〜人とつながり 自然とつながる〜 「NICe棚田クラブ 第3回交流会」レポート
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自分たちで植えた小さな稲が大きく育っている姿に感激!
手作業と機械のコラボで、180kgの1等米を収穫。
2010年10月3日(日)、4日(月)、「NICe棚田クラブ」第3回交流会が開催されました。この夏の猛暑で、お米の出来が危ぶまれましたが、棚田クラブメンバーによる田植え、草刈り、そして白羽毛ドリームファームのみなさんによる、日ごろの管理が行きとどいた結果、新潟県の特別栽培農産物と認められる最上級のお米を約180kg収穫できました。今回は、新潟県内、東京、千葉、埼玉、神奈川、愛知、富山、大阪から、総勢28名が参加しました。
2日目は、刈り取ったお米の精米過程を体験・見学。 計量や袋詰め、自宅への発送作業を終え、半年間にわたるNICe田んぼでの体験を通して学んだこと、感じたことなどをテーマに意見交換会を実施しました。
■□■プログラムの概要
●3日(日)
13:30 十日町市白羽毛のNICe田んぼに集合
14:00 稲刈り開始。子どもプログラム同時開催
16:00 稲刈り、脱穀、田んぼへのワラ撒きなど終了
16:30 温泉にてリフレッシュ
18:30 宿泊地「貸民家みらい」に到着
19:00 懇親会
●4日(月)
9:00
十日町市・松之山、ごんべぇさん宅訪問
11:00 昼食・休憩
13:00 白羽毛ドリームファームにて、精米、袋詰め、発送作業
田植え、草刈り、稲刈り体験について意見交換会
15:00 解散
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■□■1日目/半年間の集大成、待ちに待った稲刈り
手刈りによる稲刈り、機械による稲刈り、
その両方を体験して、米づくりの多様性を学ぶ
NICe田んぼに到着するやいなや、メンバーは、たわわに実った稲に釘づけ。と同時に、これだけのお米を手刈りで収穫するとなると、予定通りの2時間で大丈夫か?という不安も。白羽毛ドリームファームの樋口徹氏によるレクチャーのもと、さっそく田んぼに飛びこんで稲刈り開始。
田んぼに入ると、そこに棲息していた、イナゴ、カエル、クモ、ミミズなど、さまざまな生き物がお出迎え。田植えの時には怖い怖いと顔を引きつらせていたメンバーも、すっかり(?)慣れて、「これだけの生き物たちが棲息できるきれいで栄養タップリの田んぼなんだね」と感慨深げ。
そして日ごろの運動不足を自認していたメンバーは、ここぞとばかりに稲刈りに没頭し、「足がぁ!」「腰がぁ!」と大騒ぎ。それでも、1時間も経過しないうちに、NICe田んぼの稲刈りは終了しました。
左/黄金色に輝き、頭を垂れるNICeたんぼの稲穂。中/左に立つのは、NICe棚田クラブの呼びかけ人で主宰者の池田美佳氏。池田氏のあいさつの後、中央に立つ白羽毛ドリームファームの樋口徹氏による稲刈りレクチャーに引き継がれました。右/稲刈りに使うカマは、写真のように歯がギザギザに刻まれたノコギリ様のもの。草刈りと同様の、なめらかな歯のカマで刈るものと思っていた棚田クラブメンバーは、そんなことにも驚き、新しい知識を得ることに。
左/稲の束の持ち方、カマの使い方をアドバイスする樋口徹氏。写真の稲の持ち方は逆手に(親指が下に)なっていて、間違った危険な持ち方。カマは順手で(親指を上に)持ち、手前に引くようにすると親指を切る危険もなく、周りで作業している人への危険も及ばないと。中/稲は列ごとに刈り取るのではなく、田んぼの外周から真ん中に向けて刈り取る。それは、刈り残しが出て、それを稲刈り機で刈り取ることになった場合、機会を田んぼに進入させやすくするため。右/稲を刈る者、刈った稲を田んぼの周辺に置く者と、分業態勢が自然に出来上がっていきました。
