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福島のチャレンジに続け! 東北発!全国の起業家応援スペシャル NICe頭脳交換会レポート








2017年3月18日(土)、福島県郡山市のビッグパレットふくしまで、福島県中小企業団体中央会及びいわき信用組合の後援、日本政策金融公庫東北創業支援センターの協賛により、NICe主催「福島のチャレンジに続け! 東北発!全国の起業家応援スペシャル NICe頭脳交換会」が開催された。NICeは、東日本大震災以降、2012年から毎年3月11日前後に福島県を舞台に、東北経済活性のお手伝いを目的にした応援イベントや勉強会を開催してきた。2017年は、“相互支援の輪”を、福島・東北から全国へ!をテーマに、北海道、岩手県、秋田県、宮城県、福島県、栃木県、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、愛知県から、48名のチャレンジャーが参加した。

オープニング



西尾望さんの司会でスタート。続いて、中小企業者のための支援機関である福島県中小企業団体中央会 業務推進課主査 大信拓さんからごあいさつをいただいた。


▲総合司会を務めたのは、北海道と東京でデザイン会社を経営するNICe正会員・西尾望さん。福島でも数々の6次化商品のデザインを手がけており、この日は顔なじみの生産者さんも多数参加


▲福島県中小企業団体中央会 業務推進課主査 大信拓さん
http://www.chuokai-fukushima.or.jp/
「1社ではなかなかできないことも、広域の連携で実現可能になるということを実感しています。今日の場も、そんな新たな連携、チャレンジ、価値創造につながる機会になると楽しみにしています!」


つながりワークショップ



「わずか数分で“つながり”大前進!名刺交換はもう古い?!」
ファシリテーター 小林京子NICe理事


NICe恒例の「つながりワークショップ」。これはNICeオリジナルの交流ワークで、名刺交換や肩書きだけではわからない、その人の“人となり”、人としての経験や資源や想いを短時間でわかり合うというもの。参加者には、ひとり1枚ずつA3サイズに8項目の質問が記された『つながりQ8(キューハチ)2017in郡山』シートとマジックが事前配布されている。


▲▼「縁あって今日この場に集っているみなさんで、知り合い、そしてつながろうというプログラムです」。考案者の小林京子理事が4分間で記入するよう告げると、参加者は一斉に書き始めた



▼記入タイム終了後、場内を見回っていた小林理事は、「今までサイコーのチャレンジ」「最近できるようになったこと」「ゼロからスタート。やってみたい仕事」の記入例を紹介し場内を湧かせた



続いて、5,6人ごとに着席している8つのグループ内で、『つながりQ8』シートを掲げて自己紹介をするように指示。初参加の人も多く、初対面にも関わらず、すぐに各グループから笑い声や歓声があがり、拍手がわき起こる。まさに、わずか数分で“つながり”大前進!を実感する。




最後に小林理事から、「シートはこの後、名刺代わりにお使いください。今日のテーマは“チャレンジ”です。チャレンジしながら応援もし合う、をキーワードにしていただければと思います」と結び、次のプログラムを紹介した。


被災地起業家インタビュー

 「震災をどう乗り越え、事業をどう伸ばしたか?」





ゲストスピーカー:新谷尚美さん 
くさの根株式会社(福島県いわき市四倉)
http://kusano-ne.net/

インタビュアー:増田紀彦代表理事


「みなさん、こんにちは、代表の増田です。震災から今日で6年と1週間が経ちました。昨年は熊本でも大きな地震が2回も起き、11月には東北で、また津波もありました。気象庁は後300年は余震が続くと発表しています。日本列島は地震だけではないですね。台風により大きな被害も受けましたし、火山もあります。起業家にとって、世界経済の混乱やデフレだけではなく、自然災害もまた、大きなリスク要因です。どう備えるか、遭遇してしまった後にどう向き合い、立ち上がっていくか、自然災害と付き合っていくか。私たち経営者にはとても大きな課題です。今日は、震災でご苦労された方が多く参加していますが、そのおひとり、いわき市四倉で食堂を経営されている新谷尚美さんに、小さな企業がこの日本列島で頑張ってくいくためのヒントをいただこうと思います」



