日本政策金融公庫 協力 NICeつながり祭り2014【同時開催】第2回 NICeなビジネスプランコンテスト本選 レポート前半
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2014年12月13日(土)日本政策金融公庫 東京中央支店にて、NICe主催、日本政策金融公庫 協力により、NICeつながり祭り2014【同時開催】第2回 NICeなビジネスプランコンテストファイナルステージが開催された。
プログラムは、「つながり力で、日本経済と地域社会の未来を拓く!」をスローガンに、全国各地のみなさんが出会い、知り合い、“つながる”ための6部構成。参加者は、北海道、秋田県、宮城県、福島県、茨城県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、新潟県、福井県、愛知県、岐阜県、大阪府、和歌山県から65名が駆けつけた。また、参加できないNICeユーザーにも“つながり祭り”の会場を飾る手づくりデコレーションや配布物などの“モノ参加”を呼びかけ、全国各地から37の個人とグループが送って来た思い思いの“モノ”が結集し、広い会場内がぐるり一周、つながりの輪に彩られた。
■プロローグ
オープニングに先立ち、NICe正会員・
上久保瑠美子氏が制作した力作の映像!
■オープニング
総合司会は、名古屋市から参加したプロのナレーター
梶田香織氏。場内に施された飾り付けは、全国のNICeメンバーが持参もしくは送ってくれたものだと紹介し、「こうしてたくさんの方にお越しいただきましたので、できるだけたくさんの方とつながっていただきましょう」と、プログラム第1部のファシリテーター、小林京子理事へマイクをつなげた。
■プログラム 第1部
つながりワークショップ
「わずか数分で“つながり”大前進!名刺交換はもう古い?!」
ファシリテーター NICe理事 小林京子氏
小林氏は最初に、開催協力と会場を提供くださった日本政策金融公庫に感謝を述べ、さっそく本題へ。参加者にそれぞれ1枚ずつ配布されたA3サイズの『つながりQ10(キューテン)』について説明した。これは小林氏が考案した、NICeオリジナルの自己紹介シート。中央に氏名欄があり、周囲には「仕事はこれです」「ここに住んでいます」「持っていません、足りません」「持っています」「得意です」「嬉しかった!」「欲しいです」「プチ自慢」「これからしてみたい」「大切にしています」の10個の空枠がある。
「その人の、ビジネスについてではなく、人間としての側面がわかる項目になっています。あまり時間をかけずに、パッと思いついたことを一言、書いてみてください。では、さっそく3分間で記入してみてください」
その間、会場内をゆっくりと回りながら、参加者の様子を見ていた小林氏。記入時間の終了を告げると、何人かの回答をお披露目して場内を和ませた。
そして次に、周囲の人と1グループ5名になり、ひとり約1分で互いにシートを見せ合いながら自己紹介するよう促した。わざわざA3サイズにしていたのは、この“互いに見せ合う”ため。グループごとの自己紹介が始まると、場内のあちこちから拍手や笑い声が上がり、あっという間に和やかな雰囲気に。
「いかがでしたか? たくさんの共通点、つながりがあったと思います。テープも用意していますので、どうぞ今日は終了まで、このシートを胸やまたは背中に貼って、自己紹介していない他グループのみなさんへも見せてください(笑)。
そんなつながりから、ビジネスの芽をみつけていただきたいと思います。この時間はあくまでもきっかけですので、今後のつながりを深めていただければと思います」と、プログラムを締めくくった。
■プログラム 第2部
NICeプロデュース ふくしま“食”プロジェクト 報告&頭脳交換会
「未知の作物 マコモ&キクイモをヒット商品に!!」
プレゼンター NICe増田紀彦代表理事と福島のみなさん
荒川周介氏(いわき市) 福島県中小企業団体中央会
6次化事業体サポート事業6次化支援員いわきエリア担当
柳沼美千子氏(須賀川市) パン工房MANA 代表 料理研究家
