「事例に学ぶ! 新事業実現法」第9回/榎崎 洋さん(大阪市中央区)異業種の専門家ネットワークを生かし、医業に特化した開業・経営コンサルタント会社を設立
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「事例に学ぶ! 新事業実現法」
第9回
異業種の専門家ネットワークを生かし、
医業に特化した開業・経営コンサルタント会社を設立
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大阪市中央区/NICeユーザー・榎崎 洋(えのさき・ひろし)さん
榎崎洋税理士事務所 所長
ドクター経営(株) 代表取締役
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◆学ぶ姿勢が思わぬきっかけとなり、技術職から税理士へ方向転換
本人の意志とは関係なく、置かれた状況下で予期せぬ課題に直面した時、
真摯にゼロから取り組むか、あきらめるか、避けて通るかで
人生の方向が大きく変わることがある。
自称「機械バカ」だった榎崎さんは、高専卒業後、大手メーカーに就職。
設計開発一筋だったが、上司から労組活動をするよう命じられた。
組合室に足を踏み入れた途端、目に入ったのは、
賞与や給与のベースアップ、統計などが記されていたホワイトボード。
だが「機械バカ」には、それらの数字がいいのか悪いのかさえわからない。
これは基本を勉強せねば……と、簿記の参考書を求めて書店へ。
その時に目にした『税理士になるための本』が、転機をもたらした。
好奇心から手に取ると、まずは簿記1級の資格が必要と記してあった。
どうせ簿記を学ぶつもりだ。ならば、その上の税理士を目指そう。
同時に「税理士なら、パソコンと携帯電話があれば独立できるのでは」
との思いが頭をよぎった。
漠然ながら、将来は雇われずに生きたいと考えていた榎崎さんは、
この本との出合いから3年後に会社を辞め、本気で試験勉強を開始した、
◆開業医を独立準備からサポートしたい。そのためのネットワークづくり
会社を辞めたからには後戻りはできない。
平日は専門学校へ、土日はアルバイトをしつつ猛勉強。
その後、会計事務所や医療コンサルティング系会計事務所に就職し、
最後の1年間は休職して試験勉強に没頭した。
そして2004年、税理士試験に合格、2006年に税理士事務所を開業。
その3年後の2009年、榎崎さんは、税理士事務所とは別に、
医師の独立支援から開業後のサポートまでをワンストップで支える、
ドクター経営株式会社を設立した。
さらに、情報サイト「医院クリニック開業.com」も立ち上げた。
前職で開業医の苦労を目の当たりにしていた榎崎さんは、
早くから医業を応援したいと考えていたそうだ。
医院を開業するには、不動産取得や物件工事、
医療設備の購入だけで数千万円から億単位の開業資金が必要になる。
その資金調達だけでも大変だが、もちろん開業がゴールではない。
医師は医療の専門家ではあっても、経営者としてのノウハウがない。
診療圏調査、不動産、財務、人事、経営・会計、増患、資産運用、
税金対策などのサポートが必要であり、
そのためにも、独立準備からきめ細やかなサポートを行いたいと。
その思いを実現するために榎崎さんは、税理士以外の人と交流を広げ
医業に関係のあるあらゆる業種のネットワークづくりに励んできた。
たとえば榎崎さんが参加するネットワークのひとつに、
税理士や公認会計士の全国組織・TKC全国会が主宰する、
「医業・会計システム研究会」がある。
この研究会には開業物件を扱う不動産業、設計・施工業、
医薬品メーカー、医療機器卸業、各種医療検査機関、HP制作業など、
医業に関連するあらゆる業種の人が登録しているという。
◆開業コンサル料は無料。顧問契約で末永いパートナーに
一般的に、医師が開業する際、コンサル企業にサポートを依頼すると、
100万~150万円のコンサル料が相場だ。
だが、榎崎さんはそれを、何と無料で行っているという。なぜ?
「医院の開業にはただでさえ莫大な資金が必要です。
その段階で支払っていただくよりも、
末永くおつきあいいただくほうがいいと判断しました」
現在の顧問契約数は、医院・介護施設、中小企業など40社に及ぶ。
もしこれらの顧客との間で、予期せぬ課題に直面したら、
榎崎さんは、どうするのだろう。
メーカー勤務時代のように、きっとまたその課題と真摯に向き合うはずだ。
その真摯さと異業種ネットワークが結びついている強みは、計り知れない。
2013.8.21
「つながり力で起業・新規事業!」 メールマガジンVol.9