新谷さんは仲間らとともに『道の駅 よつくら港』の中に、直売所と食堂を兼ねた店舗を構えていた。漁港からあがったばかりの新鮮な食材をいかし、中でも海鮮丼は特に大人気を博していた。しかし、2011年、震災による津波で食堂は全壊。
だが2ケ月後の5月16日には納屋で営業を再開させ、その後、青森まで出向き移動販売用の車を入手し、移動販売を開始する。そして同年11月15日には、現在の場所(いわき市四倉町東2-167-1 国道6号沿い)にて店舗営業の再開を果たした。従業員も全員復帰。さらに、加工食品の商品開発にも着手し、2016年には加工場も稼働させている。

地震発生当時、お昼の混雑が一段落し、ホッとしていたところだったという新谷さん。「揺れ直後の食堂の様子は?」「津波からどう逃れた?」「あの震災がなかったら今どうしていたと思う?」「津波で食堂が全壊。正直、どう感じた?」「どうやって営業再開をした?」「くじけそうになった事は?」「何を力に頑張れた?」「ここにいるみなさんへアドバイスを」について、率直に語っていただいた。



兵庫県出身の新谷さんは、福島が好き、福島の海が好き。そして県内でも特に魚種の多さとその美味しさに魅せられ、多くの応援と力により、今日があると語った。そして、やりたいこと、その思いを人へ発信する大切さも。

「自分ひとりで考えられることはたかが知れているので、いろんな方の応援やアドバイスは本当にありがたいです。自分がやりたいことを宣言すると、もうやらざるを得ない状況になります。だから自分が好きなことだけをする。やると公言してしまうのです。失敗を恐れないで、もし失敗したらまたゼロからやるか〜、と思えばいいんです。ゼロを怖がらずにチャレンジしていくことが大切です」



営業再開後は、復興工事に関わる人たちも多く、食堂は大繁盛。しかし工事が進めば、いずれは客足が減る。新谷さんはそれも見越して、食堂で提供してきた人気のドレッシングやメニューの商品化にも着手。



「いずれ麴関係者が減っていく、その先手を打って商品開発に挑んでいらっしゃいます。実に逞しいですし、素晴らしい先見性です。やる!と口に出すことでまわりから応援されますね。それも本人の頑張りが肝心です。もともと頑張っていない人は応援されませんし、頑張っている人は自然と応援されるから、ますます伸びていきます。さらに頑張れる。支援や応援が欲しいと言う前に、まずは本人が頑張っていることが前提条件だということも学ばせていただきました。さぁ、この後のプログラムは頭脳交換会です。こんなことやりたい!と頑張るチャレンジャー9組がプレゼンをします。どうぞ応援の気持ちでいいアイデアをたくさんお願いします」



NICe頭脳交換会

9組プレゼンテーション&参加者全員で知恵出し大討論 前半



○プレゼン1
清水承玉さん 福島県白河市
こまや合同会社
http://www.komayanokimuchi.com/

「新開発の 野菜に合うタレ! 
 どんな食べ方が素敵か教えて」




トップバッターで登壇したのは、母から伝統の味を受け継ぎ、美味しいキムチをと試行錯誤を重ね、それが評判を呼んで、今や地元大手スーパーから全国のデパート、新幹線の駅にも販売網を広げている「こやま」代表の清水承玉さん。定番の白菜やキャベツキムチ、山海の各種キムチ、タレシリーズやジャンなど、さまざまな人気商品を開発してきたチャレンジャーだ。これまでは肉料理に合うタレが中心だったが、今後は、地元福島県産や日本各地の美味しい野菜を活かした新製品にも臨む考え。今回は、野菜に合う新開発のタレについて、どんな食べ方・楽しみ方を提案できるか、アイデアを求めた。

増田代表「こまやさんは、有名なキャベツのキムチのほか、各種タレを作る名人です。試食用もご用意くださいましたので、みなさん、野菜をつけて試食してみてください。食べながら、この新開発のタレについて、まず味の印象、そしてこれをどんな料理に使ったら美味しいか。呼び名はどうか、グループ内で5分間、話し合ってみてください」


▲▼各テーブルには試食用として、野菜とタレが人数分用意された。さっそく試食した参加者からは、「美味しい!」「お肉が欲しい」「ビールが飲みたい」「辛いのが苦手だけれどこれは美味しい、食べられる!」「見た目ほど辛くない」などの感想が



▼5分間のグループディスカッション後、各グループのリーダーから発表。具体的な商品名の提案のほか、「コロッケパンのキャベツにかけてはさんで食べたら美味しそう」「山菜にも合う」「オイルとの相性も良さそうなので、バーニャカウダにもなる」「おにぎりの具」「おにぎりにつけて焼いたら美味しそう」「そうめんの薬味」「根菜のディップ」「おまんじゅう」「ペペロンチーノ」「ドレッシング」などなど次々とアイデアが寄せられた






