vol.205 特別号【増田紀彦代表から3.11メッセージ】
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Vol.205 2024.3.11
つながり力で起業・新規事業!メールマガジン
起業支援ネットワークNICe https://www.nice.or.jp
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今号のメールマガジンVol.205は
特別号として、3.11メッセージをお届けします。
このメルマガは、NICeの活動に参加された方々、
またはNICe代表理事・増田紀彦と名刺交換をされた方々、
および全国の起業家、経営者、農林水産事業者、起業・創業希望者、
地域振興関係者、中小企業支援・創業支援機関、一次産業支援機関の方々へ送信しています。
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NICe代表 増田紀彦から3.11メッセージ
笑う門には、いつかきっと、福来る
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一昔前に、沖縄で大ウケしたという小咄(こばなし)をひとつ。
沖縄在住の4人組が念願の本土旅行を決行。
レンタカーを借り、ドライブへ出かけたところで検問に引っ掛かった。
警察官「はい。停まって。運転手のキミ、名前は?」
A「ウンテンです」(沖縄の観客大笑い)
警察官「いや、運転はわかっている。名前はなんだね?」
A「ですので、ウンテンです」
警察官「もういい。助手席のキミ、名前は?」
B「ナカマです」(沖縄の観客爆笑)
警察官「仲間なのはわかるよ。名前はなんだね?」
B「ですので、ナカマです」
警察官「ああ、もういい。後ろの彼女、名前は?」
C「オンナです」(沖縄の観客大爆笑)
警察官「そりゃ女だろ。そうじゃなくて名前は?」
C「ですので、オンナです」
警察官「しょうがないなあ。じゃあ、隣のボクちゃん、お名前は?」
D「ガキや!」(沖縄の観客超々大爆笑)
言うまでもなく、4人はちゃんと自分の姓を名乗っている。
ウンテンは運天、ナカマは仲間、オンナは恩納、ガキやは我喜屋。
いわゆる自虐ネタだ。
古くから日本本土とは別の文化圏を形成してきた沖縄。
しかも地理的・歴史的に本土との距離感は大きく、
沖縄の人たちの姓をあらかた認識している本土の人間は少数だ。
「自分たちは認められていない」。
そんな寂しさや悲しさを逆手に取って笑いに変える、
沖縄の人たちの精神性には頭が下がる。
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東日本大震災発生から13年。
あの災害のあと、私ができたことは、ささやかだった。
2011年4月、私とNICeの小林理事、岡部広報の3人は、
福島市在住のNICe会員のクルマに同乗し、支援物資を持参して、
福島県の南相馬市、相馬市、新地町を訪れた。
その光景たるや……。
目に入るものすべてが現実とは思えなかった。
いったい、何をどうすれば……。
私は自分の無力さに苛まれたが、
それでも、できることは何かあるはずと言い聞かせた。
被災地から離れた場所で考える「支援」と、
実際に被災地に立って思う「支援」には差がある。
もちろん、物資や資金、情報の提供、
あるいは復旧作業の手伝いなど、すべてが有効だ。
しかし、苦難を強いられている人を目の前にした時、
ひとりの人間ができることは、さほど多くない。
青臭い言い方だが、精一杯、心を通わせる。それしかないと思った。
とにかくこの人(たち)の力になろう。
そう念じ、相手と目を合わせ、言葉をかける。
すべてはそこからだ。
相手は被災者、私は非被災者という、厳然たる違いはある。
だが、同じ時間、同じ場所にいる者同士には、
立場を超える何かが漂っている気がした。
人間が本来的に有している共同体性の力かもしれない。
言い換えれば、「何かのご縁」の力。
その根源的な力を信じ、物資を届けて撤収するのではなく、
被災した人たちに「かかわる」ことこそが大事と考え、そうした。
何をしたか。
津波で破壊された介護施設の職員たちに、
一言、ジョークを言った。それだけだ。
もちろん、甚大な災害を被った人たちに対し、
「軽口を叩くなどもってのほか」という思いもあった。
なら、ほかに何ができる?
