増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」62「桑畑を表す地図記号」
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私は地図を見るのが、やたら好きな子どもだった。
鮮明なカラー写真など滅多に拝めない時代。
さすがに東京タワーや大坂城は絵はがきで見ることができたが、
見知らぬ普通の町の景色など、想像も及ばなかった。
それを知る手がかりは地図であり、その上に散りばめられた地図記号だ。
この記号は実に多くの知識を私に与えてくれた。
火力発電所しかり、税務署しかり、三角点しかりで、
先に地図記号でそれらの存在を知り、後からそれらの何たるかを承知した。
幾星霜。今では映像も画像も交通手段も格段に発達し、
地図記号に思いを馳せる機会もめっきり少なくなった。
そして気づけば、
記号にありながら、実際にはとんと見かけなくなったものも増えた。
たとえば桑畑を表す記号。アルファベットのYに似たその記号は、
見事に桑の木の特徴を表していると思うのだが、肝心の桑畑が少ない。
言うまでもなく、桑の葉はお蚕さんの食糧である。
養蚕が廃れれば、桑栽培も廃れて当然だ。
だが、桑は想像を絶するほど、地中深くに根を張っていて抜けないから、
栽培を止めたところで、簡単にほかの作物をつくることはできない。
それだけ根の張りがすごいなら、桑畑は地震に強いかもしれない。
一般的には、桑畑には雷が落ちないと言われているが。
(だから、雷鳴が轟いたら「クワバラクワバラ」と呪文を唱える)
いずれにしても、災厄から人を守り、産業を支え続けた桑畑である。
世界遺産登録された群馬県の富岡製糸場と絹産業遺産群には、
連日、たくさんの観光客が訪れていると聞く。
そこで、御利益たっぷりの桑畑の記号をプリントしたTシャツや、
ベースボールキャップなんかを販売したら、
世界中の人が大喜びして買ってくれるだろう。
あのYの下が折れ曲がったマークは、デザイン的にもカッコイイ。
指輪やペンダントヘッドにして、長く持ってもらってもいいくらいだ。
私にとっては、地図記号も、未来に伝えたい遺産のひとつである。
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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)
に、NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さん
へ、感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜ん
なるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第62号(2014/10/14発行)より一部抜粋して掲載しました。
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