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第3回 NICe関東 勉強会@東京レポート




2011年7月23日(土)、第3回NICe関東の勉強会が、東京の清澄公園前スタジオで開催された。参加者は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県から12名が参加した。

NICe関東ではこれまでも“相談会”という名称で頭脳交換会を開催してきたが、多くの参加者がファシリテーションスキルを身につけていくことにより、今後のNICe関東の活動はもちろん、それぞれの職場や日常でのコミュニケーションUPにも役立つ!との思いから、今回の勉強会が企画された。講師には、ファシリテーションやアサーションで20年以上のキャリアを持つNICeな仲間・小林京子氏が立候補し、実践も交えて4時間に渡り『コミュニケーション力がUPする、ファシリテーション』をテーマに学んだ。

■オープニング

NICe関東活性化委員長の石井英次氏から、今回の趣旨が説明されたあと、講師役の小林京子氏にバトンタッチ。



「顔なじみの方も多いですが、まずは自己紹介をしましょう、それもファシリテーションらしくいきしょうか」と、まずは、全員イスから立ち上がるようにすすめた。そして、「この場に超〜馴染んでいると思う」「まだそうでもない、萎縮している」を、その場に立った姿勢で示すように促した。まっすぐ起立する人、中腰の人、ほぼ座った状態のままの人。それぞれ順番に、その姿勢をとった理由と簡単な自己紹介を述べるという、アイスブレイクを兼ねたオープニングで勉強会がスタートした。





■第1部 参加目的ファシリテーション&身体で表現するポジショニング

小林氏も自己紹介と今日の“馴染み具合”を述べたあと、「今日はどうしたいか」「何をやりたいか」「何を目的に参加したのか」「何を得たいか」を全員に問いかけ、その意見のすべてを模造紙に書き出していった。すでにファシリテーションのデモが始まっているのだ。参加者からの意見は以下のようなものが挙がった。



・合意形成の技術を学びたい
・仕事上でどんな悩みがあるのか知りたい
・交渉に役立てたい
・なかなか参加できない人がどう意見を言えるか、言いやすくできるか
・聞き取りスキルを学びたい
・人がやってみたいことを引き出す方法
・手法の種類とそれぞれの活用場面を知りたい
・緊張せずに人前で話すには
・NICe関東の目指すことを具体的に知りたい
・この方法を知っていれば様々なシーンで対応OK!を知りたい
・赤面症をクリアしたい
・ムービーをNICeでもっと撮りたい
・共感って何かを探りたい



意見が出そろったところで、小林氏は、スキル関連、赤面症関連、NICe関連の3つをカラーリングしてみせた。「今日はスキルUPのための会ですが、ファシリテーションには様々な方法があります。意見をポストイットに書いて貼付ける、ホワイトボードに書いていく、KJ法、いろいろありますが、ファシリテーションを全く知らない人もよく知っている人も、共通してすぐできるファシリテーションがひとつあるんです。それをまずやってみましょう」

小林氏は、みんなにこう説明した。
まず、イスから立つ。この会場に縦軸と横軸があると想像する。自分がどんな風に働いているのか、仕事にどう向き合っているのか、をこの会場空間の縦横軸を使って、立ち位置で示すのだという。

会場の縦軸は、仕事内容の優先度を示す。一番奥が仕事そのもののマックス、一番手前が人間関連のマックス。横軸は、時間軸を示す。将来を向いているなら、そのマックスは左端。今現在を向いているなら、そのマックスは右端。

それぞれが頭の中で、縦横のマトリックスを思い浮かべながら、「自分のスタンスはこの辺かな〜?」と立ってみた。そして、その理由をまたひとり一人述べていった。それぞれの仕事への姿勢や状況を知り、「へ〜」と意外に感じたり、「なるほど!」と妙に納得したり。



次に、同じ手法で、「3日間だけ、理想のポジションに身を置けるとしたら、どの位置に立ちたいか」に立ってみることに。1回目とまったく変化しない人、正反対の位置に移動する人、さまざまだ。ここでもまた、その理由をひとり一人順番に述べていった。



このポジショニングのマトリックスは、机上でも実践する方法だそうだが、このように身体を使うのが小林流。仕事軸と時間軸のほかに、参加者によって、子どもから年配者まで世代別にも、さまざまな組み合わせができるのだという。
「どうでしたか? はたから見ると意外なところに立った人もいましたし、自分で立ってみて、感じることがあったのではないでしょうか。不思議なもので、感情なのか肉体のせいか、理屈や机上で考えるよりも、身体を動かすとより深いレベルで感じることができるんです」と小林氏。ファシリテーション=会議や討議の場で用いるスキルというイメージとは違い、勉強会のテーマ通り、「コミュニケーション力がUPするファシリテーション」は何やら楽しそうで奥深い。そんな感覚を参加者が共有したところで第一部は終了した。



■第2部 そもそもファシリテーションって何?