▼アイデアは小林理事が模造紙にまとめあげ、各プレゼンターへのお土産に


増田代表「続きはこの後、清水さんはブース交流タイムにも出展しますから、ぜひ意見交換してください。どうでしょう、みなさん。人の頭の数だけアイデアが出てきましたね、これが頭脳交換会です。実感してください。さて次のプレゼンに行きます!」



○プレゼン2
渡部美佐さん 福島県下郷町 
笹屋皆川製菓
http://www.aizu-concierge.com/map/spot/10370/

「絶品『赤すじにんにくクッキー』。
ところが臭いが強く菓子加工場では作れない。どうする?」




天保年間創業の味を守り、手捏ねの生地で自家製あんをひとつひとつ手で包み、蒸し上げる昔ながらの手作りまんじゅうの老舗。その10代目承継予定の渡部美佐さんは、和菓子のほかクッキーやプリンなど新製品開発にも熱心だ。現在取り組んでいるのが、会津地方の伝統野菜を練り込んだ新製品。そのひとつ、「赤すじにんにくのクッキー」に関する悩みをプレゼンした。これはまだ試作段階だが、米粉を使用したグルテンフリーで、味も良く、フェアでの試食では絶賛を得た。だが、製造工程での臭いが大問題! 

増田代表「試作の時はほかに工房を借りてつくったとのことです。私も食べましたが本当に美味いっ!おつまみにもなる。商品化すれば売れそうなのに、製造過程で臭いが出てしまうため、自分の和菓子工房ではつくれません。さて、何かいい手はないでしょうか? グループ内で5分間、話し合ってみてください」



▼5分間のディスカッション後、アイデアが出たグループから発表。
「製造場所ではなく製法を見直してはどうか?」「ドライにしてから製造するのは?」「刑務所や就労施設などに協力してもらう」「赤すじにんにくの農家さんに粉末加工してもらう」「商品企画とレシピそのものをアイデアにして売ってはどうか」「養鶏所や養豚場などとの連携」「地元野菜の栽培から加工、販売まで、一貫で行っている高校もある。そういう活動している学校を巻き込んではどうか」「低温除湿乾燥の専門家です。パウダーにすればいろんな加工できるので、においを抑えた加工は可能。一度やらせてください」と具体的な提案も!




○プレゼン3

丸岡一志さん 福島県郡山市 
ふくしまふるさと写真の日 実行委員会委員長
https://www.furusato-photoday.com/
グラマラス東北
https://www.glamorous-tohoku.com/

「グラマラスな福島・写真展と物産、日本一の日本酒試飲と
 インバウンド観光案内 実施に向けてのアドバイスを!」




編集・デザイン会社を営む丸岡一志さんは、2016年度の地域経済産業活性化対策費補助金(被災12市町村における地域のつながり支援事業)として採択された「ふくしま ふるさと写真の日」実行委員会委員長を務め、写真展を福島市、郡山市、東京で開催してきた。これは、ふるさとを離れざるを得なかった避難者の、アイデンティティとつながりを継承したいと、丸岡さんが発起人となり活動しているプロジェクト。特に、震災当時まだもの心が付いていなかった幼い子どもたちが、本来の出身地ではない避難先がふるさとになりつつあることへの危機感と、同時に大人もまた、郷土愛が希薄になってしまうのではないかという想いから企画したという。撮影を担当したのは、親子撮影で有名な写真家ブルース・オズボーンさん。撮影現場に同行した丸岡さんは、多くの笑顔のおもてなしに感動したと語った。そして2月に東京で開催した写真展でのエピソードを紹介。東京での会では、写真の展示だけでなく、福島産品の物産販売や日本酒の試飲も同会場で行ったのだ。その時に、写真展示だけでは得られなかった交流をとても実感したという。丸岡さんらは、この写真撮影を定点観測のように毎年継続し、故郷の記憶を掘り起こし、記憶に刻み、次世代へと伝えていきたい、さらに写真展に物産販売や試飲を融合させ、現地観光へとつなぎたい考えだ。そのためのアドバイスを求めた。



増田代表「写真展と物産展の組み合わせはとてもいいと思います。写真だけで感想を聞かせて、というよりも、形のあるモノをはさむことで、コミュニケーションもしやすくなりますね。テーマにある観光は、その物産で販売している商品の生産者のもとへとか、会えるとかも含まれるでしょう。さぁこの写真展を毎年継続するために、もっと盛り上げるために、どんなアイデアがあるでしょうか。挙手制でいきます!」



