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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
「いい賃金」は、人材確保の新たな視点



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    「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

    第63回 
    「いい賃金」は、人材確保の新たな視点
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読者のみなさん、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

【2019年は内需型経済にシフトすべき。だが……】

さて、今年の経済や経営環境も、予断を許さない状況だ。
中国経済が減速局面に突入し、そこに米国の金利上昇も加わって、
一昨年に好調だった我が国の輸出は、すでに昨年の段階で頭打ちに。
今年は、外需に依存してきた成長が確実に停滞していく展開である。

半面、原油価格の下落傾向が続いていることは、ありがたい話であり、
この流れを捉えれば、外需型から内需型への転換が正解と考えられる。

しかし、そこに消費税の増税という阻害要因が立ちはだかってくる。
政府によれば、増税額を上回る歳出を計画しているというが、
そのお金がどこに流れるのか、また、それはいつまで続くのか、
詳細に目を向けると、過大な期待はしないほうがよさそうな印象だ。

さらに、日本経済にとって芳しくない、別の大きな問題がある……。


【あまりに拙速な、外国人労働者受け入れ拡大策】

別の問題とは、言うまでもなく、昨年、降って湧いた、
外国人労働者の受け入れ拡大策のこと。

この稿では、その問題を内需経済との関係で論じたいのだが、
この問題は大きな課題をいくつも抱えているにもかかわらず、
議論も検討も説明も対策も、ほぼ行われていないのが実情であり、
経済問題とは別に、社会問題としても無視するわけにはいかない。

実際、世間ではすでにいろいろな声が挙がっている。
大量の外国人の定住によって治安の悪化は起きないのかと。もっともな心配だ。
反対に、外国人の人権や生活は本当に守られるのかと。確かにこちらも問題だ。
こうした課題は、決して軽視できるものではない。

日本人と外国人、双方が不安を抱えたまま、なし崩し的に受け入れが進めば、
不安が不満となり、両者のちょっとした「すれ違い」が原因で、
大きなトラブルにいたってしまう懸念もある。
生活習慣の違いに端を発した暴力沙汰など、いかにも起きそうな事態だ。

こうした予想可能な問題に対する手立てを、
我々日本人はちゃんと持っているだろうか? 心構えや準備はできているだろうか?
あなたは、どうだろう? ちなみに私は、まるでできていない。
どう考えても、政府は拙速すぎる。
「人手不足が深刻なのだから仕方ない」では、済まない話ではないだろうか。


【欧州各国で頻発する衝突。両者の言い分は……】

欧州各国で極右政党が伸長していることは、ご存じのとおりだが、
それら政党の主張には、必ず外国人の排斥が含まれている。
というか、それが主要な言い分だ。

これらの国では本国人による外国人への襲撃が頻繁に行われるし、
外国人側からの反撃も同様に行われる。
どちら側が正当か、などということではなく、
両者は根本的に対立しているから、収束を図ることは容易ではない。

そして、両者の言い分はこうだ。
本国人は「賃金の安い外国人に仕事を奪われて、食っていけない」と。
外国人は「安い賃金で働かされて、しかも簡単に首を切られてしまう」と。

話は大回りしてきたが、結局、この問題の根本は、経済の問題なのである。


【賃金上昇なくして、デフレ脱却は望めない】

実は、人手不足は、景気回復のチャンスだったかもしれない。

このコラムの第58回の文中で、
多くの企業がデフレを前提にした利益構造を確立してしまっており、
利益創出の原資を低賃金労働に求めてきたため、
労働市場が完全な売り手市場だとわかっていても、対応ができないと指摘した。

これを逆から言えば、日本経済がデフレから脱却し、物価が上がり、
それに伴って企業の売上高が上がれば、賃金アップも見込めるということだ。

だから消費税の増税は、何としても見送るべきだと私は思うが、
仮に増税がなくても、結局、高い賃金を要しない外国人労働者が増えれば、
日本人労働者の賃金を上げる必要がなくなり、
企業は、あいもかわらず低賃金を根拠とした利益構造をキープすることになる。

国民の所得が上昇しなければ、結局のところ、内需拡大は望めない。
だが冒頭で述べたように、中国の失速で外需に頼ることも今は難しい。
一つ間違えれば、日本経済は八方塞がりになりかねない局面だ。


【そもそも小規模事業は外国人を生かせるのか】

さらに現実的な話をすれば、多くの小規模事業においては、
たとえ外国人労働者が増えたところで、
必要な人材を確保できるかどうかはわからないし、
また、外国人を確保できたとしても、言葉の問題を筆頭に、
労務管理に費やす有形無形のコストが経営を圧迫することは明白だ。
小規模事業においては、やはり日本人労働者の確保が先決ではないだろうか。

とはいえ、「とても高い給料は出せない」という声も理解できる。
どうするか?
以前のコラムでは、高齢者や専業主婦の活用、
ユニークな人事制度による入社希望者の拡大策などを提案した。

もちろん、これらの策も有効だが、ここはもう一歩踏み込んで、
賃金にかかわる部分で、「従業員の納得」を獲得する手を考えてみたい。


【単に高い賃金とは異なる、「いい賃金」】

リクルートが発刊する『Works』最新号のテーマは、「いい賃金」。
「高い賃金」ではなく、「いい賃金」。どういうことだろう?
複数の企業の取り組みが紹介されていた。

まず、経営が全力で、できうる限りの金額アップに取り組んだ結果としての賃金、
という実例が紹介されていた。これは確かに、いい賃金だ。

また、完全雇用保証をした上での実力主義を取る企業も。
要するに、何歳になっても、本人が望む限り働き続けられるという約束だ。
この背景があったうえでの実力主義賃金なら、納得感も安心感もある。

ほか、全員の給料をオープンにし、賃金決定プロセスに社員を参加させる企業、
5人の評価者を、評価される側の社員が選ぶことのできる企業、
個人のスキルに応じて、初任給から明確な差をつける企業なども紹介されていた。

いかがだろう? きっと参考になるはずだ。

小規模事業の経営者や起業家の皆さんには、
ぜひ、「いい賃金」で「いい人材」を獲得し、
厳しさが予想される2019年に、しっかりと立ち向かってほしいと願う。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.81
(2019.1.21配信)より抜粋して転載しました。
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