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NICe頭脳交換会 in 南房総レポート








2017年5月27日(土)、千葉県南房総市で、南房総市とNICe共催、南房総市朝夷商工会、南房総市内房商工会、日本政策金融公庫館山支店の後援、株式会社リクルートキャリア『アントレ』の協賛により、NICe頭脳交換会in南房総が開催された。頭脳交換会とは、プレゼンターが自身の事業プランや課題を発表し、それをもとに参加者全員が「自分だったら」という当事者意識で建設的なアイデアを出し合い、ブラッシュアップや問題解決を図るもの。同時に、互いの経営資源を生かし合い、やがては参加者同士が連携して、新規事業を生み出そうというNICe流の勉強会のこと。これまで全国各地で開催しているが、千葉県南房総市では初。市内外の経営者ら3組と南房総市役所が、事業構想や経営上の課題、地域の課題などを参加者に投げ掛け、地元千葉県をはじめ、埼玉県、東京都、神奈川県、愛知県から参加した39名がアイデアを出し合った。

オープニング



司会進行を務めたのは、この日最も遠方からの参加となった愛知県名古屋市の菅沼之雄NICe理事。開会のあいさつには、南房総市商工観光部商工課の内藤一浩課長が登壇し、歓迎の言葉と南房総市の魅力・現状をお話しいただいた。



2006年に7町村(安房郡富浦町、富山町、三芳村、白浜町、千倉町、丸山町、和田町)が合併して誕生した南房総市は、千葉県房総半島の南に位置し、東京湾アクアラインで東京圏からは車で70分、高速バスで100分。海あり山あり里山ありの豊かな自然に恵まれ、酪農発祥の地でもある。アワビの水揚げ量は千葉県が岩手県に次ぐ全国第2位で、その約半数が南房総市で水揚げされている。また日本で4カ所しかない捕鯨基地のひとつも同市にあり、和田のクジラ料理も有名だ。文化資源も豊富で、『南総里見八犬伝』の舞台となった史跡や、日本でも唯一と言われる「料理の神様」を祀った高家(たかべ)神社、日本の全神社の中で、出雲大社、伊勢神宮、岡崎八幡宮と共に四社だけが「神酒を造る神社」として認められている莫越山神社(なこしやまじんじゃ)も同市にある。一方で高齢化率43%(千葉県内で3番目)により、合併時から人口が約5000人減少するなど課題もある。自然も歴史も豊かで気候も温暖、起業移住支援も手厚く、近年は移住や二地域居住も少しずつ増えているとのこと。



つながりワークショップ



「わずか数分で“つながり”大前進!名刺交換はもう古い?!」
ファシリテーター 小林京子NICe理事




プログラムのスタートは、NICe恒例の「つながりワークショップ」。これはNICeオリジナルの交流ワークで、名刺交換や肩書きだけではわからない、その人の“人となり”、人としての経験や資源や想いを短時間でわかり合うというもの。参加者には、ひとり1枚ずつA3サイズに8項目の質問と、南房総市の7地域名付き地図が記された『つながりQ8(キューハチ)NICe頭脳交換会in南房総』シートとマジックが事前配布されている。

「NICe概要をみなさんにも配布していますが、経済うんぬんの言葉が多くていかにもビジネスという印象かと思います。でも実際は、ちょっと趣を異にしています。根底にあるのは、人間同士の関係性があってこそビジネスが生まれてくるという考えです。そこで、人と人、人として出会うプログラム担当が私です。どうぞご協力ください」


▲▼考案者の小林京子理事が5分間で記入するよう告げると一斉に書き始めた



▼場内を見回っていた小林理事は、記入タイム終了後、「あなたにとって『働く』とは?」「あなたにとって『豊か』とは?」「持っていません、足りません」「持っています」「南房総で自慢したいモノはコレ!」の記入例を紹介し場内を湧かせた



▼続いて、5,6人ごとに着席している6つのグループ内で、『つながりQ8』シートを掲げて自己紹介。半数以上が初参加で、初対面ながらも、すぐに各グループから笑い声や歓声、拍手がわき起こる




