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vol.151【増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」第36回:ムカチのカチカ】



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Vol.151           2021.10.11
つながり力で起業・新規事業!メールマガジン
起業支援ネットワークNICe https://www.nice.or.jp

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このメルマガは、NICeの活動に参加された方々、
またはNICe代表理事・増田紀彦と名刺交換をされた方々、
および全国の起業家、経営者、農林水産事業者、起業・創業希望者、
地域振興関係者、中小企業支援・創業支援機関、一次産業支援機関の方々へ送信しています。


  ┃目┃次┃ ┃ ┃ ┃ ┃ 
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【1】シリーズ増田紀彦の
  「ビジネスチャンス 見~つけた」
   第36回 ムカチのカチカ
   
【2】先輩経験談 
   あるある!ピンチ&リカバリー
   第28回 岡田昭彦さん(北海道)
   
   
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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」

     第36回 ムカチのカチカ
 
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「ザコバコ」……。

漁獲したはいいが、サイズが小さかったり旬を過ぎていたり、
あるいは、そもそも商品としては出回らない魚種だったり……。

そんな「1円にもならない」魚たちをまとめて詰め込んだのがザコバコ、
つまり「雑魚箱」。

およそ11分の短編映画『ムカチのカチカ』の開始数分、
主人公のビジネスマン甲斐昂成(駿河太郎)は、たまたま訪ねた魚市場で、
そのザコバコの中身が捨てられかかっているのを見かけ、
あわてて漁師(でんでん)に頼み、まるごと譲ってもらう。

巨大企業組織の中で消耗を続ける自分と、
「価値がない」と捨てられかかった雑魚たちとがオーバーラップしたのだ。

自宅に戻り、雑魚の中の一匹を丹念に調理して食す甲斐。
映像を見る限り、その一匹はカゴカキダイだ。

高めの体高と強烈なストライプ模様のせいで、
一般の人が目にすれば、いかにも熱帯魚と勘違いしそうな魚。
それこそ沖縄の海でよく見かけるチョウチョウウオにそっくり。

「食べられるのか?」と首を捻りたくなる見た目だが、
実際は煮ても焼いても美味いし、もちろん刺身でもいける。
映画の主人公は塩焼きで食べていた。
演技だとは思うが、身を口に運んだ瞬間、
思わず表情がほころんでしまうシーンが実にいい。

映画『ムカチのカチカ』は、
スモールビジネスを対象に、クラウド会計サービスなどを提供するfreeeが、
2020年11月に制作した実話にもとづく作品。

これまで、映文連アワード2021の準グランプリをはじめ、
国内外の様々な映画賞を受賞している。作品は以下で視聴できる。
https://youtu.be/Or8fS77PyFQ

主人公は、この出来事を契機に起業を目指す。
実現したのは、雑魚をメインにした魚料理の店。


映画のモデルとなった甲斐昂成さんが営む「カイズキッチン」は、
神奈川県の二宮町に実在する。
二宮は小田原と大磯に挟まれたのどかな町で、
店から少し歩けば太平洋の大海原が広がっている。

1カ月ほど前だったか、神奈川県に住む友人が、
家族連れで「カイズキッチン」に出かけ昼食を取ったと言って、
その時にオーダーした天丼の写真を見せてくれた。
 <お詫びと訂正:
 「天丼」ではなく、正しくは「海鮮丼とフライ定食」でした。申し訳ありません>

ネタは魚ばかりで6種類ほどだったと思うが、
はてさて、見たこともない魚ばかり。
それでも「本当に美味しかった」と友人の弁。
それはそうだろう。
目の前の相模湾で獲れたばかりの魚たちだ。美味しいに決まっている。


無価値な物は、もともと無価値だったわけではない。
というか、価値のない物体など、存在しないと言ってもいいだろう。

人間のすごさは、どんなものでも活用し、利用し、
あるいはそれらを加工し、合体し、分解して、
暮らしや仕事をより便利に、より豊かにしていくところにあるし、
そのための努力を寸分も惜しまないところにある。