遠藤菊男氏(いわき市) マコモ生産農家・彩花園 代表
小田八州雄氏(東白川郡棚倉町) 東日本薬草研究所 代表
福島のメンバーと共に登壇した増田代表は、「ひとことだけ」と以下のように述べた。
「この後みなさんに、NICeプロデュース ふくしま“食”プロジェクトのシフォンケーキを試食していただきます。そのお味、感想をグループで話し合って、グループごとに発表もしていただきます。
今日この場に、福島県の各地で頑張っている仲間が来てくれました。ご存じの方も多いでしょうが、NICeは震災被災地の経済活性のお手伝いをしつこくしつこくやっています。世間はどんどんそういう声が薄れていて、『福島はもう大丈夫だろう、東北はもう大丈夫だろう』と思っている人がいるかもしれません。しかし現実は違います。時間が経てば経つほど、むしろ問題が複雑になって、解決できないことがたくさん起きています。
特に福島は、食べ物の問題で非常に苦労しています。消費者庁の調査によると、福島のものは食べないという声が年々増えています。汚染されているものを食べない、というのならわかりますが、汚染の有無にかかわらず福島産だから、という理由で食べない人が増えているというのです。ショッキングな結果です。それでも、新しい魅力的な商品をつくって、市場へ殴り込みをかけよう!という仲間たちがいます。それが、NICeがお手伝いしながら取り組んでいる『NICeプロデュース ふくしま“食”プロジェクト』です。具体的に何をしているかについては、福島から来てくれた荒川さんにお話ししていただきます」
指名された荒川氏は、「常磐ハワイアンセンターでおなじみのいわきから来ました」と挨拶し、「マコモを知っていますか? キクイモ知っていますか? 食べたことある方は?」と場内に問いかけた。そして、それらについて説明するよりもまずは、マコモとキクイモを使った商品・シフォンケーキを試食していただき、その感想を先ほどのグループで10分間話し合ってほしいと述べた。
●テーマ1 グループディスカッション
●テーマ1 マコモとキクイモを使ったシフォンケーキ、試食した感想は?
発表タイム
Aチーム
・しゃりしゃりしている
・少しパサパサするので、クリームと合わせるといいのでは
・あまり特徴を感じなかった
Bチーム
・食感については人それぞれだった。
しっとりしていて、もちもちしている。ざらつき感があり、少しマイナスかなという意見も。
舌に残るような感じがするという人もいた。・シフォンケーキは普通、口の中の水分を取られてしまうかと思ったが、そんなこともなかった
・草くさい。好みは分かれるところかと思う
Cチーム
・食感はなめらか。ぱさぱさしていない
・風味がやや青っぽい。健康志向な感じがするが、もう少し甘みがあってもいいという意見も
・女性は甘さが欲しい、男性はこのままでいい、と。ターゲットによって分けるのもいい
・見た目が普通
・シフォンケーキは大きいサイズもあるので大きいほうががいいという意見と、
残ってしまうと食べないので、小さいサイズはいい!との感想も
Dチーム
・他グループからも出ている青っぽさは、体に良さそうな印象があって良いとの意見
・子どもも好きそう
・軽く食べられそうなので、たくさん食べられそう
・時間の経過で風味は変わらないか?
Eチーム
・味はおいしい
・素材や食材の知識がないまま食べたので、どうやったんだろう、なぜシフォンケーキなのか、もっと知りたいと感じた
Fチーム
・マシュマロのような食感
・うま味があり、また食べたいと感じさせる
・抹茶のような色味と薫りがするので、身体にいい印象
・やや苦みが口の中に残る
・(製造した)柳沼さんがお上手なのでできた味わいだろうと思った
Gチーム
・繊維質を感じる、やや舌触りが気になるという声も
・効能は何か気になる
・シフォンケーキでないとダメなのか?
機能性食品なのか、おいしい食品か、どちらなのか
Hチーム
・ふわふわで食感がなめらか
・植物的な後味がする
・甘過ぎなくてちょうどいい、飽きのこない味わい
・見た目が食欲をそそらない
●なぜマコモとキクイモ? そもそもマコモとキクイモって何?