左/コンバイン登場! 刈り残しを出してしまったからではなく、コンバインによる現代農業も学ぶため。刈り取った稲を、後方にある機械で脱穀していくという、まさしく文明の利器。中/さあ、残す稲は、もう少し。ここまで、メンバー総出による手刈りで1時間足らず。熱意の成果です。右/子どもたちは、興味の赴くものに自然に従う形で行う「子どもプログラム」に参加。稲刈りもしたい、虫やカエルとも触れ合いたい、水路に入って水遊びもしたいと、稲刈りにいそしむ大人に負けないエネルギッシュな姿を見せていました。
左/「ボクも乗りたい!」と、コンバインの運転席で満足げな笑顔の“あっきぃ”くんは、メンバーの石井英次氏の長男・瑛都(あきと)くん。中/それを見て、「ボクも!」と、参加者最年少(4歳)の心くん。心くんは、遠路大阪から参加した永山仁氏の長男。楽しさ半分、怖さ半分の体験となりました。右/コンバインで脱穀したモミ付きの稲を袋詰めする作業。「ボクたちもお手伝いする」と、瑛都くん、心くんともに、すべての袋詰めに手を貸してくれました。
実るほど頭を垂れる稲穂かな
すべての稲を刈り取った頃、樋口徹氏の夫人からおにぎりが届けられました。もちろん、白羽毛ドリームファームのお米。昼食をとってさほど時間がたってないにもかかわらず、「もう1個」と、おにぎり2個をほおばるメンバーが続出。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という詠み人知らずの句がありますが、米の粒をたくさん実らせて、稲穂を垂れる様子そのものを表現するとともに、人格のすぐれた人は、常に謙虚な姿勢でいるもの、という意味が隠された名句です。春に植えた小さな苗が、梅雨や猛暑にもめげず、私たちを喜ばせてくれる立派なお米に育ってくれた姿に、畏敬の念を抱いたメンバーも多かったことでしょう。
メンバー全員で、渾身のエネルギーを注いで終えた稲刈りの後は、白羽毛のお米でつくられたおにぎりで小休止。大勢の大人たちが一斉におにぎりをほおばる様子は、なかなか見ることができない光景です(笑)。
脱穀したお米は、白羽毛ドリームファームの作業場に運んで、機械による乾燥を行いました。機械乾燥といっても、天候や気温、湿度によって、乾燥時間や機械の温度設定など微妙な調整が必要。作業を行いながら、それらのことを教えてくれる樋口利一氏。
懇親会は、さながら収穫祭。
古民家「貸民家みらい」で、その喜びを語り合い
稲刈りを終えて、温泉で汗を流してリフレッシュしたメンバーは、この日の宿泊地、十日町市松代にある「貸民家みらい」へ。 古民家をそのまま利用して1棟貸しを行っている貸民家みらい。この日は、NICe棚田クラブのメンバーで独り占め。都会暮らしの参加者たちは、その、おごそかなたたずまいや重厚な室内に、ワクワクするやら、ちょっぴり怖くもあるやら。
そして、収穫祭ともいえる懇親会の準備を着々と進めるなか、サプライズイベントがスタート。それは、“子ども隊長”こと、メンバーの本山実里氏の22歳のハッピー・バースデーのお祝い。思わぬ出来事に、本山氏は、嬉しいやら照れくさいやら、といった様子を見せてくれました。続いて、樋口徹氏による乾杯の音頭で懇親会のスタート。NICe田んぼの豊かな稔りを祝い、賑やかな夜がふけていきました。
上/“子ども隊長”本山実里氏のハッピー・バースデー。子どもたち3人が運んでくれたケーキに満面の笑み。右/乾杯の音頭で懇親会がスタート。
左/「貸民家みらい」を運営する若井明夫氏。ここは若井氏の生家でもあり、先祖が大切に守ってきた昔ながらの農家の家。都市部への人口流出がやまぬなら、この古い民家を都市の人に提供したいと、みらいの運営に踏み切った。右/米づくりも行っている若井氏は、収穫したばかりの新米を、かまどで炊いてくれました。懇親会の宴もたけなわの頃、酔いを覚ますかのようなおいしいご飯が炊きあがり、皆「うまい!うまい」と、そのご飯を、大量に(笑)いただきました。
上/庭にある手づくりの露天風呂でくつろぐメンバー。大きな風呂桶は、これだけのお湯をわかすのに3時間かかるのだとか。右/貸民家みらいの全景。山間の高い位置にあり、部屋からの眺めは抜群。
■□■2日目
■在住3軒の里山のお宅に訪問、そして米づくり体験の意見交換会
75歳の今も現役農家のごんべぇさん。
里山での生活を聞いて、現代人の暮らしに思いをめぐらす
