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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
当事者意識はいらない。当事者なのだから


東海テレビの破廉恥な番組スタッフへの怒りが渦巻いたのは最近のこと。

同社の情報番組のプレゼント発表コーナーで、
岩手県産米の当選者を「セシウムさん」などとボードに書いて放送した事件だ。

それにしても、あの心ない「おふざけ」を発案した人は、
いったいどんな気持ちからだったのだろう……。

悪く取れば、放射能汚染など、他人事だと思っている。
ないしは、仕事柄、「事件ボケ」を起こしてしまっている。
あえて好意的に取れば、異常事態に過剰反応してしまっている……。

真実など知るよしもないし、またそれがどのような理由だろうと赦免される話でもない。

それはさておき、私がこの事件を知ったとき、最初に感じたのは、
「東海テレビだけでなく、東海地方の人たちのことまで、
悪く思ってしまう人が出てしまうかもしれない」という不安だった。
加えてマスコミ全般を悪く思う人も出てくるだろうと。

「なんだかんだきれいごとを言っても、
地震も津波も放射能も風評被害も受けていない地域の人たちは、
結局、他人事だと思っているのだ。日本人は、つながってなどいない」

そんな声が今にも聞こえてきそうだ。
実際の話、震災や放射能汚染を他人事だと思っている日本人は、相当数いると思う。

もちろん、そうじゃない日本人もたくさんいる。
だがやはり、どこかで他人事だと思っている人のほうが、多いのかもしれない。

そういう人たちに向かって、
「同じ国で起きている苦しみなんだ」と、
声を枯らして訴えたところで、なかなか伝わらないとも思う。

当事者意識を持て。

よく、そういう言葉を使う。

だが、自分と関連づけてとらえることのできる問題範囲は、
人によって、どうしても差がでてしまうものだ。

だから、そんな訴えでは意味がないし、
実際、それは正しいメッセージではない。

私はいま、この国のすべての人々に伝えるべき言葉は、
「当事者意識を持て」ではなく、
「日本人全員が当事者なんだ」
ではないかと思う。

わずか十数年のあいだに、
阪神淡路、中越、柏崎、岩手宮城内陸、
そして3月11日の東北太平洋沖と、巨大地震が繰り返される日本だ。
もちろん、3.11で最後などという保証は何一つない。

日本の地震発生回数は、他国平均の150倍だそうだ。

日本人の誰もが、地震列島に暮らしていることを自覚しなければならないし、
リーダーは、自覚を促さなければならない。

と、同時に、
北海道から九州にまで広がる原子力発電所や核燃料処理施設を見れば、
そして、それらが公表されている範囲においても
かなりの事故を起こしてきたことを見れば、
日本人の誰もが、原発列島に暮らしていることを自覚しなければならないし、
同様に、自覚させなければならない。

この国に暮らすことのリスクにおいて、例外となる日本人などいない。

地震も放射能も、自分自身の身に降りかかってくる問題であることを理解し、
受け止めよう。
リーダーは、人々にそれを理解させ、受け止めさせよう。

科学(技術)面で、財政面で、外交面で、そして生活と健康と精神の面で、
それらにどうやって立ち向かうのかを必死になって考え手を打つことを、
政府も国民も何より優先していくべきだ。

自分が、危機の当事者であることをちゃんと知れば、
たとえば、東海テレビのスタッフも、あんなことはしなかっただろう。

私は、東海テレビ事件の真の責任者は、
1000年に一度に当たってしまった時代のこの国に生きることの意味を
しっかり国民一人一人に伝えていない為政者にあると思った。

ないしは、伝えようにも伝えられないのだとすれば、
もうこの国の国家運営システム自体が限界に近いのかもしれない。

しかし、いま、そんなことを言っていてもはじまらない。
私たち自身が、どうするかだ。

家族も仕事も暮らす場所も失い、なお放射能汚染にさらされる人たちのことを
みなさんは、どう思うだろう?

気の毒だと思うはずだ。

でも、その人たちは、「明日の自分かもしれない」と本気で思えば、
気の毒だけでは済まない気持ちにならないだろうか。

苦しむ人たちを助ける方法を何か考えたい、もっと実行したい。
きっとそう思うはずだ。

なぜなら、それが明日の自分を救う手立てのひとつになるからだ。

当事者意識などいらない。

私たちは、みな当事者なのだから。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

 
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