増田紀彦NICe代表 講演



「実例に見る 連携ビジネス成功の秘訣」
  ~つながり力で、飛躍&再成長を目指せ!~


「みなさんの商売のヒントになるようなお話をしようと思います。連携ビジネスというのは、1社だけで商売するのではなく、他社と組んでビジネスをしようということです。小さな規模の事業者が自分の力だけで市場をつかむのはなかなか大変です。自分の経営資源だけで頑張ろうとすると、なかなかチャンスはつかめません。手を携えて、いかにも組みそうな人じゃない人と組んで、面白いビジネスをされている実例をご紹介します。



さきほど内藤課長もおっしゃっていましたが、南房総市はいろいろな資源がありますね。昨日市内を車で走り回ってみました。同じ海でも白浜と富浦では表情が異なりますし、内陸も山もある。ひとつの市ですが、気候風土も人の気質も違うし、それにあわせて商売も異なります。いろんな人たち、いろんな商売がここにありますね。そういう普段組まないような商売同士が組むことによって、新たな価値が生まれ、市場を獲得できるのです。これから実際の事例を紹介します」




増田代表は、「これとこれが組んでどんな新規事業ができたでしょうか?」「これは誰に喜ばれるでしょうか? どういう人が買うと思いますか?」「販売価格はいくらくらいだと思いますか?」「どうやって市場を広げたでしょうか?」「どのように連携していったのでしょうか?」と、参加者にクイズ形式で質問を投げかけながら、“まさか!”の連携ビジネス事例と、聞けば“なるほど!”な連携ビジネスを次々に紹介。




思わぬ組み合わせや意外な販売価格に、会場内のあちらこちらから「へーーっ」「えーーーっ?!」「なるほど!」と驚きの声があがった。



なぜそのビジネスを思いついたのか、どんな経営課題が発端だったのか、どのような社会問題や消費者のニーズに合致しているのか。実際にどうやって誰と誰が連携し、どのように商品化させ、どこで・誰が・誰に・どのように販売しているのか。4事例の起点や背景、連携の過程、ステップアップ方法など、連携ビジネス成功の裏側も語られた。

「さまざまな連携ビジネス事例を紹介しましたが、1社1社はどこにでもある業種です。それらが組み合わせることで、大きな市場をつかむことが可能という実例でした。南房総にもヒントになると思います。こうした連携の成功ポイントは、先に、高値で売れるものは何か、儲かるマーケットはどこかを考え、そこに進出するために、異業種と組んで自社の経営資源や技術を生かすという考え方です。せっかく商売を始めようとする時に、儲からない・儲かっていないマーケットへ出てもしかたありませんよね」



「この後の頭脳交換会では、4組の取り組みが発表され、みなさんにブラッシュアップ案を考えていただきます。発表者のために、ということもありますが、それだけではなく、自分も一緒に何かできないだろうかという立場で考えてみてください。今お話しした連携ビジネス事例をヒントにして、この後の頭脳交換会で実践してみましょう」


頭脳交換会 前半!



ファシリテーター:増田紀彦NICe代表理事

〇プレゼン1
テーマ「ブルーベリーのピューレとお茶、
どぶろくの活用方法と販路」

池田一男さん(千葉県南房総市)
株式会社 池田ブルーベリー園 
http://ikeda-bb.com/




標高336.6mの伊予ヶ岳(いよがたけ)を一望する、南総里見八犬伝ゆかりの地・平久里下地区の6aの農園で、9種類のブルーベリーや南高梅などを無農薬で栽培している池田一男さん。2006年に開園し、摘み取ったブルーベリーは市内の道の駅「富楽里(ふらり)とみやま」で販売しており、いつも完売するほど大人気。ほかに、7月中旬から8月末までは、ブルーベリー収穫体験の受け入れも実施している。
昨秋から加工品としてピューレの販売も開始した。このピューレは商品重量1キロに対し、その1.4倍もの果実を贅沢に使用しており、ビートやレモンを加糖しただけの無添加純正とのこと。池田さんのブルーベリーとピューレは、南房総市のふるさと納税の返礼品にもなっている。また、地域の食材を使った新商品を競い合う「第1回南房総名品グランプリ」で、初代グランプリに輝いた『金ぷりん・銀ぷりん』(南房総市・株式会社DIGLEE))に、池田さんのブルーベリーが使用されており、つい先月に開催された全国大会「にっぽんの宝物2017」スイーツ部門で、準グランプリを受賞。首都圏の百貨店からさっそく注文が入ったと嬉しそうに報告した。
さらに池田さんは、ブルーベリーのお茶と、どぶろく商品化も計画中とのこと。今日は、ブルーベリーのピューレとお茶、どぶろくの活用方法と販路について、いいアイデアがあればいただきたいと語り、プレゼンを締めくくった。