▲「生産者、その加工業者など、販売する商品に関わる方達の写真も撮影して展示してはどうか。どんな風につくられるのか、生産から物産までの流れや人の流れが分かるような写真があるとより近く感じるのでは。その人に会えるとなれば、観光に行きたいとなるのでは」「展示会に物産の生産者本人にも来てもらう。思いを直に聞ける、会話できる場にする」「収益をあげるには日本酒を活かす。県内の酒蔵さんの協力を得て、日本酒試飲とお弁当付きの入場チケット販売をする。酒蔵めぐりも人気なのであわせて観光企画もできる」「いろいろな酒蔵の撮影もして展示する、映像上映もする」「ヨーロッパのソムリエを招待して、酒蔵見学もしてもらい、帰国して自国で宣伝してもらうとインパクト大と思う」

増田代表「ありがとうございました! 以上で前半が終了です。この後のブース交流タイムをはさんで、さらに6組のプレゼンがあります。交流タイムでは、丸岡さんの写真展の作品スライド上映も行いますし、公庫さんの相談ブースもあります。では、ブース交流タイム、スタート!」


ブース交流タイム



頭脳交換会前半戦を終えて、ここからは、「旨いもの、楽しいもの大集合!ブース交流タイム」。場内にはプレゼンターや自薦他薦による、さまざまなチャレンジャーがブースを出店し、後半開始までの40分間、賑やかに交流を深めた。







▲四家正典さん&戸澤誠さん(福島県いわき市)
株式会社 夕月 http://www.kk-yuzuki.co.jp/
自慢のかまぼこ各種を組み合わせたお得パックを特別価格で販売!


▲川上美和さん(福島県大熊町) 
會空 https://www.facebook.com/%E6%9C%83%E7%A9%BA-473517766076706/
大熊町と会津をつなげる 会津木綿の手づくりテディベア『あいく〜』『しまく〜』を販売



▲柳沼美千子さん(福島県須賀川市)
パン工房MANA Facebookページ
自然酵母でつくったオリジナリティたっぷりのパン、アップルパイ、新作のハラール菓子などを、自家製つる工芸品に乗せて販売


▲引地理恵さん(福島県伊達市)
伊達市五十沢地区名産の肉厚の柿を、あんぽ柿だけではなく、干し柿にも加工し、特別価格で販売


▲目黒照枝さん(福島県柳津町)木工房MEGURO &斎藤英子さん
奥会津産の桐や杉を素材に、目黒さん(写真右)が手づくりで生み出す、温もりあふれる木工製品を販売


▲新谷尚美さん(福島県いわき市)
くさの根株式会社 http://kusano-ne.net/
起業家インタビューに登壇くださった新谷さん。食堂で評判の味を商品化した、サンマのみりん干し、ポーポー焼き、海老しんじょうなど自慢の加工品を販売


▲須藤芳浩さん(福島県棚倉町)須藤農園
後半のプレゼンに登壇するお米&イチゴ農家の須藤さん。旬のイチゴと、お土産にも嬉しいお米の少量パックを販売


▲森田安彦さん&菅野伸二さん(岩手県普代村)
http://www.vill.fudai.iwate.jp/
後半のプレゼンに登壇する森田さん。三陸の海で育てた良質の若昆布を細くすいて乾燥させた普代村特産品すき昆布と、自ら撮影した震災記録写真集を展示販売


▲清水承玉さん・清水大永さん(福島県白河市)
こまや合同会社 http://www.komayanokimuchi.com/
プレゼンのトップバッターで登壇くださった清水さん。自慢のキャベツキムチ、ジャンなどの販売ほか、キクラゲの味付け試食も提供


▲青木さわ子さん(東京都台東区)
Kuu Home(クウ ホメ)http://ameblo.jp/yanaka-kuu-home/
後半のプレゼンに登壇する青木さん。手づくりの刺し子ブックカバーやアクセサリー、作家作品などを展示販売


▲渡部美佐さん(福島県下郷町)
笹屋皆川製菓 http://www.aizu-concierge.com/map/spot/10370/
前半のプレゼンに登壇した渡部さん。元祖「倉村まんじゅう」をはじめ、自家製のあんこを固めて小石サイズにした「いしごろも」などを販売