8チームから感想を聞いた荒川氏は感謝を述べ、このシフォンケーキの素材である、マコモとキクイモについて紹介した。
マコモとは、日本では古くから自生しているイネ科の植物であり、遠藤氏は自宅前の圃場(ほじょう:作物を栽培する田畑)で、生産し、販売している。このマコモはとても不思議な植物で、自然界にある食用黒穂菌(くろぼきん)という菌がつくと、茎の部分の新しい茎が肥大し、それが食用マコモタケとなる性質を持っている。マコモタケは主に中華料理の食材として使われているという。さきほどの試食の感想の中で、「草くさい、抹茶のような」とあったが、シフォンケーキには、このマコモの若葉を粉末にしたものが入っていると明かした。
マコモの若葉粉末は、爽やかな緑色と、たたみのような癒しの香りが特徴だ。さらに荒川氏は、「天然のグリーンの美しさ、薫りも魅力ですが、一番はその栄養価の高さにあります!」強調した。若葉には、ビタミンA、C、Eやβカロチンがほうれん草の5〜9倍、葉酸も3倍以上含まれているという。実はこれほど栄養価が高いにも関わらず、マコモタケが生産のメインであったため、葉のほうは廃棄されていたのだ。そこに着目し、マコモ生産農家・彩花園の代表 遠藤菊男氏らと共に、天然のグリーン・マコモの若葉粉末を生かした6次化商品に取り組んでいるのだと述べた。
もうひとつ、シフォンケーキの原材料であるキクイモについて。イモという名称ながら、ジャガイモやさつまいものような芋類とは異なり、でんぷんをほとんど含まない。さらに、天然のインシュリンと言われているイヌリンを多く含むことで近年は着目され、お茶やチップなどの加工品も増えているという。だが、プロジェクトメンバーである小田氏は、お茶としてだけでなく、これをハチミツのようなねっとりしたエキス状に煮詰めることで、糖度74%という甘さを実現した。しかもキクイモ100gあたりに含まれるイヌリンは60%。甘いものを食べたくても食べられない方へ、砂糖の代替品と大いに貢献できる甘みだ。先のシフォンケーキの甘みは、このキクイモの糖化エキスの甘みであり、緑色はマコモの若葉粉末によるものだと説明した。
「このマコモとキクイモを使って何かできないか、ということで始まったプロジェクトです。シフォンケーキの製造には、パンづくりの天才・柳沼美千子さんにお手伝いいただきました。先ほども増田さんからお話があったように、福島は、風評被害にかなり苦しんでいます。いいモノをつくっても、なかなか受け入れていただけない現状です。
であれば! 他にないものをつくればいいんじゃないか!という単純な発想です。生産者の力、製造の力、流通を結びつけて、新たな商品を市場へ投入しようと頑張っています」
荒川氏はプロジェクトメンバーに声をかけ、それぞれ一言ずつ思いを述べるようマイクを渡した。
マコモ生産者の遠藤氏は、「機能性の部分、グリーンの部分、それぞれが発揮できるような商品づくりで製造者と組んでいきたいと思っています」
キクイモ糖化エキスの小田氏は、「利用価値のあるものを世に広げたいと思っています。今日はみなさんに知っていただき嬉しく思っています」
料理研究家でありパン製造のプロフェッショナルである柳沼氏は、
「新商品の試作のために何種類かパンをつくって、食材が残ったので、じゃシフォンケーキもつくってみようとつくってみたら、試食会で大ウケでした。今日、みなさんからのご意見を持ち帰って、また試みたいですし、新商品を出していけたらと思っています。日本のビールに、キクイモのエキスを入れると、ベルギービールのようになります! まだまだ多様性がありますので、みなさんのお力をかりて日本中へ浸透させていきたいと思っています」
続いて荒川氏は、次のお題を示した。
「試食いただいて、いい面、悪い面、いろいろなご感想をうかがいましたが、まだまだ始まったばかりで、勝負はこれからです。マコモとキクイモノの良さ、機能性、イヌリンのことなどを踏まえて、次にみなさんに、この商品のネーミングを考えていただきたいのです! またグループで10分間話し合ってください」
10分後、増田代表がマイクを手に、ネーミング案を聞いてまわった。
出された案は以下。
