「民営化ラッシュ」に負けるな、国民経済!
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「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」
第51回
「民営化ラッシュ」に負けるな、国民経済!
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【国鉄民営化がもたらしたもの】
国鉄がJRになってからというもの、やりたい放題&やらない放題だ。
旨味のない業務は縮小する、廃止する。あるいは外注先にぶん投げる。
一方、利益に直結する新規事業はどんどん起こす。
例えばターミナル駅に隣接する形でホテルや商業施設を設置する。
結果、地場の同業者の経営を追い詰めていく。
何より大切な安全性への不安が増したことはもちろんだが、
地方の生活や経済に与える打撃の大きさは、いかばかりか。
百歩譲って、JRが民間の創業による企業なら、まだ許せなくもない。
だが、JRは税金によって生まれて、あそこまで大きくなった事業体だ。
いわば国民のものなのに、ある日突然「民営化しました」と言って、
国民に牙をむいてくるなど、許されることなのだろうか。
【恩恵を受けるのは、国と大企業だけ】
公共事業の民営化は1980年代に始まり、30年以上、その流れが続いている。
ご存じ郵政の民営化も、しかりである。
いわば官民が一体となって押し進めてきたこの「改革」こそ、
資本主義の新たなステージと表される新自由主義の象徴である。
政府は維持負担が大きい事業部門を切り離し、収支バランスの改善を狙う。
一方、民間資本は、事業インフラが整った財産を手に入れることで、
短期間で大規模事業を軌道に乗せることが可能になる。
官民の利害は完全に一致する。
言うまでもなく、官民が得る利益のあおりを食うのは国民だ。
【ついに水道運営も全面的に民間へ】
そして今度は水道である。
政府は昨年3月、水道民営化に向けた水道法改正を閣議決定しており、
いよいよ本日(1月22日)から始まる通常国会に改正案が上程される。
言うまでもなく、水道事業を運営しているのは地方自治体である。
では、政府は何を考えているのか?
地方自治体が上下水道の運営権を民間に売却した際に得られる譲渡益を、
地方自治体に対する国の融資の返済に当てさせるつもりであり、
しかも返済期限を待たず、譲渡益分をそっくり前倒しで返済させる腹……、
というのが大方の予測である。
つまり、地方自治体には、結局のところ1円も残らないという話だ。
【地方自治などクソ食らえの水道法改正法案】
しかも、改正法案においては、
運営権を得た企業の利用料金設定を許可制ではなく届け出制にするという。
住民や企業に請求が及ぶ水道料料金がいとも簡単に跳ね上がる、
あるいは様々なサービスが低下する、そういう危険が極めて大きいのである。
水は、生命の元である。それを損得で運営するとは……。
もっとも水道を所有している自治体が、
そんな危険性の高い民営化をおいそれと容認するはずがない。
と、言いたいところだが、この改正法案では、
運営権の売却に関して、地方議会の議決を不要とすると謳っているのである。
地方創成どころか、地方分権すら否定するような話である。
【企業、自治体、地域金融機関の連携こそ重要】
だが国会の勢力図は言うまでもない状況であり、法案が廃案になる見通しはない。
では、どうすれば地方の経済や生活を守ることができるのか?
地域の企業が、事業主が、そして働く人々が、
もっともっと利益を創出するために努力するほかはない。
同時に、地方自治体や地域の金融機関が、そうした取り組みを
これまで以上に強く支援していくことが必須である。
国や大企業に依存しなくても、やっていけることを示さねばならない。
NICeもまた、頑張る企業や頑張る人たちの思いを成就させるべく、
事業成長に必要な知恵と情報を共有・循環させるための活動を強化する。
2018年を、民営化=新自由主義に負けず、
自らの努力とつながり力で、豊かさをつかみ取るための第一歩としよう。
<一般社団法人 起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.62
(2018.1.22配信)より抜粋して転載しました。
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