▲目黒大地さん(福島県只見町)
目黒麹店 http://megurokouji.com/
明治32年創業の老舗麹店7代目の目黒さん。添加物は一切使用せず、只見川の清らかでおいしい水で仕込み、豪雪地帯ならではの雪蔵でじっくり低温熟成させた天然醸造の味噌などを販売


▲右から、鈴木尚登さん(秋田県由利本庄市)
Be linked http://www.be-linked.jp/
&宮崎まさひろさん(秋田県横手市)&深谷怜さん(宮城県)
鈴木さん厳選おすすめの秋田名物 稲庭うどん、かりんとう、こだわりの「至福のたまご 黄身の余韻」、蜂蜜、いぶりがっこなどを販売



▲▼丸岡一志さん(福島県郡山市)
https://www.furusato-photoday.com/ 
プレゼンで紹介した「ふくしまふるさと写真の日」の作品をスライドショーで紹介。撮影ストーリーなどひとつひとつの作品に込められた思いやエピソードも



▲株式会社日本政策金融公庫 国民生活事業 東北創業支援センター(宮城県仙台市)
https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/index.html
伊藤誠所長と角田勝さんによる、事業資金融資なんでも相談コーナー





       ○●○ ○●○ ○●○



株式会社日本政策金融公庫 国民生活事業
東北創業支援センター
https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/index.html
所長 伊藤誠さん、角田勝さんからごあいさつ



▲「昨年に続き、2回目の参加です。前半3組のプレゼン、私自身もとても勉強になるお話ばかりでした、特に、このようにみなさんの前で発信してご意見を聞くことは、非常に大切な機会だな思います。公庫は、政府が全額出資している政策金融機関で、全国152支店の創業サポートデスクのほか、電話で相談できる『創業ホットライン』もあります。後半戦もみなさんと一緒にいろいろ考えてまいりますので、どうぞよろしくお願いします」と語った角田勝さん。そして所長の伊藤誠さんを紹介


▲急遽あいさつに指名された伊藤所長。出身は福島市で、震災当時は会津若松支店に勤務していたという。実家の福島市へ、会津から水を運ぶため、地震で凸凹になった峠道をようやく越え、早朝にたどり着いた時の思いなども披露。「平成24年からはいわき、そして現在は仙台で、東北創業支援センター所長を務めています。金融機関という仕事を通じて、一歩でも前へ進もうという方々に多く出会ってきました。そんなみなさんのお手伝いさせていただいています。今日をご縁に今後もどうぞよろしくお願いいたします」


 NICe頭脳交換会 

9組プレゼンテーション&参加者全員で知恵出し大討論 後半



○プレゼン4 

森田安彦さん 岩手県普代村 
普代村役場
http://www.vill.fudai.iwate.jp/

「東南海地震による津波被害が危惧される、
 静岡県吉田町に防災アドバイスを送りたい」




陸中海岸に面した漁業の村・岩手県普代村は、震災で大津波に襲われながら死者数0ということで、国内外でも幾度と報道され、現在もなお各地から視察団が多く訪れている。その来訪自治体のひとつ、静岡県吉田町の防災の取り組みについて森田さんは相談したいと登壇した。

増田代表「なぜ、普代村の森田さんが、静岡県吉田町のために?」

駿河湾に面した静岡県吉田町は、東日本大震災後にすぐ津波ハザードマップを制定し、高さ8.6mの津波の到達予想を立て、地震防災ガイドブックを全面改訂した。そして津波避難対策として、町内に15基の津波避難タワーを完成させ、住居地区ごとに避難するタワーを計画し、詳細な地図を配布するなど、防災に注力している。その一環で、普代村へ吉田町の議員たちが視察に訪れたという。
ところが、普代へ訪れた視察団から、「本当に自分たちの防災対策は万全なのだろうか」と不安の声が。その声を聞いた森田さん自身も吉田町へ赴き、津波避難タワーと町内の状況を視察。やはり危機感を覚えたと率直に語った。理由は、「高台がない町の地形、そして津波避難タワーに避難すれば大丈夫と思ってしまうことにある」という。