●テーマ2 マコモとキクイモを使った商品・シフォンケーキのネーミング
発表タイム
・ヘルシースイート
・大地の栄養補給ケーキ
・福島
・ナチュラルカロリーカットスイーツ
・葉っぱとお芋のシフォン
・カロ軽シフォン
・マコイモシフォン
・グリーンチョークケーキ
・グリーンノートシフォン
・マコモキクイモ健康シフォン
・ノンカロリーの甘み ふわっとシフォン
・ふわもこケーキ
・あまこもケーキ
・まこりんケーキ
・まこりんシフォン
・水土健康(読み:スイートヘルシー)
・緑の衝撃
・まこもちゃん
・まこまこ
・きくいもちゃん
・ままこもケーキ
・ヘルシフォン
・もこもこ
・食べる羽毛布団
・ふわはーと、
・とろはーと
・もちもちはーと
・まこもグリーン
・グリーンスター
・めぶき
・まともだねシフォン
・美肌シフォン
・イヌリン1000mg
・青汁ケーキ(まずい!もういっこ)
・ヨインシュリン
・キクイモとモッコ
ネーミング案を聞き回った増田氏から。
「いろんな方向性でネーミングが出ました。成分、産地、状況、音感などなど、ネーミングをどうやって考えるかという教科書のような案が続々出ました。ネーミングを考えることで、どういうイメージがあるか、リサーチができます。実際に商品化を進めます。もし採用させていただける時にはまたご連絡します。今後とも応援のほどよろしくお願いします!」
最後に荒川氏から。
「こんな勢いで元気にやっていきますので、今後も応援よろしくお願いします!!」
■スペシャルプログラム
ゲスト 宮城県石巻市 千葉牧子さん
壇上の増田代表から、今日はもうひとり紹介したいと話が続いた。
「福島県の北、宮城県石巻市から千葉牧子さんに来ていただきました。
千葉さんは震災でご主人を亡くされて、その1カ月後に、お母さんから引き継いだそろばん教室を再開されました。震災1カ月、まだまだ混乱の最中、モノも無い時期に再起してきました。その千葉さんには、長年、抱いていた夢があります。
時には、頑張る、いやいやまだまだ、と気持ちも揺れていたそうです。
11月に石巻で起業セミナーをした時に、受講生として参加されたのが千葉さんです。
ここから頑張ろうと。20年来の夢、KIDSそろばん教室とカフェのコラボ『M-kids』です。
でも悩んでもいらした。自分の夢のためにご主人が残してくれた蓄えを使っていいのか、それは子どもたちのために使うべきじゃないか、そんな悶々とした気持ちを抱いてきました。今日はその千葉さんが、自分の声で、自分の言葉で、事業プランを語ってくださいます」
「緊張してますか?」と小声で千葉氏に声をかけた増田氏に対し、微笑みながらマイクをしっかりと握り、決意を語り始めた。
「今日はこのようなご縁をいただき、場違いではないかと心配して来ました。そろばんの指導歴は20年ほどになりますが、子どもが大好きというだけでやってきました。自分らしい仕事、生き方をするため、KIDSの教育とカフェのコラボで、先ほどのケーキのようないい食品、いい玩具、いい環境、空間の中で、これからの未来の子どもたちに提供したいという思いでいます。そろばん教室とカフェとのコラボですが、たた好きというだけなので、今コーヒーの煎れ方をはじめ、お料理など、ひとつひとつ勉強していこうと思っているところです。ですので、いろんなお知恵を拝借して、みなさんと触れ合うことで、良い刺激をいただけたらと思って参りました。どうぞよろしくお願いします」と深々と頭を下げた。
再び増田氏から、事業プランについて説明がなされた。
「そろばん教室とカフェとのコラボ、その建物をつくるための土地は60坪、すでにご用意されています。決してケチらない、自分にとっても素敵と思える空間で、子どもたちに学んでほしい、地域の方、ママたちに、癒しの空間を提供したいということです。とはいえ、これから建物をつくり、魅力的なものをつくりあげ、サービスを考え、食品もやるから衛生基準もクリアしなくてはなりません。子どもを預かるのですから、いろいろな責任もついてきます。今日の参加者の中にも、お子さんを預かって教室を運営している先輩、幼児教室、また飲食店の先輩など、いろいろ来ています。20年来の思いですが、まさにこれから、です。
