「京都・光泉洞 協賛 第1回 NICeなビジネスプランコンテスト グランプリ本選 プレゼンテーション」 レポート
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2013年12月14日(土)、東京港区の女性就業支援センター(旧女性と仕事の未来館)で、NICe初となる「京都・光泉洞 協賛 第1回 NICeなビジネスプランコンテスト グランプリ本選」が開催された。これは「つながり力で、日本経済と地域社会の未来を拓く!第20回 NICe全国交流セミナー in 東京」と同時開催で、会場に集った参加者の投票によりグランプリが決定した。一次選考を通過した3名による7分14秒(7ナ、1イ、4ス)のプレゼンテーションの模様をこちらにレポート。
※当日の全編レポートはこちら→http://www.nice.or.jp/archives/20114
■グランプリ本選 プレゼンテーション
●エントリー1
岡田昭彦さん(北海道)Tobgetとかち 帯広地域雇用創出促進協議会
●テーマ
「十勝の元気は、北海道の元気!北海道の元気は、日本の元気!
トカチbuffet(十勝食材フェア)で集客サポート」
トップバッターの岡田氏は、自己紹介からプレゼンをスタート。出身は北海道帯広市。十勝産品販売のネットショップ「とかち大好き」を運営後、2012年より厚生労働省の委託事業であるTobgetとかち 帯広地域雇用促進協議会の事業推進員に就く。十勝の食材を全国へ広めるコーディネーターとして、広さ10830km2の十勝エリア19市町村、600軒もの生産者および企業を訪問し情報を収集。さらに関東・関西へも赴き、食材の買い手側であるスーパーや外食産業100軒以上を訪ね、十勝産品への声も収集しているという。
続いて、十勝の農産物のおいしさを紹介した。なぜおいしいのか。それは寒暖の差が激しく作物の糖度が特に高いこと。内陸性気候で晴れの日が多いこと。夏の日照時間が長いこと。100年前までは原生林の広大な地域だったこと。ワインやチーズ、ビールなどが生産される世界のグルメ地帯と同じ北緯43度であることなど、地球規模でおいしさに恵まれた地域であるとアピールした。さらに、全国生産の約3割のシェアを占めるジャガイモの種類は30種以上、チーズは全国生産の3分の2を誇るナチュラルチーズ王国でもあり、大豆・小豆の生産量は十勝の音更町が日本一、とうもろこしは十勝の芽室町が生産量日本一など、日本一が多い点も強調。また、糖度が高く甘くおいしい雪室熟成ジャガイモなど、まだまだ知られていない豊かな食材があることもPRした。
事業プラン「トカチbuffet」では、これら魅力あふれる十勝の食材を次のように生かしたい考えだ。
生産者の思いを伝えていきたい。縁の下の力持ちとなり、十勝の食材を外食産業へ販売する仕組みを確立したい。ニーズの異なる店舗や買い手に、最適な食材と物流も提案したい。さらにFacebookなどを活用し、集客までサポートしたい。以上の取り組みを通じて、十勝の食産業の振興ととともに、十勝の情報発信を積極的に行いたいと語った。
その具体的なアクションとして計画しているのが3種類のフェア。季節ごとの食材の提案「十勝の旬」、食材や生産者にスポットを当てる「十勝のセレクト」、品種や産地や生産者別に食べ比べの企画や新メニューを提案する「十勝のプランニング」だ。フェアはいつでもどこでも開催可能で、すにで現在「トカチbuffet/十勝の夏」と題し、2014年の夏に都内数十店舗のレストランで合同開催の準備に入っている。
事業始動3年後の予想は次の通り。外食産業の店舗で年間100回フェアを開催。雪室熟成越冬ジャガイモを中心とした通年取引では60店舗・総売上げ5000万円見込み。雇用も2~3名増やせるという。
さらに、集客サポートして生産者訪問ツアーも進めたい考え。以前に100名のシェフを生産者に会わせた経験があり、手応えを感じたことが背景にあるという。実際に同じ食材を使っても、生産者と直に会ったシェフがいる店舗といない店舗とでは、売り上げに差が出たとのこと。また、この生産者訪問ツアーに加えて、「トカチbuffet」のスタッフによる集客面でのサポートもしていく。たとえば、現地写真や情報の収集と提供、メニューづくり支援、Facebookなどに消費者からの投稿を寄せてもらい、十勝の産品をプレゼントするなどのしくみも計画している。
この事業を通して実現したいことは、生産者の思いを伝え、さらに料理を通じてシェフの思いを伝え、そしてその料理を食べる人・消費者が思いを受け取り、自らも伝えることで、食を通して「三方よし」の信頼関係を築いていくこと。食の安心安全を本当の意味で支えるのは、食べる人・消費者だと思うと語った。シェフは買い手ではなく、伝え手であり、そのシェフを支えるのもまた、食べる人・消費者であると。つまり生産者を支えているのは、みなさん食べる人なのだと訴えた。TPPにより海外から安い食材が輸入されたとしても、国産を守り支えるのはみなさんであり、この「トカチbuffe」の「トカチ」の部分を、それぞれの故郷に置き換えていければ、日本中が元気な「ふるさと ビュッフェ」になる。そう信じて取り組みたい、この事業化のために知恵やアドバイスをいただければ幸いですと語り、プレゼンを締めくくった。