森田さんは震災当時、広報を担当していた。以降、多くの報道陣や視察団に対応している。20mを越える大津波で死者数0。高さ15.5mのコンクリート製の普代水門と、高さ15.5m総延長155mの太田名部防潮堤が町を守った、とクローズアップされがちだが、20mを越えた津波の威力で普代水門は損傷し、最上部26mの作業所ドアは水圧で破壊され、波は小学校の近くまで押し寄せている。もうひとつの太田名部防潮堤も、その手前の湾内に設置された何層もの防波堤と消波ブロックにより、津波の高さとエネルギーを分散でき、防潮堤を超えることはなかった。が、手前の漁港も漁協加工場も市場も店舗も津波に飲み込まれ、漁船600隻のうち550隻が流出した。明治・昭和と過去2度も大津波の被害を受けた普代村は、住民の防災意識が高い。「さらに高いところへ、高いところへと避難する意識」が普代村に根付いている。それでも、あの日、命からがら助かった住民も。
まだまだ反省点は多々ある、と危機感を持った森田さんは、2013年の広報誌で、「津波はいつかまた来る、その日のために」と特集を組み、住民ひとりひとりが備え、考え、行動するように願いを込めて訴え続けている。

▼森田さんが制作した広報誌『ふだい』、右写真は普代水門(2012年7月撮影)


「防潮堤や水門があれば安心、なのではなく、それがあるほどに危険な場所なのだということ。そして、高いところからさらに高いところへと逃げよう!というのが普代村です。しかし吉田町は海に面した平地が多く、さらに、という場所まで遠いです。津波避難タワーが完成したからと安心せず、もっともっと備えてほしい。ご縁のある吉田町へ、普代での自分の経験と、みなさんのアイデアとを届け、吉田町のみなさんに今一度考えていただければ」と語った。

増田代表「なんとか助けたい、そのヒントとなるようなことをみなさん、考えてみてください!」




▼5分間のグループディスカッション後、6チームからさまざまなアイデアが飛び出した。避難タワーの構造見直し、タワーに補助避難具を設置する、タワーまでの避難の方法やブロックごとの避難ルートの見直し・目印設置、避難訓練、各家庭の避難具設置、津波警報の知らせ方・伝え方などなど




森田さん「ありがとうございます。今後、日本各地で巨大地震が起きる確率を気象庁が発表しています。が、あの数字は、地震発生の%である同時に、私は、浸水区域内の方が亡くなる確率ではないか……と懸念しています。余計なお世話ですが助けたい。うちの村にそのヒントがあると思うので、今後も活動していきます」




○プレゼン5

真田英明さん&小谷隆幸さん 千葉県南房総市 
南房総市役所
http://www.city.minamiboso.chiba.jp/

「房総半島の先端、南房総市に起業家を呼び込むためには?」




千葉県の南端・南房総市から参加した、商工課の真田さんと小谷さんは、南房総市での起業・事業支援に取り組み、支援制度の拡充、サポート、イベント開催などに尽力してきた。7町村が合併して誕生した南房総市は、東京湾アクアラインで東京圏から車で70分、高速バスで100分。ちょうどあさってで合併11年目となるとのことだが、その間に人口が5000人も減ったという。理由は、高齢化率42%という自然現象と、高等教育機関がなく、また若い世代に人気の産業がなく、若者の人口流出によるもの。三方を海に囲まれ、昔ながらの穏やかな里山もある自然豊かな南房総市へ、起業誘致しようと真田さんらは活動を続け、徐々にではあるものの、東京との2地域居住が増え、若い人が増えてきているという感覚もあるという。しかし、もっともっと誘致して人口減少に歯止めをかけたい。そこで、30代後半までの起業家を呼び込むにはどのようなアイデアがあるか、どのような支援制度が望まれているか、忌憚のないご意見をうかがいたいと語った。


▲各テープルには、南房総市のPRパンフ、ガイドマップ、東京から来た若者たちによるSWOT分析などの資料も配布

▼3分間のグループディスカッション後、各グループおよび個人からさまざまな意見が寄せられた。中には市の名称の変更案も!



