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全国各地の異なる業種・地域・世代の人たちが集う NICe の SNS の中から、毎月選ばれる「月間最優秀日記」を紹介しています。起業家や経営者、支援者、起業副業準備中の人たちの実体験や発想、日常のひとこまから、学びと刺激をもらえます。
pickup! NICe日記 第63回 chibitaさんの「人が歩いていないし、土地がないし。」



【増田紀彦の講評】
講評:タイトルだけを見ていると、希望が断たれてしまった地方都
市の嘆きのような印象ですが、実は、そういう状況からの大逆転物
語が日記に綴られています。いや、「日記」というより、筆者のch
ibitaさんの「半生記」と言ったほうがいいほどの、重みを持つ文章
です。九州のとある街の、住民自身の挑戦による街づくりの成果報
告です。「私はあるまちおこしのメンバーになりました。実は私自
身が立ち退き組のメンバーだったのです」。この、導入に驚かされ
ました。chibitaさんは、「再開発のため」に、我が家がブルドーザ
ーで取り壊される様子を見ていたそうです。そして、彼女はシャッ
ター街の人々に訴えます。「私のようになりたいですか?自分の家
が潰れていくところを目の前で見たいですか?」と。その訴えが突
破口となり、「セメントのように」固まっていた住民たちが動き始
めます。そして、紆余曲折もありながら、ついに……。長い歳月と
深い思いを一編の日記にまとめた筆者の情熱と力量に心から喝采を
贈ります。


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   「pickup! NICeな仲間の日記から」第63回
   
   5月最優秀日記 
   chibitaさんの「人が歩いていないし、土地がないし。」
   
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全国各地の異なる業種・地域・世代の人々が出会い学び合う
NICeのSNSの投稿から、今回は、増田代表が選んだ
2018年5月 月間最優秀日記をご紹介。
なお、毎月の最優秀日記を候補に年間グランプリを年末に決定します。
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昔から中央通りと言われて栄えて来た国道沿いの古い街並みは、
ある意味流行に乗っているかのように例外なくシャッター通りです。

そこをどうするか。

なんと20年近く物議をかもしてきました。

その中でも痛みを伴って立ち退きをして、大規模な区画整備をしたり
幾度となく住民の説明会をしたり、ワークショップや講座を
繰り返し行って税金も投入されてきたシャッター街。

いろんな人が入れ替わり立ち替わり綺麗な話しをしに来ては
その時だけという日々が続きました。

そして、その街の人達は年を取り、
誰のことも真剣に耳を貸せない程に心はかたくなになっていきました。

それでもそこの場所がよかった時代を知っている世代の人達は
元気を出させようとあらゆる手段を取ってきました。

でもセメントのようになった心は動かせませんでした。


私はあるまちおこしのメンバーになりました。
実は私自身が立ち退き組のメンバーだったのです。

祖父の家に住んでいた私は、100年近くたった味のあるその家が大好きでした。
元々大きな旅館で、それが戦時中に塾になり、戦後3つに間仕切りをして
長屋のように売りに出され、
ゴザ屋さん、祖父の床屋さん、民宿の女将さんが買いました。

そんな祖父の家は
街をよくするためだと裏通りごと全てなくなってしまったのです。

街並みごと、祖父の家はブルトーザーで潰されました。
当時、偶然私だけがその瞬間を見てしまい、
その場に立っていられないほどでした。
その後何年も、たぶん今でも祖父の家の夢を見ます。
犬や猫もいたあの家にまだいるところを夢に見て、
どうしてまだ夢に見るんだ!と腹が立つ程だった頃もあります。

セメントのような心のシャッター街の皆さんに私は言いました。

「私のようになりたいですか?
自分の家が潰れていくところ目の前で見たいですか?
なぜ立ち退けたのだと思いますか?
あの通りの人達はみんな想い出があってそれは何にも変えられないけど
それでも立ち退けたのはこの街全体のためだと思ったからです。」

泣きながら話す私を見て1軒のお菓子屋さんの女将さんが私に
「あんたは同じ仲間や」そういってくれました。

それからまちづくり実行委員の私の企画にビックリする程
協力をしてくださいました。
うれしかった私はハロウィンに顔へペイントして実行委員でおばけで練り歩き、
子どもを連れて全ての店にお菓子をもらいに行ったり、
ときには着ぐるみを着て通りのライブに参加したり。

必死であのおばあちゃん達を笑わそうとしていました。

靴屋のおばちゃんが電球を変えられないというのでメンバーで手伝いに行って、
帰りに靴を買っておばちゃんの店のPRをfacebookにアップしたり
たった半年の出来事でしたけど、
みんなのセメントがセメントではなくなったことを実感しました。