●エントリー2
小倉健二さん(埼玉県)有限会社ケンテックシステムズ 代表取締役
●テーマ
「ノンスキャフォールディング講習」
小倉氏は全身に装備器具を装着して登場し、自社紹介からプレゼンをスタート。埼玉県川越市に本社を構えるケンテックシステムズは、今期25期を迎える空調・電気・給排水の設備工事会社で、施行エリアは関東一円。ノンスキャフォールディングとは、ノン=無 スキャフォールディング=足場 という意味で、足場を使わず作業ができる無足場工法のことであり、この名称は現在、商標登録手続きをしているところだ。小倉氏は、自身が確立したノンスキャフォールディング工法とその技術を教える教習所を設立することが事業プランだと述べ、その動機となる理由を3つ挙げた。
ロープだけの工法では危険があることを伝えたい。
ノンスキャフォールディングの安全性を伝えたい。
設備工事関係者へ広めたい。
続いて、それぞれの詳細を語った。
ひとつめ、ロープだけの工法の危険性について。その工法とは、ダムや橋、ビル外壁などの調査現場で活用されているシングルロープテクニック(ロープアクセス技術)のこと。これは、垂直あるいは急傾斜の場所を1本のロープで降下・登攀する技術で、小倉氏自身もかつて20万円の講習費を払い習得したという。だが小倉氏の作業現場では、溶接器や鋭利な工具も使用するため、溶接の炎が触れただけでロープが切断される危険がつきまとう。自分にもしものことがあったら遺された妻は……と、写真を映し出し会場を沸かせた。
ふたつめ。では小倉氏が実際に作業現場で実践しているノンスキャフォールディング工法は、どのように安全なのか。小倉氏は全身の装備器具を指し示しながら説明した。たとえばロープの他に電動ウインチにワイヤーロープを接続して使用するため、溶接の炎や刃物によるロープ切断の心配はない。ほかにも、ライフライン(セカンドロープ)、ロープガード、鉄骨製支点、落下防止カバー・ワイヤーガード、カミングデバイス、バキュームリフターなど、さまざまな器具で安全を確保している。これらは小倉氏が独自に開発し製作したもので、その安全性は身をもって実証してきたと述べた。
最後に、同業他社である設備工事関係者へ広めたいという理由について。一般的な7階建ての建物の工事現場写真を映し出し、次のように説明した。建造物の保守点検の際、必ず架設足場を組むのが業界の常だが、これらの架設足場は当然のことながら作業完了後に撤去する。この足場を組み・撤去する費用と工期を、ノンスキャフォールディング工法なら、大幅に削減・短縮が可能だという。
小倉氏は物流倉庫を例に挙げ、足場有りと、足場無し場合の費用比較を示した。通常工法では足場費用250万円、ノンスキャフォールディング工法は0円。本来の目的である設備工事費は、通常工法で10万円、ノンスキャフォールディング工法で26万円。合計で、足場ありの通常工法だと260万円、ノンスキャフォールディング工法なら26万円となる。もう一例、9階建ビルのコーキング工事の事例も示した。足場費用は1000万円、ノンスキャフォールディング工法は0円。コーキング工事費は通常工法で500万円、ノンスキャフォールディング工法で660万円。合計で、通常工法だと1500万円、ノンスキャフォールディング工法なら660万円だ。
このように足場ありだとコストがかかり、足場の設置撤去も必要で、それだけ工期日数も人件費も増えるため、保守点検をあきらめたり、雨漏りを放置したりする不動産関係者や施主も少なくない。また架設足場は景観を損ねると、住民や近隣からの苦情も招きやすい。これらは小倉氏と同業者である空調・電気・給排水の設備工事業界にとってもネックだ。小倉氏は、ノンスキャフォールディング工法が普及すれば、同業者の仕事の幅も広がり、同業者と連携して規模に関係なく一緒に仕事ができると訴えた。
具体的な講習プランは次の通り。受講受付は自社のホームページにて。講習日程は3日間、連日8:00~17:00。受講費用は20万円(事前振込み)。講習定員は最大2名(講師も2名)。機材に関しては新たに調達するものはなし。講習はマンツーマン方式で、最終日は9階建ビルの外壁を使用した実技講習も行う。
事業化後の目標として、当初は月に2名程度の受講者を確保し、ロープアクセス技術の上位に位置するレスキュー講習まで展開する。またリピーター確保のため思い出し講習も実地。さらに卒業生の中から本講習のインストラクターや自社人材も発掘。また他の設備工事会社と本業での実務提携、自社開発した装備の販売も目指したいと抱負を述べ、プレゼンテーションを締めくくった。