自問するほど、私の武器は口先しかないという結論になる。
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たかがジョークを言うか言わないかで、
何を大げさに語っているのだと、思われるかもしれない。
でも、私は心底真剣だった。
実は福島市からクルマで沿岸部に向かう道中、
数えきれないほどの自衛隊車両と行き違った。
濃緑色の車列を目にしているうち、
私は沖縄の基地を思い出し、
その流れで、冒頭に紹介した小咄を思い出していた。
一服の笑いが、苦しむ人の力になるかもしれない……。
現地に到着し、その惨状の前に、やはりジョークは無理かと、
半ば諦め気分だった私に、天が味方した。
それまでの晴天が一変し、にわかに雹(ひょう)が降り始めたのだ。
体に当たれば痛いほどの大きな雹。
くだんの介護施設の人たちが、かろうじて残った寝具を洗濯し、
ようやく干し終えたタイミングだった。何と気の毒な……。
あわてて干し物を取り込む職員たちに対し、私は今だとばかり、
「あ~あ~あ~、完璧に裏目に出ちゃいましたねー (笑) 」と、
ツッコミを入れた。
勇気を振り絞った甲斐があった。
職員たちは、走り回りながら大笑いしてくれた。
あの笑顔を生涯忘れることはない。
屋根が落ち、壁がそっくりなくなっている家屋、
道端に打ち上げられた船舶、ねじ切れてしまった鉄道のレール……。
そんな景色をバックにしても、人は笑えるものなのか。
笑えるものだった。
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笑いで問題が解決するはずもない。
しかし、沈み込んでしまった気持ちや、
凝り固まってしまった無力感を抱いたまま、
何かを解決しようとするのも、困難ではないだろうか。
介護施設以降、私は東北3県を訪ねて笑いを取りまくった。
芸人ではないので、「復興のための起業セミナー」の開催を通じ、
参加者とのやりとりの中で、笑ってもらうことに努めた。
むしろ笑わせるより、私が笑うほうが最初は難しかった。
セミナー中、突拍子もないアイデアを口にする参加者もいる。
普段なら大笑いして、
「そりゃ天才的な考えだなあ」などと感想を返すのだが、
それを口にした人の背景をおもんばかると笑えなかった。
でも、思い切って笑う場面では笑うことに決めた。
私が笑うと参加者たちも笑う。つられて発言した人も笑う。みんな笑う。
すかさず「この調子でどんどん面白いアイデアを出していこう!」と、
参加者のテンションを引っ張り上げることができた。
やはり、笑いはすごい。
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先日、テレビニュースを見ていたら、
石川県七尾市の一本杉商店街の方がインタビューを受けていた。
商店街をどのように再興するか、それについて、
宮城県南三陸町さんさん商店街の三浦社長からアドバイスを受けたそうだ。
「できることからひとつずつやっていけばいいと言われ、ほっとした」。
そう語る七尾の商店街の人の笑顔は目映いばかりだった。
石川県能登地方の完全復興は、容易な道ではないと思う。
それでも、一歩ずつ前へ進めたこと、
そして一歩ずつでもよいと思えることに、
救われる思いだったのだろう。
きっと七尾市の人は、
遠く離れた南三陸町からアドバイスを受けることになるなどと、
夢にも思っていなかったはずだ。
災害自体は何一ついいことはないが、
その後の道筋の中には、大小様々な喜びも散りばめられる。
南三陸町の三浦社長の的確なアドバイスと優しさに、
「超NICe!」と、心から賛辞を贈りたい。
余談だが、テレビで三浦社長のお顔を久しぶりに拝見した。
それなりにお年を重ねられていた。
3.11から13年だもんな。もちろん私も年を食った。
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長く、この「3.11メッセージ」を書いてきた。
初めの頃は、「何年かすると書かなくなるのだろう」と想像していた。
苦しい出来事も、やがては過去の出来事になる。
漠然と、そう思っていた。
しかし、3.11からわずか5年後に熊本を大地震が襲った。
その後も、列島各地が水害に見舞われ続け、
2020年には新型コロナ感染症で、日本も世界も危機に陥った。
鎮静化したかと思えばロシアが戦争に踏み切り、世界経済は大混乱。
そして今年元日、今度は能登地方が大地震に襲われた。
また、3.11で事故を起こした福島第一原発の廃炉は進まず、
さらには、地球温暖化の悪影響が年々目に見えて深刻化している。
この13年間を振り返って、笑える話など、何一つなかった。
そうなのだ。
笑える状況など、本当にないまま月日が流れてきた。
ならばどうする?
笑えるようなシーンを自ら作り出すしかない。
これを書いている今、千葉県を震源とする地震が頻発している。
正直、不安はある。
だったら腹を括り、備えられるだけの備えをして、
運良く生き延びられれば、三浦社長が言うように、
できることからひとつずつやっていけばいいのだ。
前を向いて歩き出せば、必ず笑える。
笑えば、必ず前へ進む力が湧いてくる。
そう、笑う門には福来る! である。
<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
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