「事例に学ぶ! 新事業実現法」第1回/下田徳彦さん(岐阜県高山市)舗装職人がつくった理想のトンボから発展し、同業者をつないで快適ツールの専門企業に
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「事例に学ぶ! 新事業実現法」
第1回
舗装職人がつくった理想のトンボから発展し、
同業者をつないで快適ツールの専門企業に
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岐阜県高山市/下田徳彦(しもだ・のりひこ)さん
(株)アイデア・サポート
http://www.ideasupport.co.jp/
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仕事道具は無数にあるが、どれもこれも「なるほど」の構造や形状である。
道路などの舗装工事職人が使う、T字型の整地用具トンボもそのひとつだ。
高山市の舗装工事会社、シモダ道路を創業した下田徳彦さんの父親は、
そうした道具を創意工夫して改良する名人であり、
「下田さんのトンボは使いやすい」と地元の職人の間でも評判だった。
それならば譲りますよ、と販売を開始したのは1985年のこと。
当時、舗装工事現場へは何種類かのトンボを持参するのが常だったが、
短いグリップしか使えない現場もあり、その場で切断することもあった。
「現場ですぐに先端だけを換えることができたら、
グリップの長さを微調整できたら、もっと現場作業は快適になる」
改良型の開発へ向け、下田さんの父親が最初に相談に向かったのは
地元・飛騨高山の工具店。その店でメーカーを聞き出し、
トンボの先端部分はのこぎりメーカーに、
伸縮グリップは、枝打ち工具メーカーに相談した。
そして、試作と実験を自社で繰り返し、1993年に
多段式レーキ「シモダトンボ」を開発。それを機に販売部門を新設した。
本業では競合であるはずの同業他社から注文が相次いだ。
2000年に父親から代表取締役を継いだ下田さんは、
さらに1本でも多く同業者に試してもらおうと各地を奔走した。
その甲斐あって、本業の閑散期の売上げをカバーするまでに成長した。
だが、2003年、公共事業の見直し・中止が相次ぎ経営がピンチに。
「できないことを必死にやるより、できることは何だと必死に考えました。
シモダトンボはうちの独自のもの。今、売れているもの、伸びているものを
人員を増やさず、さらに伸ばすことから始めようと思ったんです」
“全国キャラバン”と名付け、車に製品を積み込み、
全国各地の建設業者を下田さん自ら訪ねて回った。
「そこでつながりが見えて来たのです。
下田ならトンボというように、同業他社さんもそれぞれ
工夫して使っているツールや素晴らしい解決策を持っていたのです。
それらをうちが図面化し、試作を高山で行い、現場で試す。
シモダ道路の工事部門と、アイデアを提供してくれた企業さんがいますから。
これでいこうと決まれば商品化。ロイヤリティ契約をして、うちで販売します」
そして、2009年に株式会社アイデア・サポートを設立。
同業者はライバルではあるが、一方では工事現場に関わる者同志、
理解し合える、協力し合える関係を築けるのだ。
常に顧客の要望を聞き、進化を重ねているため、後発は追いつけない。
試作&モニタリングを自社でできる強みもある。
だからといって、下田さんは安心もしていないという。
今でも、全国キャラバンは続いている。
移動販売車“舗装コンビニカー1号”に
シモダトンボをはじめ、オリジナル商品を積み込み、
北海道から九州まで専任者が走り回っている。
「今日は山梨かな」と下田さん。
日本は、道路でつながっている。
道路があるところに、同業者がいる、エンドユーザーがいる。
困りごとや失敗も共有でき、それを解決・改善へと生かし合える仲間たちだ。
ツールだけにとどまらない。
そこには同じ経営者、現場監督、オペレーター、職人など、
それぞれの立場、職種で、共通の困りごともあれば、創意工夫もある。
ハードである道具類と、ソフトである情報。
この両面での業界連携を下田さんは目指している。
自分たちがつくってきた道路、これからもつくり守っていく道路を
同業者のつながりでより良いものに、同業者同士でお互い様の関係に。
下田さんの“道づくり”は、そこに道と、関わる人がある限り続いていく。
2012.12.21
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