石巻は大変な被害を受けた地域です。そこから千葉さんのように新しい取り組みが生まれて来ています。NICeはこういうタイミングを待っていました。震災直後は自衛隊の人たちにできても、私たちには何もできなかった。やがて経済活動で、起業で、そして暮らしの中で、力を携え合える時が来ることをずっと信じて、ずっと復興応援をしてきました。そしてとうとう千葉さんのように、自分の夢を叶えようという方が出てきました。
千葉さんは1年半後、2年後に、開業をかなえたいということなので、今日はまず千葉さんを覚えてください。そしてぜひ応援してください。情報や知恵をいただきたいと思います。いつか石巻へみんなで行こうと企画する日が来ると思っています」
千葉さんのほうへ顔を向け、「行ってもいいですか?」と声を掛けると、「はい(笑)」との快諾。
増田氏も微笑み返し、最後に力をこめて訴えた。
「千葉さんとともに、福島の仲間とともに、つながって、あったかい起業を実現していきたいと思います。みなさん、これからもどうぞ、よろしくお願いします!!」
■プログラム 第3部
日本政策金融公庫にズバリ聞く!
「融資が受けやすくなった って本当ですか?!」
ゲスト
株式会社 日本政策金融公庫
国民生活事業本部
創業支援部 創業支援グループリーダー 森本淳志氏
聞き手 増田紀彦NICe代表理事
公開対談の前に、まず森本淳志氏から、日本政策金融公庫について説明がなされた。
株式会社日本政策金融公庫 国民生活事業本部創業支援部 創業支援グループリーダー、と肩書きを名乗った後、「長くて固い名前です(笑)。みなさんもどこかで“こっきん”と聞いたことがある方いると思いますが、未だに『国金さん』と呼ばれることがあります」と説明を続けた。
日本政策金融公庫の前身である国民生活金融公庫は、昭和24年、戦後の復興段階から商店街などの融資を行ってきた。2008年に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫の3つの政策金融機関が統合され、財務省所管の政策金融機関として、株式会社日本政策金融公庫という名称になる。森本氏は、小規模事業者や創業企業のための地域の身近な金融機関として事業資金を融資する、国民生活事業本部に属している。
融資企業数は93万社。最新の調査では日本には380万社があり、その中の多くの企業が過去一度は日本政策金融公庫を利用しているのではないかとのこと。かつ創業1年以内、つまり決算を一度もしていない企業との取引は年間2万3000社。金額でいうと2000億円の融資額になる。この「決算を一度もしていない」というのが重要だと森本氏は述べ、その理由を、保証協会へ申請して融資を受ける仕組みもあるが、単に銀行の窓口へ行き保証なく融資を受けるのは困難。そこを、事業計画や人を見て融資するのが公庫の役割であり、その分野は民間金融では対応難しいと語った。日本を代表する大企業名をいくつか挙げ、「この企業さんも公庫を利用されていました。私たち公庫を使って卒業していく、などといいますが、経済の呼び水効果です。民間ではできないということをやっているのです」と語った。
「では、本当に、公庫は使いやすくなったのか?です」
森本氏は、「大きく変わっています! 無担保・無保証で融資を受けられます。代表者の保証も基本的にありません。ノーリクス!です」と言葉を続け、具体的な融資制度の拡充例を挙げて紹介した。
たとえば元本の支払い据え置き期間について。「3年あります。このメリットは仮に1000万円を借りて月に10万円ずつの返済契約とした場合、1年間元本の据え置きをすることで120万円分のキャッシュを持っていられると同じ効果が生まれる。つまりアルバイトやパートを雇う余裕が生まれます」
続いて、融資制度のいくつかを紹介した。
「女性・若者・シニア起業家資金」は、性別や年齢等の条件があるが、金利が2.1%と非常に低く、さらに従業員を雇うと0.1%下がり2%となる。固定金利で代表者の保証条件等もない。
「新規開業資金」も以前に比べて格段に利用しやすいという。以前は金利4%弱だったが、無担保・無保証人でも2.5%。雇用によりさらに0.1%下がる。また、住宅ローンが終わっていれば不動産担保を利用することができ、その際は金利はさらに下がる。