増田代表「ブルーベリーの実が大きいですよね! 今日のピューレには、レモンと糖(ビート)が加えてありますが、ブルーベリーだけでピューレにすることも可能です。アイスやヨーグルトに使う方法はすぐに思いつきますが、それ以外にどんな使いみちがあるか。あるいは、さらにこんな加工はどうかなど、味わいながらグループ内で5分間、話し合ってみてください。その後、グループリーダーから発表していただきます。ではどうぞ」


▲▼池田さん自慢の大粒ブルーベリーと、ピューレ、お茶がふるまわれ、
試食と試飲をしながら、グループディスカッション



▼シンキングタイム終了後、各グループリーダーから発表。「洋菓子はもちろん和菓子にも練りこめそう」「美容にも健康にも良いので、うすめてジュースにする。パスタなど麺に練りこむ。色もほのかに。フレンチ料理のソースにそのまま使えそう」「食べ物だけではなく、化粧品に。さらには、アスファルトの色に使用して、観光地としてその路をブルーベリーロードとする」「グッズとして、バッグ、アクセサリー、目に良いイメージからメガネのフレーム素材に色を混ぜ込む」「ブルーベリーのワイン、焼酎」「サプリメントはほかにも多くの商品があるので、実際に目へ投てきする目薬に」「南房総の特産・クジラ料理のソースに」「こんにゃくなど、美容系の商品開発に」「この色は白に映えるので、お豆腐など白いものと合わせる」「カクテル、地酒との組み合わせに」などさまざまなアイデアや応用案が発表された






〇プレゼン2

テーマ
「南房総市で先駆者的 空き家活用
 空き家シェアバンクの提案」

豊島大輝さん(千葉県木更津市)
地域コーディネーター
鹿野山自然学校代表
https://kanozan.jimdo.com/
http://kanozan.cocolog-nifty.com/blog/





地域コーディネーターとして活動している豊島大輝さんは、自己紹介からプレゼンをスタート。タラソテラピーのスパセラピストから、伊豆の高級旅館の経営立て直し経験を経て、8年前に千葉へUターンし独立。現在は、鹿野山自然学校代表をはじめ、里山ネットワークのコーディネート、市民講座スタッフなど地域活性化に尽力している。今回は事業課題というよりも、「南房総市への提案をしたくて登壇した」と語った。

空き家問題は全国各地共通の課題であり、その対応策として、国は空き家対策特別措置法を施行し、さまざまな自治体でもU・J・Iターン者の定住促進事業を行っている。だが実際は、特定の人気地域を除いて入居数は少なく、空き家の所有者である家主も貸したがらないなどの問題も残ったままだ。豊島さん自身も空き家活用のゲストハウス事業計画があり、現在アイデアを構想中とのこと。前提は、空き家の持ち主である家主と交渉が可能なこと。その構想過程で、「半移住者へ向けたシェアハウスの空き家バンク」を考え、同様のニーズが他者にもあるのではないかとの思いから、南房総市へ提案したく登壇したとプレゼン動機を述べた。

空き家バンクの現状として、『JOIN(移住交流推進機構)』の移住・交流促進事業 自治体調査報告書の統計を紹介。空き家バンクを利用して移住定住した層の統計では、最も多いのが定年後、次に移住後も通勤を継続する若いファミリー世代だ。だが実際は、空き家バンクを利用せず、自分たちで空き家を探し、移住もしくは週末利用している層が存在すると考えられると豊島さんは分析。世代別の統計では、空き家バンク利用者は60代から30代がほとんどで、70代以上や20代は空き家バンク利用が低い。だが豊島さんは、伊豆や熱海などで70代以上の空き家利用が多かったと述べ、空き家バンクを使用していない空白地帯だと指摘した。
一方、家主側の現状として、1軒丸ごと貸し出すことに抵抗があるものの、たとえば母屋なら空いている、離れだけなら貸せる、居住はしていないが定期的に遊びに来ているなど、半空き家の状態になっており、条件次第では貸し出せる家がまだまだあるのではないかとのこと。

