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NICeプロデュース ふくしま“食”プロジェクト 会津地域視察&ミーティング報告








2015年2月13日(金)、「NICeプロデュース ふくしま“食”プロジェクト」のため、福島県会津地方を訪問した。このプロジェクトは、組織や担当地域枠の異なりを越えて、連携による新たな6次化商品開発を目指して2014年9月から始動(※参考 開催レポート下記)。
NICe増田紀彦代表理事が同年6月より、福島県農林水産部が実施する「福島県6次化事業体サポート事業」のコーディネーター職に就任し、また同部が実施する「福島県地域6次化イノベーター事業」のビジネスプランナーにも就任。同県各地に配置されている支援員らとともに、生産者や食品メーカー、食品加工会社のもとへ頻繁に赴き、福島県の6次化事業発展と、県内の農林水産業復興に取り組んでいる。その取り組みを通じて出会った生産者・農作物・加工品・生産工程・知恵・技術と、これまでNICeの活動や交流を通じて育んできた資源を組み合わせ、つながり力の連携により新製品をつくり出そうという取り組みが、この「NICeプロデュース ふくしま“食”プロジェクト」だ。
現在は、新製品の開発だけにとどまらず、情報交換、ノウハウや素材提供、知恵の共有などにより、枠や組織を超えた連携の輪がさらに広がっている。今回もその活動の一環として、経営者からの相談要請を受け、NICe増田紀彦代表理事、小林京子理事、福島県中小企業団体中央会 6次化支援員の会津エリア担当・増井義博氏と、福島県南会津地方の下郷町の2組の経営者を訪問した。


会津若松市内から雪道を車で約1時間。最初に訪問したのは、天保年間創業の製菓店・笹屋 皆川製菓。看板商品は、江戸時代に日光道中を通行する参勤交代の大名たちに賞されたおまんじゅう・下郷倉村の「倉村まんじゅう」だ。その伝統の味を今も守り続けている元祖がこのお店。代表を務める9代目の皆川美津子さんと、10代目として承継することを心に決めている長女・渡部美佐さん、母娘ふたりで菓子製造・販売業を営んでいる。美佐さんは結婚し、下郷町とは別の地に家族がいるが、冬期は雪のため、自宅と実家を車で往復するのは困難と判断、家族と離れて実家住まいをしながらお菓子づくりに励んでいる。





商品はすべて、ふたりの手づくり。店舗併設の工場で、こだわりの素材と徹底した職人製法でつくられている。伝統の元祖「倉村まんじゅう」をはじめ、地場産のそば粉「会津のかおり」と下郷産の会津地鶏の卵を使用した手づくりのそばまんじゅう、自家製のあんこを固めて小石サイズにした「いしごろも」、大きな栗が丸ごと1個入った栗まんじゅう、下郷町の特産じゅうねん(シソ科の植物:エゴマの地域名。ポリフェノールやリノレン酸を多く含む)使った6次化商品のゆべし「ぷちぷちもち」などの和菓子のほか、地元企業や生産者と協力し、洋菓子の6次化商品の開発・製造も展開している。そのひとつがクッキーだ。第3セクター会津鉄道(株)のオリジナル商品「ばす駅長クッキー」や、さらに一口サイズの手絞りで焼き上げたおしゃれな「じゅうねんクッキー」なども人気商品。これらは店舗で販売しているほか、会津鉄道の主要駅や会津若松市の小売店へ卸している。
美佐さんは、さらに新製品開発も試作中で、今後も地産の素材と手づくりにこだわり、6次化商品をつくっていきたいと意欲満々。ほかにも、セット販売の構想、パッケージの改善などにも取り組んでいるという。一行は、店舗併設の工場内も見学し、その製造工程も見せていただいた。






丁寧かつ巧みな職人技の手ごねで、ひとつひとつ手包みされ、蒸し上げていくおまんじゅう。おふたりの阿吽の呼吸と、職人技に感嘆しつつ、蒸したての美味をいただいたのち、経営課題について話し合った。





笹屋 皆川製菓(ささや みなかわせいか)
〒969-5204 福島県下郷町大字弥五島字道上3340-1
電話0241-67-2648
営業時間 夏9:00~18:00 冬9:00~17:00 





続いて一行が向かったのは、国の重要伝統的建造物群にも指定されている「大内宿(おおうちじゅく)」。会津と日光を結ぶ会津西街道の宿場として江戸時代に栄え、現在も全長約450mの街道両脇に50軒近い茅葺きの家々が軒を連ねる旧宿場だ。この日は大雪だったが、ちょうど翌日から2日間、冬の風物詩・雪まつりhttp://ouchi-juku.com/index.php?Sketches
が開催されるとあって、雪灯篭の製作準備が始まっていた。住民がそれぞれ自宅あるいは店舗の前に、自分たちで雪灯篭をつくるのだという。風情ある町並みに加え、白銀を照らすいくつもの灯籠の灯り……。さぞ幻想的なことだろう。

 
  




この旧宿場の中の1軒、藁葺き屋根の古民家で、地元産の野菜や果物を使用した料理や、季節の創作スイーツを提供する飲食店「分家玉や(ぶんけ たまや)」へ。代表を務める佐藤則子さんが主に料理を担当し、長女・加奈さんがスイーツを担当。母娘ふたりで経営し、観光シーズンは地元農家の女性たちをパート雇用して切り盛りしている。店は16年前に則子さんが開業。看板メニューは「鶏せいろう飯」と自家製スイーツ、炭焼きのイワナ料理で、特に女性客のクチコミが多く高い評判を呼んでいる。








則子さんによると、大内宿は年間100万人を超える観光客が県外から訪れる名所だが、冬期は降雪量も多く、観光客は激減。そのため、雪まつりなどのイベントがない平日は店を閉め、予約のみに対応しているという。
スイーツ担当の加奈さんは、店で提供するスイーツのほか、バースディケーキなどのオーダーや、焼き菓子のネット販売もしている。さらに5kmほど離れた温泉地に、スイーツ専門の新店舗開店を計画中とのこと。開店挑戦への熱意をうかがうと、大内宿だけではなく、新店舗により地元に新たな雇用を生み、地域貢献をしていきたいという。「まだまだお仕事で活躍できるお年寄りもたくさんいらっしゃいますし、仕事がないとの理由でUターンできない同世代もいます。素材そのものの農産物、加工製造、お店での接客、裏方での事務やネット、配達など、何かしらできること、得意なことで仕事ができたらと。働ける場を、みんなが集まれる場を提供したい」と加奈さん。増田氏と増井氏は、現状や新店舗開業についての課題や留意点を聞き出し、課題解決へ向け連携して取り組んでいくことを確認。その後、一行は新店舗の予定地にも立ち寄り、周辺環境などを視察。会津エリア支援員の増井氏を中心に、今後も密に情報共有しながら協力していくことを決め、半日に及んだ視察&ミーティングを終了した。




南会津大内宿  分家玉や(みなみあいず おおうちじゅく ぶんけたまや)
〒969-5207 福島県南会津郡下郷町大内権現上358
http://www.bunke-tamaya.jp/
営業時間 10:30~16:00(冬期は要予約)


※参考レポート
第1回会議報告 http://www.nice.or.jp/archives/24457
マコモ田 視察報告 http://www.nice.or.jp/archives/26105
NICeつながり祭り2014 第2部 頭脳交換会 http://www.nice.or.jp/archives/26311
ABE農園の取り組み 情報共有ミーティング報告 http://www.nice.or.jp/archives/26915





取材・文・撮影/岡部 恵

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