●エントリー3
柳沼美千子さん(福島県)パン工房MANA 代表
●テーマ
「山葡萄で作るパンの酵母と米粉のパン開発、
山葡萄の蔓の栽培やあけび蔓で作るかごの技術の伝承」
柳沼氏は、テーマである自家製のパンをあけび蔓で編んだかごに乗せて登壇し、活動紹介からプレゼンをスタートした。
現在は自宅に併設した工房を拠点に、自家製の自然酵母の開発・パンの予約販売、委託販売、イベントでの販売ほか料理教室での指導もしている料理研究家。山葡萄でつくるパンの酵母開発と、地元でたくさんとれる米粉のパンの開発、そして東北の組み編み技術を保全したいことが、応募した動機だと述べた。
まず、自然酵母のパンはどのような行程でつくられるのかを説明した。福島県は果実王国として有名で、柳沼氏の地元も果樹農家が多い。その美味しい果実を1週間ほど寝かせて酵母にし、さらにジュースにしてから数日間発酵させ、パンをつくるととても美味しいパンができるという。このプログラム後に行われる「NICeな交流ブース」でぜひ試食してほしいとアピール。自家製自然酵母有機の葡萄パン、いちぢくのコンフィチュール・ライ麦ナッツパン、蜂蜜酵母の蜂蜜たっぷりパンなど、各地の催事で好評を博しているパンを昨夜遅くまで焼き上げ持参してきた。自身が酵母の開発をすることで、果物をつくる地元福島県の果樹生産者の助けになりたいのだと思いを語った。
次に、東北の組み編み技術について。猪苗代町出身の柳沼氏は実家が民芸店だったこともあり、40年近く前から会津伝統工芸である山葡萄つるやあけびつる工芸に携わってきた。1975年には、第17回日本民芸公募展で最優秀賞を受賞。2001年には福島県未来博でネイチャーツアーの森の案内人・籐工芸の指導も務めている。原点回帰でもう一度、蔓(つる)工芸に注力していきたいという。
山葡萄の酵母でつくったパンを、山葡萄のカゴやあけびつるで編んだかごに入れて提供すれば、丸ごと活用できる。だが、そのためにはまず原料の確保が不可欠と述べ、柳沼さんはすでに福島県耶麻郡猪苗代町に500坪の土地を確保し、2014年3月、山葡萄100本を植樹する計画だと決意を語った。
それほど原料が少ないのか? 福島県の山葡萄蔓製品やあけび蔓製品は、経済産業省認定の伝統工芸品でもあり、近年、これら工芸品に多くの人が関心を寄せ、高額な商品の購買が急速に伸びているという。ブランド商品に飽き、オリジナルの商品を持ちたい、流行に流されないものがほしいという消費者ニーズの高まりではないかと柳沼さんは分析している。だが、その原料が手に入らない状況なのだという。
その理由は、山葡萄の蔓そのものが不足しており、需要が多いのに供給が少ないことがひとつ。会津の三島町では2000年に植えた山葡萄の栽培に成功したものの、その蔓は三島町のみで消費され、三島の地域以外は門外不出なのだという。さらに県内に少数いる認定を持つ職人たちの高齢化も深刻だ。また、日本のメーカーが中国で山葡萄を栽培し、中国で製作した工芸品が安値で多数輸入されていることにも危機感を感じている。このままでは工芸の技術の伝承が危ういと、柳沼氏は強い危機感を抱き、土地を確保してまで植樹し、事業化しようと思い立ったのだ。
今後は、山葡萄を植え、それらを原料に山葡萄の実を酵母に利用し、山葡萄の酵母でパンをつくること。そのパンを山葡萄のカゴやあけび蔓で編んだかごに入れて提供すること。また山葡萄でつくったペンダントなど小物、パンに合ったオリーブやジャムも提供していきたい考えだ。
今日もたくさん自慢の自然酵母でパンを焼いて来たので、ぜひこの後に試食してくださいと笑顔でプレゼンテーションを締めくくった。
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以上、京都・光泉洞 協賛 第1回 NICeなビジネスプランコンテスト グランプリ本選に出場した3名のプレゼンテーションが終了した。
「グランプリを決定するのは会場にいるみなさんです!!」と司会の梶田氏のかけ声で、投票用紙が配られ、次々と投票箱に票が投じられていった。
●グランプリ結果発表はこちら●
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全編レポートhttp://www.nice.or.jp/archives/20114
プログラム第6部でいよいよ発表!
■次回「つながり力で、日本経済と地域社会の未来を拓く!NICe全国交流セミナー」は、2014年2月11日に福島県須賀川市で(詳細はこちら)、
3月15日に和歌山市で(詳細はこちら)、5月24日に名古屋市で開催予定。
そのほかの活動予定一覧はこちらhttp://www.nice.or.jp/real_schedule
撮影/前田政昭
取材・文・撮影/岡部 恵