25年度に施行された「中小企業経営力強化資金」についても言及した。これは、税理士、会計士、コンサルタント、信用金庫などの認定経営支援機関で事業計画のアドバイスを受けることにより、2000万円まで無担保・無保証で利用でき、金利は驚くほど低いという。
人工衛星をつくりたいという技術系ベンチャーやITベンチャー向けの「資本性ローン」については、「シリコンバレーにも無いすごい制度」とも言われ、運転資金、設備資金として使用することが可能。7年間~15年間で元本の据え置きができます。これも無担保、無保証で、事業が赤字の場合は利率が0.9%とかなり低い。ほかにも、参加者に配布した冊子『創業の手引き』に掲載されているさまざまな融資制度について紹介した。詳細はこちら
https://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html
「大創業祭という言い方をしています。各省庁も創業支援は本当に重要だということで国は予算を振り向けています。
また、公庫では、融資金が振り込まれるまでの時間の短さも特徴です」
平均では3週間くらいで(お客様の状況により多少変わる)、銀行融資で保証協会を利用した場合だと2、3カ月要するのに比べてもとてもスピーディだという。特に飲食店など許認可を必要とする事業の場合、許認可は事後確認が可能で、許認可よりも先に融資資金が振り込まれるのも公庫の魅力とのこと。「ただし、信頼できそうな人にです!」と念を押した。
さらに融資だけではなく、公庫の国民生活事業は様々なサポートも充実している。全国にある152支店の「創業サポートデスク」で相談ができるほか、土日深夜の相談(事前予約制)も開催している。また、フリーダイヤルの「事業資金相談ダイヤル 創業ホットライン」は、部外のオペレーターではなく、実際に融資を担当する公庫の職員が対応しており、何でも相談できるとのこと。
ほかにも、定期配信により役立ち情報を得られる、起業家応援マガジン、事業者サポートマガジン、各種セミナーやイベント情報、リサーチ情報等、ニーズに合わせて配信する各種メールマガジンも発行。
https://www.jfc.go.jp/n/service/mail_kokumin.html
また、創業までの行程がわかりやすく解説され、自身で計画表におとしこめる『ソウギョウノート』
https://sougyounote.dreamgate.gr.jp/ 、KDDIなどとの連携サービスで、無料ドメインのメールやWebサイト作成もできる『はじめてWeb』
http://www.seiei.or.jp/soudan/images/keiei_kojo12.pdf 、次世代の起業家育成を図る「高校生ビジネスプラン・グランプリ」も主催するなど、多岐に渡る。
「ここまで駆け足でお話しましたが、相談や質問などありましたらどうぞご連絡ください。
公庫は全国各地の支援機関とつながっていますし、各地に152店舗があります。結構いい担当者もいますから(笑)気軽に相談しにお越しください。土日や夜間、休日も受け付けています。融資の話であればどうしてもYES・NOの判断をせざるを得ませんが、相談はどんなことも、ゼロからでもどうぞ。『自分の事業計画をちょっと見てください。相談に乗ってほしい』と来ていただければ、相談もアドバイスも、ほかの業界についてもお話しができますので」
■ 増田×森本 公開対談
増田氏「森本さん、ありがとうございました。長く経営されている経営者の方からすると、『こんなに公庫は変わったのか!』と驚かれたことと思います。私も創業したのは30年前で、ずいぶん“国金さん”に助けてもらいました。それにしても、融資以外にもこんなに手厚いサービスがついて、世の中変わったなという印象です。大創業祭りだということですが、国がもっと開業率を上げようと、アベノミクスでも推進しています。が、誰でもいい、全員に融資、というわけではないですよね? 融資できない、貸せないという判断をするとしたら、どんなところが要因になるのでしょうか?」