豊島さんは縦横軸のグラフを示し、空き家バンクを利用していない層・半移住を望む層と、半空き家を持っている家主層を組み合わせることで、空き家バンクが開拓できていない1分野が生まれ、ここに取り組むことで、先駆者的な空き家対策ができる!と結論付けた。

さらに、『無印良品』を展開する良品計画が、二拠点居住を推進していることにも触れ、ビッグマーケットがあるからこそ大企業が動いているのではないかと指摘。また、地域外からの半移住・移住だけでなく、たとえば週末だけカフェをやってみたいというような、地域内でのニーズや利用方法があるのではないかと述べ、半移住&半空き家のシェアバンク提案のプレゼンを締めくくった。



▼熱い思いがこもったプレゼンで、持ち時間を超えてしまったため、挙手でのアイデア・意見を募った。神奈川県から参加したNICeメンバー相澤さんからは、ふるさと納税の返礼品を未来型にしてはどうかとのアイデアが。空き家バンクをしている行政に寄付して、10年後に返礼品ではなく、古民家を活動の場所に、移住になど、未来の沿線上に空き家バンクをミックスする案だ。惜しくもタイムオーバーになり、続きは懇親会へと持ち越し



〇プレゼン3

テーマ
「先輩起業家に会いたい!という会員ニーズに応えたい。
 どんなサービスを提供したら協力してくれる?」

杉山元輝さん(東京都千代田区)
株式会社リクルートキャリア アントレ
http://entrenet.jp/




雇われない生き方を応援するリクルートキャリア アントレを運営する杉山元輝さんは、アントレの説明からプレゼンをスタート。本誌は創刊から20年、その創刊時からNICe増田代表も深く関わっており、独立専門誌として認知度はナンバーワンだ。またネットでは現在、会員数が20万人!で、日本最大級の独立専門サイトになっている。会員数のうち半数が、1年以内に独立を目指しているという。

これまで多くの起業家・起業予定者と出会ってきた杉山さんは、開業前後ならではのお悩み解決に向け、さまざまなサービスや情報提供により、起業家たちを応援しているが、最も要望として挙げられるのが「先輩起業家に会いたい、体験談を聞きたい」という声だという。
具体的には、起業予定者と同じ業種・業態の先輩、あるいは、起業予定の同地域で起業した先輩たちだ。身近で知り合いがいれば、会いにも行けるが、なかなかおらず、つてもない。そこで杉山さんはアントレとして、「先輩起業家に会いたい!」という起業予定者のニーズに応えるべく新サービスを考案中だ。仕事の合間を縫って協力していただくには、どのようなお礼を用意すれば、協力していただけるか。金銭の謝礼なのか、ほかのものか、ぶっちゃけで、意見とアイデアを求めた。



▼シンキングタイム終了後、各グループリーダーから発表。「協力する代わりに、自分の仕事にプラスになる人、相談できる人に会わせてほしい。相談つながり!」「媒体の力があるので、記事にして宣伝していただきたい」「アントレの認定講師にしてほしい。ほかでも呼ばれるかも。また相談役の先輩を集めて、学校にしてしまう」「広告枠の提供」「記事にしてほしい、宣伝になるし、人気相談員として講師業もできるかも」「ネット上に1ルーム新設して、そこをアントレ頭脳交換会とする。ネット上での意見交換会ができる場に。スペシャリスト1人ではなく、数人のスペシャリストで行い、相談者だけでなく相談役同士も相談しあえる場にしてしまう」






頭脳交換会 後半!



休憩をはさんで、後半戦がスタート。
その前に、後援の南房総市朝夷商工会と南房総市内房商工会からごあいさつ。


▲南房総市朝夷商工会・経営指導員 鈴木元さん(左)、南房総市内房商工会・経営指導員 鈴木達さん(右)
「商工会は市町村に1つが原則ですが南房総市は広いので2つあります。東側の白浜・千倉・和田・丸山の4つが朝夷(あさい)地区、富山・富浦・三芳が内房地区です。ご存知のように地域内の経営、税務、労働相談が主ですが、近年は新商品開発、販路開拓や売上アップなどの相談が増え、支援策も時代に合わせて変わっています。みなさんの地元にもあると思いますので、有効にご活用ください。今日は青年部からも参加していますので、引き続きよろしくお願いします」