前日の稲刈りは、曇り時々晴れという絶好の日和でしたが、2日目は、朝からそぼ降る雨。一行は9時前からあるところに向けて出発。それは、十日町市の松之山と呼ばれる地域。その中でも、人が住んでいる家は3軒のみという、まさしく限界集落といえる地区。棚田クラブメンバーが訪れたのは、ごんべぇさんこと佐藤富義氏のお宅。75歳になる今も、妻ともども現役で農業にいそしみ、普段は、山里で受け継がれてきた昔ながらの生活を営んでいる佐藤氏。昔の暮らし、そして高度経済成長を経て現在に至るまで、佐藤氏が考える日本の行きつく先など、考えさせられる貴重なお話に耳を傾けました。
左/屋根は葺き替えたものの、先祖から受け継いだ佐藤氏の家。家の中は、梯子で登る2階、さらに蚕棚を置く屋根裏の3階があり、まるで現代に残された迷宮のよう。中/元気というより、ノリノリとった表現がピッタリの佐藤氏。時には害獣となる野生のタヌキとの共生など、里山ならではの暮らし方を語ってくれました。右/すでに掘りごたつが出されている佐藤氏宅の居間でお話を聞くメンバー。こたつの上には、佐藤氏の妻による手づくりのお菓子やお惣菜、漬け物が出され、のんびりとした雰囲気の中、都会では味わえない時間が過ぎていきました。
収穫したお米の選別、精米を終えて、
白羽毛ドリームファームのみなさんと意見交換会
ごんべぇさん宅を後にして昼食を終えた後、いざ、白羽毛ドリームファームへ。いよいよ前日に刈り取った稲の選別、精米、そして袋詰めの作業です。自宅への発送作業を終えれば翌日には届き、さっそく自前の新米が食べられるだけあって、皆、それぞれの作業にワクワク気分で取り組みました。
左/前日から乾燥機にかけていたモミ付きの米を、モミすり、続いて粒の大きさによる選別を行う機械に投入。右/米粒は、大きさにより3段階に振り分けられ、写真左奥は、大きさ2mm以上の米が袋に注がれているところ。手前は1.9mm〜1.8mmの小粒、その奥で、さらに小粒の米と選別が行われる。NICe田んぼの米は、そのほとんどが2mm以上という、上出来中の上出来。
左/お米の計量を行うのは、新潟県小千谷市から参加した髙橋慶蔵氏の長女・夢翔(ゆめか)ちゃん。作業を続けること1時間あまり。すべてのお米の計量を行ってくれました。右/袋に詰めて、いよいよ、それぞれの自宅への発送作業。袋の右下、青いマークのシールは、新潟県が認証する「特別栽培農産物」の印。
5月の田植え、7月の草刈り、そして収穫と、半年間の米づくりを通してNICe棚田クラブのメンバーは、何を感じ、何を学んだでしょうか。チーフプロデューサーの増田紀彦氏の司会進行で、意見交換会を行いました。
増田/それではみなさん、参加回数が多い順に、感じたこと、学んだことなど、率直な感想を聞かせてください。
● 生産者と接し、自分も現地に通ったことで、おいしさプラスアルファの価値を実感しました。知的財産という私の仕事に関連させて考えると、コシヒカリ、そして魚沼産というブランドだけでなく、地域に密着した何かを加えて、さらに価値のあるものに仕上げていけるといいなと思っています。(茅原裕二氏)
● 虫が苦手なんですが、田植え、草刈り、そして稲刈りをやってみて、私たちは、虫やカエルなど、生き物たちがいる場所にお邪魔してるんだと感じました。また、手の中に隠れてしまいそうな小さな苗が、米粒で重たくなって、その稲穂を垂れるくらいに成長することにも、今さらながら感動して幸せな気持ちになりました。(岡部恵氏)
●食べ物の中でご飯が一番好きで、お茶碗やお弁当のふたに付いた一粒一粒まで食べてしまいます。今回、稲刈りの後にみんなで落ち穂拾いをして、それも、たった5粒ほどついた小さな落ち穂も見落とさずに拾おうと、必死になっている自分に気付きました。今までの何倍も一粒のお米を大切にしたいですね。(田村康子氏)
●田んぼに入ると、いろいろな生き物がワサワサワサっと出てきます。そんな光景に接するたび、自分たちは、この世にあるものを人間だけでなく、いろいろなものたちと分け合って生きているんだなと思います。それと、あれだけの面積に植えられた、あれだけの量の稲が、米粒だけにすると、「こんなにちょっとなんだ」と。だからこそ、一粒のお米を、大事に、感謝していただきたいですね。(北出佳和氏)
