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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
ユニークな採用戦略で、人手不足を乗り越えよう



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    「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

    第58回 
    ユニークな採用戦略で、人手不足を乗り越えよう
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【高額時給の工場にアルバイトを奪われた農家】

無沙汰をかこっていた米農家の友人と、久々に一杯をやることにした。
待ち合わせの1時間ほど前だったか、その友人から電話があった。
「オヤジが田んぼで倒れたので、少し遅れるかもしれない」と。
熱中症だったそうだ。それにしても、なぜこんな猛暑の中、圃場へ?

「実はバイトさんにやめられてしまって……。
それで仕方なくオヤジに除草や水の管理をやらせたんです」。

友人はこれまでアルバイトに対して時給900円を支払っていた。
ところが今年になり、自動車で1時間ほどの大都市にある工場が、
時給1500円で従業員募集を開始し、アルバイトもそこに勤めたという。

調べてみたら、そこは有名な会社の工場で、
時給の高さもさることながら、ボーナスはあるわ、有給休暇はあるわ、
各種手当てはあるわ、しかも無料で夜食が提供されるわ……。
これでは、一介の農家が太刀打ちできるわけがない。


【デフレを前提とした利益構造に苦しむ小規模企業】

それにしても時給1500円とは……。
いや、実際にはもっと高額な時給を支払う会社もある。
この金額だけを見ていれば、さながらバブルの再来だ。

その高待遇の工場と同じ町で、清掃会社を経営する知人が嘆く。
「もう、無理。ウチの給料じゃ、人なんて全然集まらない」と。

だったら給料を上げればいいと、言い切れるほど話は簡単ではない。
人件費の上昇を理由、顧客に作業代金の値上げを要求しようものなら、
たちどころに他社に仕事を奪われてしまうのが現実だ。

清掃業に限らず、法人相手のサービス業は、長年、低価格競争を繰り広げてきた。
発注側は、多々ある同業者の中から、1円でも安い見積りを出す相手を選択する。
その結果、サービス業側は、さらなる値下げを断行する。
この連鎖がデフレを生み出すわけだが、すでにサービス業の多くは、
デフレを前提にした利益構造を確立してしまっている。
つまりは、利益創出の原資を低賃金労働に求める仕組みである。
だから、労働市場が完全な売り手市場だとわかっていても、対応ができない。


【高齢者や専業主婦を積極的に活用しよう】

しかし何もしなければ、座して死を待つも同然である。
人件費を上げるべく、利益を上げるための策を打つか、
人件費はそのままでも、人が集まるような策を講じるか、
もしくは、人手に頼らない方法、つまりは機械化・自動化などを進めるか、
おおよそ、こうした方法のいずれかに的を絞って、打ち手を練るべきである。

ちみなに友人の農家は、今後、シルバー人材センターの助けを借りるという。
稲作は、1年通して作業があるわけではないので、
スポット的に高齢人材を活用する方法はいい選択だと思う。

もっとも年間を通して繁閑差のない事業であっても、
高齢者や専業主婦など、「働こうと思えば働ける」人々を、
うまく、無理なく、きめ細やかに活用する努力を小規模企業はすべきだろう。


【給料の額だけが、従業員を集める手立てではない】

とはいえ、炎天下での農作業や、深夜に及ぶ清掃作業などは、
多くの人が好んで就こうとする仕事とは言い難い。
建設や運輸なども同様、「きつい仕事」が敬遠されるのは、もっともだ。

しかし、手はある。北陸のとある都市のメッキ工場の話。

メッキ加工は、それこそ4K(きつい、臭い、汚い、危険)の代表業種だが、
その会社では、就職を希望する人が後を断たないという。

なぜか? 簡単に言うと、従業員一人一人を「スター扱い」しているからだ。
例えば「黒染の達人・鈴木」「バフ研磨の鬼・佐藤」「アルマイトの寵児・田中」、
そんなふうに一人一人に異名を付け、ネットで紹介する。
そして彼ら自身が発信も行い、時には顧客から感謝の言葉を送られることもある。
部品加工に携わる従業員が、仕事ぶりを顧客に誉められることなど、稀である。
否が応でも、やる気がわいてくる、という寸法だ。

これは、あくまで一例。
要点は、給料の高さだけが、従業員募集の手立てではないということを、
経営者がしっかり認識することである。

私自身、その昔、月給30万円のデザイン会社への就職を断り、
月給22万円の会社を選んだ経験がある。
高いほうの会社のオフィスは殺風景であり、安いほうの会社のオフィスは、
まるで図書館のように、デザイン関係の書籍が壁一面に並んでいた。
自分が成長できる環境はどちらか……。そういう選択だった。

働いてくれる人たちが、お金のほかに欲するものはないのか?
まずは、そこを徹底的に考え、調べ、探ることが、脱人手不足の第一歩である。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.71
(2018.8.21配信)より抜粋して転載しました。
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