〇プレゼン4

テーマ
「伝統の房州(ぼうしゅう)うちわを守り、
伸ばすための知恵を!」

金井良介さん(千葉県南房総市)
南房総市商工観光部商工課




目にも涼しげな房州(ぼうしゅう)うちわを手に、市役所を代表してプレゼンに登壇したのは商工課の金井良介さん。最初に房州うちわの歴史から紹介した。

そもそも房州うちわの生産が始まったのは江戸時代。うちわの材料となる竹(女竹・細い篠竹)が豊富に採れ、また古くからの漁師町でもあり、漁の間、留守番をする漁師のおかみさんたちの手内職として、母から娘へとうちわづくりの技術が受け継がれてきたという。千葉県を代表する伝統的工芸品であり、平成15年には、千葉県で唯一の経済産業大臣指定伝統的工芸品にも選ばれている。

この房州うちわは、京都の「京うちわ」、四国の「丸亀うちわ」とともに日本三大うちわのひとつ。金井さんは、房州うちわの柄の部分を示し、その最大の特徴は丸柄にあると語った。京うちわは差し柄部分が骨に差し込んであり、丸亀のうちわは、柄の部分が平ら状の平柄なのに対し、房州うちわは丸い柄だ。これは良質の女竹を1本の丸ごと使っているためだ。その丸い竹を細く割いて64等分にし、それをクロスさせて扇型へと編み込み、骨と一体化させているのが特徴で、全てが匠の技の手作業によるものとのこと。「あおぐと風が違うと思います。少ない力で風が出ます」との言葉通り、優しくあおぐだけで心地よい風が起きる。

この房州うちわは、明治時代には安房(あわ※)の一大物産として生産され、関東大震災後に江戸の船問屋が焼失し、房州へと移住して来た後にはさらに物流も盛んになり、大正から昭和初期の全盛期には年間700万~800万本を生産、職人も1000人ほどがいたという。

ところが現在は、年間生産数は30万本。職人は5名しかおらず、南房総市内に3名、館山市内に2名。職人の高齢化と後継者不足により、このままでは伝統工芸品が消えてしまう。南房総市と館山市は連携して、房州うちわ振興協議会での後継者育成事業なども実施しているが、新たな後継者はまだ誕生していないとのこと。
原材料の女竹は豊富だが、職人が5名しかいない、後継者がいない。大いに売れて儲かれば後継者になりたいと手が上がるかもしれないが、1本あたりの販売価格は2000円から3000円台が主で、製作工程も21と多く、熟練技術を要することから大量生産も難しい。金井さんは、先の増田代表の講演にあった「高値で販売されているモノ」視点で、こんな素材を組み合わせたらどうか、たとえば皮とか、こんな異業種と連携したらどうかなど、ぜひ自由な発想で、どんなアイデアでも聞かせてほしいと切に語った。

※安房国(あわのくに)とは、房総半島南部の旧名で、房州とは、その安房の「房」の字をとって呼ばれた別称。現在の鋸南町・南房総市・館山市・鴨川市などが該当する。



▼各テーブルには、さまざまな絵柄の房州うちわが配られている。1本の竹を割いてクロスしてある扇部分が骨と一体になっていて、間近に見ると実に繊細。この丸柄が力を要さずに風を生み出す。参加者は仰いだり眺めたりしながら5分間のグループディスカッション



▼シンキングタイム終了後、各グループリーダーから発表。

・あおぐと仄かに香るような新製品。虫が来ないような防虫剤入り
・飾り用、お仏壇の中やお雛様のように対で
・海外からの観光客向けに漢字入り
・扇子状に折りたためる細工
・インテリア用に高級素材で。店舗の天井扇風機の羽に



・高額で購入してもらえる視点で考えた。
 スポーツチームとのコラボ。選手と握手できるプレミアム特典付き
・会社の宣伝用。ロゴ入り
・海外ブランドへ。日本の和テイストは人気なので、ブランドのロゴ入れ。
 たとえばルイビトンの皮で制作
・芸能事務所へ。コンサートチケットとのセット販売でサイン付き特典など