森本氏「事業計画が詰まっていない段階です。『こんな商品をつくったから』というような目先だけで、事業計画が詰まっていない方は厳しいです。商品ができたから、ではなく、最終的な事業計画がまとまっているかどうか。ちゃんと説明ができて、答えが返って来るかどうかです。逆に言うと、融資をさせてもらえる、ということは、いろんな方と比較して大丈夫!とお墨付きを言われたのだと自信を持っていただきたい。私と同じ年齢ぐらいだと、これまで1万社くらいの決算書や事業計画書を審査しているので、見る目はあります」
増田氏「森本さんは入庫して何年ですが?」
森本氏「21年目です。目利きができるので、金融機関も公庫と組みたいとなるわけです」。
増田氏「計画が詰まっているかどうか、開業計画書のような書類を提出しますよね?」
森本氏「はい。今日配布した冊子の巻末にも付いています」
増田氏「計画が詰まっていない以外にありますか?」
森本氏「計画はできていても他人に依存しているとか、過去の経験から経営できる印象がないなどの場合です」
増田氏「本人がやろうとしている業界そのものの経験もありますが、まったく新しい挑戦をしようという場合、面白いビジネスを考えついた場合、そもそも、その業界がない場合もありますよね?」
森本氏「はい。その人が、別の業種であったとしても、どういう立ち位置でどういうことをやってきたか、また、やろうとしているのかで判断するしかありません。最終的には、神のみぞ知る、ですが。アイデア系であれば、シリコンバレーから来ている考え方ですが、お試しから始めるという時代になっています。初めは小さく300万円くらいで始める、という計画が、信頼できるなと思います」
増田氏「熱意は見ますか?」
森本氏「もちろんです!!
我々、目利きが育つのは、融資の数も多いですし、経験とノウハウがあります。銀行の場合は保証協会がついてくれますが、我々公庫は債権管理まで行うわけです。つまり、最後はどうなるのか。いわば取り立て屋です。私もやったことがあります。その経験もふまえて審査しているのです。熱意が無い方は事業が続きません。というのも、事業計画は本人の希望通りにはなかなかいきません。そんな壁にぶつかった時にこそ熱意が発揮されます。壁にぶつかっても、自分でしっかり考えて、計画途中でも自分でしっかりと対応する、変えていけるかどうか。その熱意は大事です」
増田氏「昔は、自己資金を持っていないと融資はダメと言われていましたよね?」
森本氏「以前は第三者の保証人がなければ利用できませんでした。やはりリスクを考えて融資をスタートしたわけですから。それが今や、無担保・無保証で利用できます。すでに10年以上も前からある制度です。自己資金も10年前は2分の1ないと無担保無保証人で利用できませんでしたが、今では10分の1で申し込みできます。なぜそうなったか。我々のノウハウが積まれたからだと言えます。ただし、制度上とは別に、自己資金がないと返済が大変だったり、店舗系で利幅が薄い業種などの場合はご本人がつらいです。支払いがそんなにない場合はこだわることはないですが。キャッシュが回るかどうか。業種・業態・取引条件・支払い条件などによります」
増田氏「今日の参加者はすでに創業している方が多いようです。創業後に、赤字だから借りたいという場合もあるかと思います。その時の判断は?」
森本氏「世の中の企業の7、8割は赤字と言われています。判断は、それがどういう性格の赤字なのか、です。決算上の赤字なのか、お金が回らなくて返済ができないのか、超過した分を何かカバーできるのかできないか、で判断します」
増田氏「ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスなど、非営利に近い、新しいタイプのビジネスの場合は、どう判断しますか?」