ファシリテーションとは、「グループ活動が容易にできるように支援し、うまくことが運ぶようにしていく働き」。一言で言えば、「集団による知的相互作用を促進する働き」のこと。Facilはラテン語で、英語で言えばEasy。容易にする 円滑にするという意味になる。

小林氏によれば、今でこそファシリテーションという言葉自体は一般的になっているが、7年ほど前は知っている人はごく僅かだったそうだ。なぜ、今は脚光を浴びているのか。
昔は職場やグループには必ずリーダーがいて、実績もキャリアもあり、仕事でも会議でも主導権を持って場を円滑に指導していた。しかし今は、誰もが知っている、認めているリーダーではなく、その場その場で人をつなげる、チームを円滑に動かす、メンバーの力を発揮させる、そういう役目が必要になってきている。そのため、ファシリテーションというものが注目されるようになってきたのだという。つまり、ファシリテーションとは、即席のチームでも、ひとり一人の能力や動きを円滑にする働きをなすものであり、それを担うのがファシリテーターだ。続いて小林氏は、ファシリテーターに不可欠な姿勢と態度、基本スキルを解説した。




<ファシリテーターに大切な“姿勢と態度”>

ファシリテーターに不可欠な姿勢と態度とは、
1 指導者ではなく、“共にある”という姿勢
2 援助的であること。意見を出しづらい人へのサポートと、どんな意見でも「言ってくれて嬉しい」という姿勢
3 状況への感受性。その場の空気を読む、プロセスを見る
4 先走らない
5 失敗を恐れない

<その1 良く見る>
上記5項目の中で、特に大事なのが、3の“状況への感受性”だという。それは、良く見ること、良く聴くこと、良く訊くこと。“見る”とは、多人数が集まれば、ゴールも明確ではないし、それぞれの目的も動機も、その日の気分も異なるもの。ファシリテーターは、その場を微妙に影響し合う異なりを把握し、則したファシリテーションを進行させることが大切という。そのためには、あまり表からは見えないプロセスを大切に“見て”、共通事項を少しずつでもつくっていこうという意識が重要なのだ。また、その場のマイナス面を隠蔽してしまうと、場の印象もマイナスとして残りがちになる。いかにマイナス面を表に出し、それを笑いに変え、安心材料にしていけるかも、状況への感受性を高めるひとつのポイントだという。その根底になくてはならないのが、“愛”“尊重”“勇気”だと、自身の体験談に笑いを交えながら小林氏は語った。


<その2 良く訊く>
ファシリテーターは、指導・助言・評価という強制力を伴う言い回しはせず、質問・要約・フィードバック・説明・提案という発言により、グループを生産的なものに導いていく役割を担っている。ファシリテーターがする質問とは、自身の疑問を解消するためではなく、あくまでも、メンバーが自分で考え自分で答えを見つけ出すサポート的な質問でなくてはならないのだ。
その質問を大別すると、2つある。

1 オープンクエッション/
アイデア、意見、感想などを導くもので、「イエス」「ノー」では答えられない質問
2 クローズドクエッション/
事実確認、絞り込み、収束時に使用する質問

ここで肝心なのは、オープンとクローズドの組み合わせだという。すべてにオープンクエッションでは収束できないし、クロージングにも弱い。テクニックとしてオープンとクローズドを組み合わせていくことが大切なのと同時に、普段のコミュニケーションの中で、いかにバランスがとれているか、どちらかに偏った傾向があるのかを一度自覚してみることが大切だという。

ここで、石井英次氏を回答者に立てて、みんなで質問をしてみることに。オープン&クローズドを織り交ぜながら、ほかの人の質問&回答のバランスも図りながら、質問の練習を行った。



<その3 良く聴く>
続いて、良く聴く。これは実際に小林氏がファシリテーターとなり、“夏に美味しいもの”をお題にして実践。そうめん、かき氷、ビール、枝豆など、回答が2周したところでストップし、回答をカラーペンでカテゴリー分けをしていった。



ここでファシリテーターのポイントになるのは、
●発言者の意見に自分の偏見を差し込まず、いかに早く、発言そのものを箇条書きにできるか
●カテゴリー分けは間違えても気にしない
の2点。

■第3部 実践編 外から眺めるとよく見えてくる“金魚鉢”