・演歌歌手
・シリーズもので東海道五十三次とか。揃えたくなるシリーズもの展開
・真っ白のキャンパスにして、海外アーティストへ
・古民家をうちわ博物館にする、そこで販売もする
・購入だけではなく、レンタルしてはどうか。
 お祭りやイベント時に1回100円でレンタルする。
 1本で30回転すれば元が取れるし、気に入ったら購入してもらう



・アートとして海外へ。
 高いものだと1万円を超す商品もあるので10万円台の商品化も
・海外アーティストに描いてもらう、あるいはサイン入り
・高級旅館やホテルのインテリアとして



・神社仏閣も多いので、神社とのコラボ。
 商売繁盛や安全祈願などのご利益・縁起物のうちわをつくり、
 高値で買っていただく
・店舗のディスプレイ
・うちわ以外としてキーホルダー
・制作工程を小学校の授業の一環にしてもらう
・扇子利用が最近は増えて来ているので、
 ストーリーを打ち出せばうちわも復活するのでは



・柄のほうに付加価値を加える、たとえば掘りなど加えるとか
・楽器にする。音がでるよう弦を張る
・アイドルのサイン入り販売
・仰ぎ方の指導を入れる
・後継者問題はやはり小学校の工作授業から。自分でつくるうちわ。
 千葉県民なら房州うちわは自分でつくれる、くらいにしてしまう




ここまでの発表を小林理事がまとめて紹介。
続いて挙手制でのアイデア出し

・海外からの観光客、高級旅館のお得意様へのプレゼント用に。
 宿泊施設に購入してもらう
・でかくつくって看板にする。うちわそのものを広告にする
・日にかざすと透けて美しい。カーテン、日よけ、丸窓に差し込む。
 ステンドグラス的に飾れるので神聖な神社にも
・UV加工にする。夏祭りの浴衣にあう。日傘ではなくうちわなら男女使える。
・相撲の懸賞のし袋の代わりに。ほかの伝統ものと組む。達磨、お位牌にも



金井さん「こんなにたくさのご意見が出てくるとは!
ありがとうございました!!」




●○●○●○●





番外編

頭脳交換会翌日の5月28日(日)、NICeメンバーは南房総市商工観光部商工課の岡本竜一さん・小谷隆幸さん・金井良介さん、そして2014年から毎年NICeつながり祭りに参加され南房総市の魅力をPRし続けてくださった真田英明さんの計らいで、““NICe大人の遠足”へ。




一行はまず南房総国定公園へ。海底が見える遊覧船に乗り、湾内を一周した後、日本で2番目に古い洋式灯台・野島崎灯台を見学。続いて、前日の頭脳交換会でも話題に上がった廃校再利用の「シラハマ校舎」へ。





金井さんの母校でもある旧長尾小学校が、新型コミュニティセンター「シラハマ校舎」として新たに生まれ変わったのは2016年。



この日は、「シラハマ校舎」を企画運営している合同会社ウッドの代表・多田朋和さんに校内をご案内いただきお話を伺った。多田さんは、シェアハウスにホテルとカフェを併設した「シラハマアパートメント」を経営し、2つ目のプロジェクトとして廃校になった小学校(旧長尾幼稚園・長尾小学校)の利用案募集に応募、2度目の再エントリーで採択。多田さん自身も職人と一緒になって校内のリノベーションを行ってきたという。もともと建築・内装の専門家だけあって、旧校舎の面影を残しながらも、内装はおしゃれで機能的。旧小学校の校舎部分はオフィス棟・宿泊棟に、旧幼稚園部分は2017年からレストラン・バル「Bar del Mar」、コワーキングスペース「AWASELVES」が営業を開始している。そして校庭部分には、「無印良品の小屋」が初登場し、第1期・第2期見学説明会では多くの希望者が市内外から集ったという。第3期・4期はまもなく。




シラハマ校舎
http://www.awashirahama.com/nagao/index.html
見学説明会
http://www.awashirahama.com/nagao/mujihut/index.html

昼食は、富浦港直送の地魚料理店・福喜庵で。続いて腹ごなしに、房総半島を望む船形山の切り立った崖の中腹にある通称「崖の観音」こと普門院 船形山 大福寺に参拝。ラストは、東京行きの高速バス乗り場が併設されている道の駅・枇杷倶楽部(びわくらぶ)で解散!







取材・文、撮影/岡部 恵

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