森本氏「NPO700社に融資しています。ソーシャルビジネスは、その名の通り、ビジネスですから、社会公共性が高いだけではなく、継続してもらわないといけません。ボランティアベースとか自己資金ベースで、ある程度は回るだろうという考え方では難しいです。キャッシュが回るかどうか、です。企業であれソーシャルであれ、ここが重要なポイントです。アイデア系のソーシャルは、役所の知恵が無いところや、役所ではできないことを、民間の知恵で解決して、仕組みにして、社会に提供するわけですよね? 同じく知恵を絞って効率を上げて、収益をたてる仕組みにすることです。労働集約型の商売方式で、何の確信も無いままやると、単に給料を減らすだけになってしまいます。たとえば指定管理者になりました、運営を任されましたで、何が違うかって、人件費を減らしただけで同じですよね。そうではなく、その人件費を違う形でシステムを入れて、改良して、同じサービスを公共的に提供し、キャッシュを回す。そういうことが必要だと思います」
増田氏「営利目的だろうが非営利だろうが、実際にキャッシュフローが、お金をちゃんと回していけるかどうか。そのしくみができているかが判断のポイントということですね。ソーシャルビジネス、コミュニティビジネス、NPOなども融資対象でOKということですね?」
森本氏「はい、そうです。NPO以外でも、いろんな社会的な業種に3000社、融資をしています。社会的な活動も対象です」
増田氏「参加者からの質問です。テレビ番組『半沢直樹』を見ましたか? 主人公に共感しましたか?との質問ですが」
森本氏「見ました。中小企業への想いには共感します。ただ、ひとつ言いたいのは、本当は言いたかったんですこの話し(笑)。だいたいテレビドラマで、中小企業の社長さんが苦労して最後に自殺する、という話しが多くないですか? 確かにゼロではないですが、今の世の中、法的にもかなり手厚く守られています。『お金は借りたいけれどその後が怖い。目玉でも売らないといけないかな?』と未だに言う方がいます。
日本はよく、『保証を付けているから再起できない、日本は良くない、悪い国』という方がいますが、管理の現場でやっていると、そういう問題ではないのです。なぜ、再起できないか? それは、社会的な信用を失っているからです。最後まで頑張ってしまうから、無理してしまうからです。金利が高いところから借りてでも、なんとか給料だけでは払おうとか。とても日本人的な美しい心でもあるわけですが、それゆえに、ビジネスとしての方向性まで間違えてしまう。ちゃんとやるべきことをやらずにいると、取引先からは離れられ、身内からも借りて返せなくて、最終的には誰からも信頼されなくなる。それが一番の問題なのです。
借り入れの場合、相談しに行けば差し押さえられるなんてことはありません。窓口へ出向いて、今の収入はこれこれなので分割で払いますとすれば、金融機関も親身に対応してくれます」
増田氏「まさに最後に質問しようと思っていたことです。ぶっちゃけ、返済できなくなったらどうなりますか?です。分割も厳しい場合もあるかもしれません。その場合は?」
森本氏「最終的には、返せる範囲で返してもらう、です。金融機関の立場は、そんなに強くはないのです。破産手続きや再生手続きをするなどもありますが、大事なのは、周囲の方に信頼されていれば、そんなに心配しなくてもいいのです」
増田氏「公庫が債権を放棄するというわけではないのですか?」
森本氏「放棄は基本的にしませんが、裁判上で決まればします。そうでない場合は、お客様の状況を踏まえて話し合いをさせていただくことになります」
増田氏「返せなそうな人が会場にもいますが、逃げ切れます!!(笑)」
森本氏「(苦笑)最初にそういう風に見える人へは融資しません。我々は目利きしていますから」
増田氏「あ、そこがプロですよね。でも本当に昔に比べて公庫さんは活用しやすくなりました。金融のプロと言うと、怖そうなイメージがありますが、公がやっていることですし、何よりも、みなさんを苦しめるためではなく、融通してみなさんを幸せにして、その結果、経済が良くなっていくために公庫はあるのですから。世界でも類を見ない、日本の素晴らしい融資制度、誇るべき制度だと思います。実際にこういう素敵な人(森本さんを示し)がやっていますので、ぜひ、相談したり小額からでも利用してただきたいと思います。最後に、参加者から、名古屋の担当者を教えてという質問です(笑)」
森本氏「個別に、あとでブースのほうへどうぞ(笑)」
増田氏「ありがとうございました!!」
レポート後半へ続く
取材・文、撮影/岡部 恵