その後、通りで一番大きなデパートまで廃墟になっていて
その跡地利用で私は市役所から市民代表で呼ばれました。

他にもそういう人はたくさんいて、40名ほどでワークショップをしました。

みんなの考えは行き詰まり、それは田舎ならではの問題ばかりでした。

「買い物できるところもないんだし若い子どもはいないから人なんて歩かない。
郊外から来るにも車を止めるところもないような狭い土地じゃ無理だ」などです。


私は以前から息子を通して子どもの勉強する場所がないことをずっと訴えていました。

自宅の空き部屋を勉強会として10人くらい引きうけて週に1度貸しているほど、
一人っ子や片親世帯とかの子どもを中心にいろいろとやっていました。

そんな私にはキラキラするような気持ちでぶつけるプランがあったんです。

「図書館が来ることは決まっているんだから子ども達が勉強するところを増やして、大人も勉強できてミーティングも出来てみんなで頭を使うところを作ればいい!!!」


思いっきりスルーされましたね。
今さらここまで形が出来ているのに何を言っているんだみたいに。


それでも引き下がらずに、
立ち退いたときの私達の気持ちを市役所の担当者に伝えました。
どうしても聞いて欲しいと言いました。


それでも適当にかわされましたね・・・・

それでタウンマネージャーといっしょに仕事をしている市の担当者に愚痴ったんです。

「車を止めるところがなくて、人も歩いてないとかいうけど、
そんなものなくたって車に乗ってない人がたくさん来ればいいのでしょ。
それなら勉強するところが少ないこの街で、
部活帰りに引きうけてくれるところも少ない高校生がいけるように
夜9時くらいまでの図書館が勉強室を作ってあけてくれたら子どもが集まる。
隣には市役所の子ども課が入るならいっそ
子どもや孫をつれて涼みに来られるようにしてくれたらいい。
そして若者が育って欲しいといつもいうのだから、
起業する人達が夢を語れる場所にしたらいい。
そんなところには駐車場が少なくっても自転車でだって来る!」

その愚痴はその人も同じように思っていたそうで、大きな私達の夢になりました。

「引き下がらんよ。絶対子どもたちの勉強場所を確保する」

それから2年くらいたって私はその場所がとうとう着工し、
中の印刷物などを考える段階に来たので呼ばれました。

パンフレットの原稿を見た瞬間驚きました。

私が最初聞いたものとは全く違って、私が思っていたこと、
もっとそれ以上になったものでした。

あのあと私はあらゆる人に愚痴ったんです。

市議会議員から市役所の仕事をするデザイナーにも子ども支援のNPOさんにも。

スルーされたと思ったのは私だけで、あのときみなさん
ちゃんと考えてくれていました。

最初のプランに疑問を持った人が県外のコーディネーターへ相談したそうです。
その人は私達が思っていたことをそれ以上にしてプランニングしてくれました。
そして市役所を説得してくれたんだと思ってます。

4月の末、図書館は完成しました。
名前をMallmall(マルマル)といいます。

私は自宅の勉強会に来ていた子ども達を連れて
新しくここで勉強できるよと連れて行きました。
仲良しの高校の先生をしている友人もつれてみんなで見学しました。
「私、この街に税金払っててよかったって今一番思ってる」と彼女はいいました。

セメントのようなシャッター街には新しいカフェができ、パン屋さんができ、
少しずつですがシャッターが開いてきました。
まだ1ヵ月もたっていないのにです。
自転車置き場はあふれる程止まり、大人も子どもも朝から遅くまでいます。
ミーティングテーブルでは大人達が集まって話しをしたり、
2階に出来たクラフトコーナーでは親子でTシャツを作っています。
図書館内に出来たオシャレなカフェでは
どこかの企業の方がお茶を飲みながらパソコンを打っています。

外の広場では手づくり雑貨のお店が並んで、
図書館の中も外も連日賑わっています。

じいちゃんの家が潰されたとき、
私はどうしてこの姿を見なきゃいけないんだと泣きました。
叔父が、「あのね、あの家はお前に見て欲しかったんだよ。
あの街もお前には見て欲しかったんだ。
お前が大事に思っていたからお前は呼ばれたんだ」そういいました。


みんなよかったね。本当に税金払っててよかったね。
今までセメントになってよかったね。
こんな日が来るならそれでよかったんだろうね。
立ち退いてよかったんだと思える気になりました。

※2018年05月30日投稿
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 宮崎県/NICeユーザー・chibitaさん
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Mallmall(マルマル)
http://mallmall.info/



※これまでの月間最優秀日記はこちら
 http://www.nice.or.jp/nicediary
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