ここまでを踏まえ、実践形式でファシリテーションを学ぶことに。2グループに分かれ、同じお題、“どんな時に人はあがるか”について。会の冒頭のディスカッションで、持ち帰りたいことで複数から挙がっていた赤面症対策だ。さらに、カテゴリー分けタイムでは、“金魚鉢”も組み合わせるという。これは、ひとチームは黙って別チームのカテゴリー分けを見学し、あとでそのチームの良いところ、注意点、気付いたことを指摘しあうもの。外からじーーっと見ることから“金魚鉢”というそうだ。しかも小林氏は、「縁取りが花弁のように赤や青の曲線で、昔ながらのあの丸いタイプね」と鉢のイメージも説明。そんな愛らしい金魚鉢なら緊張せずに行えそうだと場も雰囲気がさらに和んだ。そして、ファシリテーターは長谷川氏と石井氏が担当し、2チームでいざ実践! 同じお題でも、チーム構成や進行により、こうも異なるのだということが“金魚鉢”で明らかになっていった。


▲長谷川チーム


▲石井チーム




▲長谷川チームの収束タイムを、石井チームが“金魚鉢”で観察


▲石井チームの収束タイムを、長谷川チームが“金魚鉢”で観察


▲相手チームについて、気付いた点をファシリテーション。
後に発表し合い、互いの気付きを交換した

<レイアウト・書き方について>

1回目の実戦を終えて、小林氏がレイアウト・書き方についてレクチャー。書くものは、多くの意見が書けるもの、参加者から見えるものなら、大判の用紙でも大洋紙でも模造紙でもホワイトボードでも何でもいい。要は、その書きはじめ・書き進め・展開の順番だという。また、書き方にも議題とゴールによって、以下のような形があると説明した。

●レイアウトの基本
・箇条書き
・マンダラ型
●レイアウトの応用
・対比図形型
・マトリックス型
・流れ図型
・カレンダー型
・地図・図面型
・議事録記入型

●書き始め/上から。中央から、など
●書き進め/重要なキーワードに色分けする、あとのカテゴリー分けを考慮して書く位置を変えるなど
●展開/収束に向けてスペースを確保しておく、など
●そのほか/イラスト、顔文字なども記入するとよりわかりやすく印象的


<実践その2>


書き方のレクチャーに続いて、2回目のワークを実践。お題は“NICe関東って今どんな?”。ファシリテーターと書く人をそれぞれ個別に設定してスタート。Aチームのファシリテーターは八木氏、書記は小谷野氏、Bチームのファシリテーターは上久保氏、書記は飯田氏が担当。小林氏からの注意点は以下の2つ。
●ファシリテーターは全員の意見を拾うこと
●書記は表現を切り捨てずにニュアンスを変えずに書くこと


2チームともに意見が出そろったところで、次にメリット・デメリットのカテゴライズをし、さらにデメリットも改善によりメリットになるのでは?という視点で進行した。こうして2回のワークを通し、ファシリテーションを意識し、日々実践することが、コミュニケーション力UPにもつながるのだと体感した。






■講師を務めた小林京子氏から一言

「NICe関東の頭脳交換会をさらに楽しく充実したものにするためにファシリテーションスキルをアップする、という目的がありました。みんながファシリテーターになれて、みんながファシリテーターマインドを持った最高のブレストとするためです。

さまざまな違いを超えたNICeの交流は、ファシリテーションには正にぴったりの場です。今回もオープンでカジュアル、しかも意欲的な場がすぐに出来上がったのはさすが! 後半の実践では、各自の“らしさ”が発揮され、周囲もそれをフォローしながら中味を深めていたのが印象的でした。ファシリテーションはひとつではありません。NICe関東らしい頭脳交換会をつくりあげる第一歩になったのではないでしょうか。

良いメンバーが居ればファシリテーションに失敗はありません。次回への改善点があるのみ。一回でも多くファシリテーションにトライしてください」


■NICe関東リーダー石井英次氏から一言

「これからのNICe関東の活動に手応えを感じる勉強会でした。みなさんにもどんどんファシリテーターにチャレンジしてもらい、回を重ねるごとに全体がレベルアップしていけばいいのだと思えました。出た意見を投げっぱなしにしない。書くことで意見を受け入れる。読むことで頭が整理され、またそこから話題が展開する、というファシリテーションの基礎、意識を学びましたが、日常でも意識し、トレーニングを重ねたいと思います。

関東地方は意外と広い地域なので、今後のNICe関東は東京都内での開催が多くなるでしょうが、いずれは北関東や南関東のメンバーの地元での開催も実現したいと考えています。まずは都内での開催を重ね、気軽に参加できる、参加したくなるような会にしたい、それが一番。敷居を高くせず、悩みや課題をみんなで話し合い、解決のヒントにつながる頭脳交換会を定期開催していきます。ファシリテーターも経験を積むことで力になるでしょうし、今日実践した“金魚鉢”のように、参加者もまたファシリテーターから学ぶことが多いと思うので、NICe関東ではエンディング前に、“今日のファシリテーターを応援する時間”を設けたいと考えています。楽しみながら真剣に学んでいく、そんなNICe関東を一緒につくっていきましょう。よろしくお願いします」

 


取材・文、撮影/岡部 恵

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