「空き家を利用しリノベーションして盛り上がっている事例があるので参考に。経済的支援、ITインフラを整備したオフィス、無料で送迎するなど」
「南房総市という名称が位置関係でしかない。正直どこなの?という印象。シリコンバレーのようなイメージをまず作ってはどうか。若い人たち集めて名前を募る。正式には変更できないが命名権のような利用法はどうか。うどん県のような愛称で」
「どこの市町村でも実施している。自分たちの市内だけで勤め先を得る・新設するだけではなく、東京までの間の市内にある企業と連携してはどうか。誘致ではなく連携の視点で」
「そもそも、東京から、と表現するのはどうだろうか。東京寄りの言い方で、南房総の中からの発信と感じられない。SWOT分析も地域名を変えればどこでも言えることしか書かれていない。もっと内部から自分らの魅力を見つける工夫をしたほうがいい。ハードを整えるだけではなくソフト面の拡充をしてほしい。ITのコワーキング、サーバセンターなどもできるのでは」
「東京都民からすると、『近い』は、いつでも行ける感覚で、行こうというモチベーションには結びつかない。半面、70分や100分は決して近くない。遠いと思って行ってみたら意外と近いね、という展開がいい」
「自然環境の良さもっと全面に押し出したほうがいいのでは。成田空港からは近いので特にインバウンドで。東京圏一帯と見られてしまうのを逆手に取ってはどうか。また自然環境を活かして、民泊、サナトリウム、海なし県の海になる!というアピールもあり」
「起業家ならなんでも、ではなく、業種を定めて、その業種に則したサービスを拡充させる。また、趣味と仕事が両立できること。住まいを無料とする、市内での足を確保してあげるなど」
「脱!首都圏宣言しちゃうといいかも」


○プレゼン6

青木さわ子さん 東京都台東区 
Kuu Home(クウ ホメ)
http://ameblo.jp/yanaka-kuu-home/

「東京下町の手づくり&刺し子雑貨店。
 奥まった立地で、集客と購買をのばすには?」




東京の谷中(やなか)で、手づくり&刺し子雑貨店を営む青木さん。谷中はレトロで下町情緒あふれる人気の観光地で、上野公園からの散策コースとして、また商店も多く、テレビや雑誌などで紹介されることが多いエリアだ。中でも「谷中銀座商店街」は有名な通りで、平日でも国内外からの観光客で賑わっている。その商店街から路地に1本入ると、閑静な住宅街。その一画にあるのが、青木さんのお店。
青木さん手づくりの刺し子製品や、作家作品による小物やアクセサリーなど、温もりあふれるテイストで揃えている。青木さんの悩みは、路地裏にあるため観光客や歩行者が少なく、また来店しても、「いいものを見せてもらったわ」と喜んでいただけるものの、刺し子の博物館のような状態で、購入までに至らないケースがあること。



▲▼「青木さんのお店はいい作品がたくさんあります。さぁ、ここからはディスカッションなしで思いついた人、挙手制で!」の増田代表のかけ声に、さっそく複数の手が挙がった


「お店にレンタルボックスを設置する。月ごとの定期収入が見込まれるし、作家さんが作品を持ってお店へ来たついでにほかの作品を買っていくこともあると思う。作家さん同士の交流の場にすることもできるのでは」
「私は販売の仕事をしています。経験から、入り口で手軽に買える価格の商品を置く。そうすると、人は財布のひもが緩むもの。店内へまず引っ張ることが肝心。その代金を払いに来ると、もうこれ以上押し付けられないという安心感からか、ほかにも買おうかしら、となる」
「通りにいる人だけがお客ではないと思う。ターゲットになる人を絞って、そういう人が見る媒体や場所にお店のものを置いて、ピンポイントで来るファンをつなげるほうがいいのでは」
「海外からのお客さんへ向けてはどうか。ゲストハウスに協力してもらい、作品を置いてもらう。刺し子ギャラリー&できれば教室も。カフェなどでもその方法やっているの」
「自分はクチコミサイトを参考にして購入するので、ターゲットが利用しそうなサイトを探してみては」
「刺し子というと、クラシカルなデザインだが、新しいデザイン、1点ものなどはどうか」
「刺し子ブックカバーも手がけているので、本の内容に則したワンポイントを施すなど、読書好き層へ向けた話題づくりを発信してみては」


○プレゼン7

平井國雄さん 福島県桑折町
感謝農園平井株式会社 
http://www.kanshanouen.com/

「通年で販売できる、新たな桃の加工品を考えたい」




福島中央卸売市場の青果部門に長年勤務後、家業の農業を継ぎ、丹誠込めて果物や野菜をつくっている平井さん。その産品のひとつが、高級贈答品として有名な「献上桃」だ。ところが、同じ桃の木から育ちながら、いわゆるハネモノと呼ばれる2番手の桃は、非常に安価で加工品などへ回されてしまうのだという。味も糖度も、献上桃と同じなのに、だ。そこで平井さんは、「献上桃」と同じ桃の木からできる2番手の桃たちについて、販売方法や加工方法などの創意工夫により通年で販売できる良案を求めて登壇した。