つまり人間の手にかかれば、万物すべてに価値が宿る。

ただ、効率を重視する市場経済の広がりによって、
その流れから取り残されたものたちが「無価値」の烙印を押されてしまった。

さて、無価値に思えるものを価値化して成功した例でいうと、
多くの人の頭に浮かぶのは、徳島県の“葉っぱビジネス”かもしれない。
“葉っぱビジネス”は、和食を美しく彩るための「つまもの」、
つまり、季節の葉や花、山菜などを採取・栽培して出荷する事業だ。

あるいは無価値どころか、町中を泥だらけにしてしまうやっかい者の、
鹿児島県の桜島の火山灰を建築材料化した事例や、
漁網を食い破るヒトデを野菜栽培用の肥料にした北海道の事例、
出荷後に大量に出るホタテ貝の貝殻から洗剤を作り出した青森県の事例など、
調べれば、こうした素晴らしい取り組みが全国各地で行われている。

これら、ムカチのカチカ成功事例に共通することは何か?
いずれのケースも、最終商品になった段階で、
もともと世の中にあったニーズに応えるものになっている、ということだ。

カゴカキダイは知らなくても、美味しい天丼を口にしたい人はいる。
山ぶどうの葉は知らなくても、綺麗なつまものを使いたい料理人もいる。
火山灰やヒトデや貝殻など、何の役にも立たないと思っている人でも、
安くて良質の建築材料や肥料や洗剤を欲しいと思っている。

映画『ムカチのカチカ』の後半のシーンに、
拾った石にペイントをしたものを、ひとつ50円で売る少年が登場する。
その心意気や、実によしである。
だが、大人は、そのレベルでとどまってはいけない。

無価値を価値化するためには、
換言すれば、認知のない商品で対価を得ようとするのなら、
その商品が、顧客ニーズを完璧に捉えていることが必須である。
その点をしっかり念頭に置いておこう。


余談。
実は私、もし今の仕事をやめたとしたら、
普通の鮮魚店や料理店が扱わないような、
「無名なせいで、美味しいのに評価が低い魚たち」を扱う店を始めたい、
ずっとそう思ってきた。なので甲斐さんの挑戦に拍手喝采である。

もっとも私が代表を務めているNICeも、
「無名なせいで、才能があるのに評価が低い起業家たち」を、
どうにかして世に送り出そうとしているので、
通底する価値観自体は何も変わらないのかもしれない。



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「先輩経験談 あるある!ピンチ&リカバリー」

第28回 
取引先から400万円未入金&在庫2トンも背負う羽目に。
失敗から学んで改善行動へ、チャレンジ意欲を失わず

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起業したては誰もが新人。独立してから遭遇する、
始動して初めてわかる、直面するピンチや悩みの数々。
そんな「起業あるある!」事例から学ぶシリーズ。

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 岡田昭彦さん 2014年設立
 北海道帯広市
 
 株式会社おかだ商産 代表取締役
 とかちビュッフェ(十勝食材フェア)代表
 http://infomartes.com/tokachidaisuki/
  
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食材豊富な北海道十勝に生まれ育ち、
BtoBで食材卸販売業を営む岡田さん。
コロナ禍の影響により、飲食店との取引は激減した。
ならば、加工業者へシフトしようと営業に奔走し、
並行して、空いた時間は学びの時だと気落ちも切り替え、
一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会の
BMIA認定コンサルタントの資格も取得した。

「ピンチコンテストがあれば、僕はグランプリかも」。
そう笑う岡田さんだが、起業2年目に、
400万円の未入金事件に遭遇したという。
どんなピンチ? どう乗り越えたのか?

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「相手は全国に5店舗を持つ飲食店で、それまで1年以上の取引がありました。
それが、年末に、いつも以上の大量注文があって、
大丈夫かなと思いつつも、実績があったので信用したのです。
ところが、400万円未入金のまま、ついに音信不通に。
回収業者に追ってもらいましたが、逃げられました。
泣き寝入りです。
しかも、今後の注文も見込んでいたので、在庫2トンが残ったまま。
この処分のほうが急を要しました。
倉庫代もかかるし、廃棄するとしても費用がかかる。
ならばと、片っ端から電話して、全国の子ども食堂へ寄付したのです。
周りの友だちは、美談だと言ってくれますが、
まぁ、1年間は利益も出させてもらったので、
差し引きして、高めの授業料を払ったと思うしかないですからね。
その後も、旧知のシェフに100万円くらい、だまされました(苦笑)。

こんな僕のエピソードを聞いて、
『起業は大変そうだからやめよう』と思われるのは嫌です。
失敗の1つや2つは誰だってあるじゃないですか。
それは会社員でも学生でも同じでしょ?

