのをきっかけに会社設立したとのことだが、日本以外の国での成功事例の中で、モデルにしたいケースを参考にしては?(黒岩芳隆氏)
・競合にとっては、障壁は高そうで低いと思われる。企業体力が問題だとは思うが、スピードアップを図るのは急務だと感じる(高橋光二氏)
・強みは、デジタルではないと感じた。自転車を使うということは、その瞬間、そのエリアで呼べるのだから、ほかの徒歩による広告媒体とのコラボもありだと思う(菅沼之雄氏)
2009年9月、NICeメンバー菊池徳行氏の協力で東京都豊島区池袋で走行(写真左)、
2010年4月、アースデイ東京2010のパレードで走行(写真右)
【プレゼンテーター鈴木一樹氏の感想と今後の抱負】
改めて、我を忘れて無にならねばと思いました。今日の意見交換でいただいた多数のコンセプトは、それぞれがプロジェクトになるような内容でした。到底ひとりで実行することはできませんが、これだけコンセプトが多く出たということは、それだけ可能性があると言えると同時に、これまで何ひとつ、特化していなかったのだという意味で反省もしました。10以上もの提案を、できればプロジェクト化できたらとても理想ですが、それは同時に、これだけの競合の出現も十分に想定できるということでもあります。その危機感を持って、スピードアップを図る必要性を強く感じました。これまでは条例を通すことに注力し、媒体会社のひとつとしての意識だったと思いますが、その気持ちも改めたいと思います。広告主とじかに話しをし、ヒアリングし、企業が何を求めているのかを突き詰める必要を大いに感じたので、コンセプトを見直し、どこに特化していくのかを決断し、早急に実践的な行動にうつしたいと思います。
【ファシリテーター増田紀彦氏から一言】
鈴木さんのプレゼンを聞いて、この1年4ケ月の苦闘ぶりがうかがえました。そして、起業というのは、こうも人を成長させるのかという思いも強く感じました。前回のプレゼンから今日まで、そして今後の展望について語ってもらい、その問題点をNICeメンバーで共有できることは、鈴木さん本人だけでなくメンバーにとっても価値がある会だったと思います。意見交換での活発な発言では、改めて、NICeのレベルの高さを実感しました。課題を咀嚼し、意見に意見を重ねることで、賛同するだけでなく、その考え方を発展させる、視点を変えていく。そんなプロセスをみなさんも目の当たりにしたのではないでしょうか。新NICeになり、参加者の意識が高まったと思えると同時に、私自身もさらに成長し、NICeを有意義なものにすべく尽力しようと決意を新たにできました。旧NICe定例会の第一回プレゼンターが今夜また壇上に登ったことは、その意味でも記念すべき日になったと言えます。
都内を中心に埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県から
総勢27名が参加。定例会を終えた直後、笑顔の集合写
真。次回の定例会は10月25日に名古屋、11月20日に
は大阪、12月20日には神田『なみへい』で忘年会を
兼ねて開催予定。お楽しみに!
車体写真提供 株式会社GDP
取材・文、撮影/岡部 恵