● 稲刈り脱穀機、コンバインでの稲刈りを体験しましたが、あらためて機械はスゴイって思いました。やっぱり、こういうものは、あって当然だと。それができるなら、害虫だけを取り払う虫取り機なんかもできるんじゃないかと思ったりするんですよね。そういう機械をつくれば引き合い多数で、億万長者も生まれるなぁと、そんなことを思い描いてしまいました(笑)。(久田智之氏)
●子ども隊長をやっていたので、田んぼで作業するみなさんを観察する時間がタップリありました。大人がこんなにはしゃいでる姿って、そうそう見られないよなと、楽しい気分になりました。子どもたちは、田植えや草刈りよりも、今回の稲刈りに一番興味を持ったようで、子どもながら、「仕事をやってる」という気分を味わっていることが伝わってきました。遊びっぽいことより、達成感がある取り組みが好きなんだなと、驚きの発見です。(本山実里氏)
●私は、とにかくカエルが怖くて怖くて(笑)。それでも来てしまうのは、みなさんと一緒に作業をする楽しさと達成感を味わいたいからでしょうか。東京生まれの東京育ちで、田んぼの中に入る機会なんてまったくなかったのですが、この半年は貴重な体験ができたと感激してます。(細谷裕代氏)
●お米として流通する前に、米粒以外の部分がこんなに大量にあるんだなと思いました。ワラ、モミ、ヌカなど、それぞれ使えるものになるんでしょうけど、それにしても米粒だけの量は、とても少ないんだなと。そう思うと、1膳のご飯がとても貴重なものなんですよね。あらためて大切に思いたいと感じました。(剣持由紀氏)
●私も青森の十和田という田舎育ちで、一面の田んぼに囲まれて過ごしました。子どもの頃の、いろいろなシーンを思い出しましたが、子どもにとっては遊び場だった田んぼで、こうなって、こうしてお米が生み出されるのかと、作業をしながらリンクしていきました。それを、自分の仕事、飲食のコンサルにも結び付けて考えることもできて、参加できてよかったなと思います。(上久保瑠美子氏)
●私は県内の小千谷市なので、地元といえば地元ですが、田んぼが、そして、田植えや稲刈りがこんなに身近なものになったのは初めてです。今回は娘も連れて来ましたが、すでに、また来たい、またやりたいと言ってます。いろいろな地域から集まったNICeの面白い大人たちと接することができたのも貴重な体験になったのだと思いますね。(髙橋慶蔵氏)
●東京生まれの東京育ちで、十日町の田んぼに来るにあたって、持ち物の一つひとつが、「これはどうして必要なんだろう?」と、まさしく未知の世界。腕をカバーする腕抜きなど、着けてみて、作業してみて、やっとその必要性がわかったり、触るのも怖かったようなカマも、「私でも使えるようになった」と、起きることの一つひとつが新鮮でした。(安藤愛子氏)
左/参加者の話に聞き入る白羽毛ドリームファームのみなさん。右/一人ひとりの意見に、うなずいたり、「へーっ!」「そんなことを思ったんだ」と、感じることの違いにも興味津津のNICe棚田クラブの面々。
増田/茅原さんのお父さんは、お米屋さんで、そんな、お米屋さんとしての立場から、何か感じたことをお聞かせください。
● 実は戦争で焼け出され、一時期、東京から新潟に移り住んでいたんですが、新潟にいても、田んぼや米づくりには縁のない生活でした。今回は人力で稲刈りをしたものの、その後の作業で、これだけの機械が活躍しているんだな、すごいなと。田んぼを維持するのに、どれだけの費用が必要なのかを考えると、ますます減反も推進されていることだし、後継者がいないのも当然かと思いましたね。自然を相手に、人間が思う通りにはできない農業。今後の農業、後継者育成のために、何が必要で何が大切なのか、しっかりと考えて小売りの立場からも提案していかなければと感じています。(茅原長政氏)
増田/お米の計量を頑張ってくれた髙橋慶蔵さんの娘さん、夢翔ちゃんは、どうですか?
●稲刈りはとても楽しかったです。今日は、このお米を持って帰って、おばあちゃんに炊いてもらいます。(と、大事そうにお米の袋を抱える髙橋夢翔さん)
増田/では、準備の段階から動いていただいた小林京子さん、いかがですか?