▼シンキングタイムなし、挙手制で発表





「高額な献上桃と一緒に、同じ陳列棚で『同じ桃の木です』をアピールして売る」
「桃の木のオーナー制度にして、木1本ごと買ってもらう」
「献上桃になれなかった桃、という名前で販売したらどうか。愛おしく感じる」(同意の声、多々!)
「桃が好きなので、何が残念かというと日保ちがしないこと。通年ならば、ドライはほかにも既製品がいっぱいあるので、グラノーラはどうか。グラノーラ好きな人に食べてもらえる」
「福島市内でフローズンピーチをつくっているところがある。瞬間冷凍で、日保ちも通年の問題もクリアできる」
「桃の漬け物もありますが、福島県産の果実や野菜を使いたいと考えています!ぜひ、うちのタレに使われてください」と、こまやの清水さん!(拍手喝采が沸き上がる!)



○プレゼン8

須藤芳浩さん 福島県棚倉町
須藤農園

「近く設立予定の農業法人に、NICeな名称を!」




福島県南部に位置し、栃木県那須町と茨城県大子町に隣接する福島県棚倉町。その北部の玉野地区で、米とイチゴを生産している須藤さんは、仲間らとともに農地所有適格法人(旧農業生産法人)を設立し、玉野地区の農業を元気にする活動を計画している。将来、農地を手放す考えの農家さんから作業を受託して、稲作を中心に、大豆やそばの転作生産、ゆくゆくはイチゴの施設園芸、農産物の加工販売、農家レストラン、民泊などを展開したい考えだ。そこで、 末永く残るような愛される法人名のアイデアを求めた。


▲▼「どうでしょう? いきなりは思いつきませんか? 交流会の時間を利用してもいいですね」と言ったそばから手が挙がった!
「木とか水とか、土地を守るようなイメージの言葉を入れたらいいのでは」「玉つながり!」「猫の手も借りたいという農家さんは多いので、玉の手!」などなど



○プレゼン9

引地理江さん 福島県伊達市 
「この3月で廃校になる地元五十沢小学校の活用方法を!」


の予定だったが、ファイナルプレゼンターの引地さんは、同じグループで同席した前田隆さんへ、PRの場を譲りたい!と申し出た。ということで、急遽。

○代打!

前田隆さん 福島県郡山市
株式会社デハイドレート ジャパン
https://www.dehydratejapan.com/




前田さんはプレゼン2の「赤すじにんにくの匂い問題」で、「においを抑えた加工は可能です」と名乗り出てた低温除湿乾燥の専門家。自身は技術設計者であり、低温除湿乾燥機の製造・食品乾燥加工や加工品販売を手掛けるデハイドレート ジャパンの代表取締役・CEOだ。同社は独自技術により、熱交換をせずに乾燥させ、原材料のもつ色・香り・味わいを損なわずに商品価値を高めることで多々貢献している。これまで農産物、水産物、納豆などの加工品100種類以上の乾燥実績があり、6次産業化に取り組む生産者、新商品開発を行う食品加工業者、サプリメント事業者など、国内外から高く支持されている。
「人が美味しいと感じるのは、舌よりも香りなのです。後付けで香りが来るほうが美味しいと感じます。その香りを殺してしまうのが熱です。特殊乾燥技術を持っていますので、いろんな角度で6次化のヒントをご提供できると思います」とあいさつ。


フィナーレ

いわき信用組合 
http://www.iwaki-shinkumi.com/

常勤理事・地域開発部長 
本多洋八さんよりごあいさつ




2年前に増田代表と出会い、食と6次化の感度が高まったという本多部長さん。6次化支援をはじめ、創業・起業支援、地域密着型投資ファンド、クラウドファンディングなど、持続的な地域経済の活性化に注力しているいわき信用組合の取り組みについて紹介。またつい先日の3月上旬には、全国9信用組合と日本政策金融公庫との連携により、農業法人向けファンドも設立。「金融機関も変貌しています。今日はいち参加者としてとても学びの機会になりました。みなさん一緒に頑張っていきましょう」と、力強いエールをいただいた。


最後に、小林理事から。総合司会を務めた西尾さんと、実行委員長を務めプレゼンを譲った引地さんへ拍手を送り、次回のNICe頭脳交換会の開催地が発表された。





次回、NICe頭脳交換会は……
「脱!首都圏宣言したらいいかも」との意見も飛び出した、あの南房総市です!
2017年5月27日(土)に、初開催決定!

詳細は近日発表
http://www.nice.or.jp/archives/38359


取材・文、撮影/岡部 恵

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