ただし、3度目はもうないように、費用はかかるけれど
与信管理サービスを利用したり、現金取引にしたり、
何より、自分の直感を信じて、
少しでも怪しいと感じたら、回避方法はありますからね。

最近の座右の銘は、
“失敗は次の成功につながる学びの宝庫である”。
“常に客観的事実に基づいて意思決定するなら、経営者は必要ない”です。
失敗から学ぶそのものも貴重だし、改善することで回避できるし、
実行することで喜びは大きいです。そして人とつながる喜びも。
ずっとBtoBでやってきたので、
新しい販売形態のライブコマースもやってみようかと、
地元の経営者仲間と研究会を始めたところです。

もともと、僕は起業前からの人脈とご縁・経験をフルに活かして、
地元生産者のニーズに応え、卸だけでなく物流にも注力してきました。
食材卸だけだと、いかに食糧宝庫・十勝とはいえ、
どうしても、価格競争レッドオ―シャンに飲み込まれてしまいますから。
農作物を生産するのは得意でも、消費地にどうやって届けるか。
物流を考えるのが手間、面倒と思う農家さんは少なくない。
ならば、ここを引き受けようと、物流に重きを置いてきたのです。
どんな状況でも、人はモノを食べるし、モノを届けるのは物流ですから。
仲間と計画しているライブコマースでも、
自社の強み=物流で貢献できるかなと。

いつか、物流センターをつくりたいし、
いずれ、若い人たち、起業家を目指す人たちの応援もしていきたい。
起業する前ってエビデンスばかり探すけど、誓約なんてないからね。
自分でサイコロを振って、決断して行動して、またサイコロを振る。
起業すると、学びが尽きなくて、面白いですよ!」

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   あなたの挑戦を応援しマッスー☆
      ワンポイントガイド
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ほんと岡田さんの言うとおり。「起業は大変そうだからやめよう」
なんて私も思われたくありません。でも、このメルマガの読者なら、
失敗は起業家の血となり肉となる貴重な財産であることをご存じで
しょうから、気にせずにぶっちゃけます。私、増田の場合は、岡田
さんのちょうど10倍の4000万円を踏み倒されたことがあります。た
だ、岡田さんも私も、それでも事業を続けていられるのは、岡田さ
んならその売上以外に数千万円以上の売上があったのでしょうし、
私の会社はほかに数億円の売上がありました。個人の感覚だと400
万円や4000万円は高額ですが、事業規模によっては決して特別な金
額ではありません。事業が大きくなれば、それに連れて未回収額も
上がる。そういうものです。むしろ、それなりの金額を動かすこと
で、社会や人間の「表裏」を垣間見ることができ、その積み重ねに
よって洞察の深い人間になれる。起業家はこういう成長を手にする
こともできるのです。現に岡田さんの原稿を拝見して、立派な哲学
を築いているなあと感じました。起業したての頃の彼のいい加減ぶ
りが嘘に思えるほどに(笑)。(ますだ)


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 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃編┃集┃後┃記┃ ┃  
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先輩経験談に登場いただいた岡田さんは、
読書家であり、勉強家でもあり、
「恥ずかしいと思ったり、見栄を張ったりせず、
人さまの意見を乞う。わからないことは人に聞けばいいのです」と、
誰に対してもオープンマインド。
400万円もの大損エピソードも笑って語ってくださいましたが、
どんな時も、いつも、実に大らかで温かな方です。

初めて会ったのは2011年3月、大震災の10日前でした。
再会は、2カ月後の5月。
いち早く北海道帯広市で開催された
「NICeチャリティセミナー&交流会」。
復興を願って企画し、実行委員長を務めてくださったのが岡田さんでした。

現在、岡田さんが十勝から運んでいる食材は全国各地へ届けられています。
BtoBなので、いち消費者にはわかりませんが、
知らずにいただいているかもしれませんね。

「つながり力で起業・新規事業!」
次号のNICeメルマガは、10月21日頃の配信予定です。
(NICe広報・岡部)

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