● 自分は農家ではないけど、「あ、これが米づくりだよね」「うん、こんな感じだよね」と、日本人ならきっと感じる、懐かしいような何かがあると、体験する前は思っていました。ところが違ったのです。懐かしいどころか、むしろ、まったく別の世界、新しい世界が目の前に広がっている感じでした。だからこそ好き、だからこそ私はダメと、それぞれが思うことなんだなと。懐かしいからやってみるのではなくて、新しい世界だと思って、その世界で交流していくべきだなと実感しました。(小林京子氏)
増田/では、私からもお話しますね。私の世代の多くはそうだと思いますが、田んぼというと、あまりいい記憶が残っていません。大量の農薬を散布し、イヤな臭いがして、生き物がいなくなって、と。どんな産業にも表面と裏面とがありますが、裏面が行き過ぎると全体が悪い印象で伝わってしまいますね。最近は、その行き過ぎを見直すようになっていますが、NICe田んぼの米づくりを体験して、あらためて表裏のバランスが良くなっていると実感できました。「農業はいいよ」と臆せず人に言えるようになりました。それともうひとつ。「顔が見える関係」ということがよく言われますが、生産者と消費者が互いに顔を合わせることで、お米を大事にとか、感謝してとか、そういうことが観念的なことでなく、あきらかな事実になりますよね。このような関係を、もっと、あっちでもこっちでも築いて、巨大な流通にならずとも、お互いのことがわかっているような、そんな意思の通った流通をつくっていけたらと感じました。では、この半年、お世話になった白羽毛ドリームファームのみなさんからもメッセージを。
●夏に田んぼの周辺の草刈りをしてもらいましたが、田植えから稲刈りまでの間は、田んぼの中の草取りも欠かせないんですね。その草取りも体験していただくと、「こんな草が生えるんだ」とか、「気温によって田んぼの水の温度が違って、土の感触も違うな」とか、土からガスが出たり、酸素が入ったり、そんなことも実感していただけると思います。また、食べられる米粒だけでなく、ワラは縄やむしろ、肥料にもなり、米ヌカは、田んぼに返して新しい循環の役に立つと、そういうことにも注目していただけると嬉しいですね。そして何より、みなさんと一緒に仕事をすることで私にも元気が出ました。また来年も、天候が違うでしょうから、きっとまるで違う体験ができますよ。ぜひ引き続き取り組んでいただきたいですね。(樋口利一氏)
●私は自分たちの作業をしながらの参加でしたが、毎回毎回、また大勢が来てくれているな、みんな楽しそうだなと思って眺めていました。田んぼでの作業以外にも、津南ポークでのバーベキューをしたり、地元のお酒を飲んだり、ホタル観賞をしたり、都会のみなさんの意見をお聞きできたり、とても楽しく有意義な時間を過ごせたので、今後もこの棚田クラブを続けてほしいなと思っています。(樋口元一氏)
●顔の見える関係を生産者から感じるという貴重な体験となりました。日々、「今日のNICe田んぼの様子はどうかな?」とか、「鳥よけのCDは効き目があるかな」などと、必ずNICe田んぼを見てしまって、みなさんの顔を思い浮かべている自分に気付きました。また、自分も農業に携わって間がないので、手作業が少ない現代農業から入っているわけで、そこへ、手植えで、草刈りもカマで、稲刈りも手刈りでと、これだけ体験できたことが純粋に楽しかったです。こういう作業は、自分、好きだなって思いました(笑)。ありがとうございます。(中島弘智氏)
● 米づくりは、1年で1回しかできないものなので、私たちも毎年ハラハラです。それが楽しくもあり、難しくもあり、そんなことまで感じていただいたのが嬉しいですね。また、1年で1回しかできないことだからこそ一生懸命になれるものです。みなさん、とても楽しそうに取り組んでいらしたので、これからも米づくりを楽しんでいただけたらと思います。(樋口良幸氏)
●農業って、忙しい時期はまったく休む日がなく、仕事づけになる中、みなさんが来てくれる日は気分的にホッとできるんですよね。NICe棚田クラブのほか、美術大学の学生たちも来てくれているんですが、都会から来たみなさんとの作業を地域の人たちも興味深げに見ているらしく、「なんか楽しそうでいいよなぁ」って言ってくれるんです。逆に、自分たちが東京の日本橋や表参道に出向いて販売や交流の機会を増やすようにしていますが、最初は、緊張しても、3〜4日たつうちに、なじんでいって、「あー、東京の人も普通の人なんだな」と。実は東京の人というと一目置いていたんですが、みなさんと接するうちに、まったくそれがなくなって(笑)。交流を深めるほどに、都会の人も、自分たちと変わらない親しみやすい人たちなんだなと強く感じるようになりましたね。これから秋が深まり、雪が降り積もる季節になりますが、冬の十日町、冬の白羽毛にも、ぜひ来てください。(樋口徹氏)
増田/猛暑で収穫が心配されましたが、無事、立派なお米ができてよかったですね。また、みなさんの意見の一つひとつに深くうなずきました。今年はスタートの年でしたが、これからどんな交流ができるか、したいか、都市住民の要望、そして十日町のみなさんの要望、その両方をくみ上げて、ますます意義深いNICe棚田クラブにしていきたいと思っています。どうもありがとうございました。
取材・文・撮影/NICe編集委員
田村康子