第4回「営業白熱カフェ!」レポート
第4回「営業白熱カフェ!」レポート
対立状態にある相手・顧客に
どう対処する?
原因からわかる改善策とは?
2011年2月9日(水)、第4回「営業白熱カフェ!」が東京渋谷で開催された。この勉強会は、営業改革コンサルタントの
鬼頭秀彰さん(ZACCESS Consulting株式会社 代表取締役)が主宰し、営業をテーマにした講義と、少人数の参加者のフリートークで営業力を学び合い、人間力を磨くことをコンセプトに毎月第2水曜日に開催する企画。4回目となる今回は「他人の受け入れがたい言動への対処法」をテーマに、NICe内外から4名が参加した。
「営業白熱カフェ!」
NICeコミュニティ
■勉強会の内容
講義テーマ「他人の受け入れがたい言動への対処法」
講義のはじめに、これまでのおさらいからスタート。第1回の「営業白熱カフェ!」のテーマは、「不況下でもうまくいくための、営業の7つのポイント」だった。営業とは、ものを売る、サービスすることではあるが、その前提にあるべきなのが、「自社が為すべき道」。つまり、「お客さんに何をしたのか、自分は(自社は)何をしたいのか。この『意志』を明確にすることがま大事」という意味だ。そのうえで、自分で切り拓き続けることが営業活動であり、そのために意識しておきたいポイントが7つあると説いた。
「自立」 :紹介やしがらみに頼らず自立する
「主導権」 :相手を圧倒する、立場を逆転する
「スピード」:市場の反応をまず見る、そして変化を続ける
「見切り」 :やめる勇気、そして次のアクションへ
「Stay Foolish」:既成概念を捨てる、バカになる
「性格力」 :心理学交流分析
「他力本願」 :全力で継続していれば誰かが見ている。だから、常に手を抜かない
そして、第2回のテーマは、「ゴールから考える思考法」と題した主導権の強化について。第3回のテーマは、「最初からキーパーソンに会うために」、これは言い換えれば、最短・最速で受注というゴールにたどり着くために!であり、そのためにFoolishを強化しようという内容だった。つまり毎回、上記7つのポイントを掘り下げたテーマになっており、もちろん全シリーズに参加せずとも、単発の参加者には1テーマの掘り下げと同時に7ポイントの重要性が意識付けられるというわけだ。
7つのポイントを簡潔に説明した後、本日のテーマ、「他人の受け入れがたい言動への対処法」を上記の7ポイントで考えると、主導権と性格力の強化に当てはまるとし、いかに自分と向き合うか、自分の感情に向き合うかが大切だと強調した。さらに営業場面で言い換えると、「対立状態にある顧客への対処法」なのだと述べ、本題の講義へと話題を進めた。
●自己主張の適切な方法とは?
誰かと対立関係に陥った場合、どう解決を図ろうとするか。いろいろな状況を想定しながら参加者と状況イメージを共有した。多くの場合、我慢して受身の態度をとるか、あるいは、自分は正しいという立場に立ち、相手に対して攻撃的な態度をとるか、いずれかのスタイルで対応してしまうものだ。
しかし、我慢する人は、結局のところイコール「相手を尊重しているが自分は尊重していない」状態であり、攻撃的な人は、「自分を尊重しているが相手は尊重していない」状態であると言える。
人間関係を円滑にするために求められるのは、そのいずれでもなく、「自分も、相手も尊重する」スタイルが望ましい。では、実際にどうすればいいのか?
●受容ラインも受容領域も、十人十色
ここで理論的に理解を深めてもらうため、トーマス・ゴードンの「行動の四角形(受容線)」の概念を用いて、コミュニケーションの問題構造について説明。これを理解することにより、改善がよりスムーズになるからだ。その概念を要約するれば、人は、相手や状況により性格が変わるものであり、同じ行動でも相手が誰かによって受容ライン(気にならない、許せるなど)が異なるというもの。
例えば、嫌いな上司のこの言動が許せないとする。だが、同じことを恋人がしても気にならない。つまり、行為そのものが問題なのではなく、受け止める側次第で問題が生じるのだ。言い換えれば、「誰が問題だと受け止めているか」がポイントになってくる。さらに、自分では問題だと思っていないが、相手が問題だと受け止めている領域があり、その場合は手法を変えないと、コミュニケーションがさらにうまく取れなくなることも多々あると説明した。
●コミュニケーションの12の障害とは?
では次に、コミュニケーションがうまく取れなくなった場合、いつもどのように対処しているか、参加者にも考えてもらった。沈黙以外の対応法の9割が、下記の12項目にほとんど当てはまるのではないだろうか。
1.命令・指示
2.注意・脅迫
3.説教
4.忠告・解決策などの提案
5.講義・理論の展開
6.批判・非難
7.賞賛・同意
8.悪口を言う・バカにする
9.分析・診断
10.励まし・同情
11.質問・尋問
12.ごまかす・そらす・中止する
それぞれ12の具体例を説明し、“まずいスタイル”を、いかに日常、当たり前のように行ってしまっているか、またその弊害について説明した。
●主語を「私」にする I MESSAGEの重要性
ここまで具体例を挙げて問題点を実感してもらったうえで、改善のためにぜひ学んで欲しい手法、「I MESSAGE (私メッセージ)」について解説した。これは、「正しい自己主張のやり方」として、心理学では確立されているものであり、この「I」の主語を意識することがいかに大切かを具体例で解説した。
「I MESSAGE」の具体的な方法は、“まずいスタイル”に慣れ親しんできた人間にとっては、相当に意外なものだったはずだ。対立した際に、その相手にどうしろ、こうしろと言うのではなく、その相手の言動により、私がどのような影響を受け、そして、どのような感情を抱いているか、「その時の自分の感情」ただそれだけを伝えるというもの。
果たしてそんなこと(=こちらの感情を伝えるだけ)で、本当に相手の態度を変容させることができるのかと不思議に思うかもしれないが、対立関係にある際に6割程度まではこれで解決が図れると言われている。
講義の中で、“まずいスタイル”の例えとして家庭内で起こりがちなエピソードを紹介した。母親は子どもを叱って欲しいと旦那さんに言う。父親はしぶしぶ子どもを叱る。その時の言い方ひとつで、双方から父親の威厳を失うことも多々あるのだという。また、“いいスタイル”の「I MESSAGE」の手法を使って、学級崩壊したクラスが立ち直った成功事例も紹介した。
これまでの「営業白熱カフェ!」では、講義の後にフリーディスカッションを行うのだが、今回は変則的に、講義の合間に演習を行ってみた。お題は、「プレゼンあるいはセミナーで自分が登壇して行っている時、見回すと話を聞いていないリスナーがちらほら。さぁ、どうやって集中させるか?」だ。営業白熱カフェらしく、参加者同士で話し合いながら、様々なシーンで「I MESSAGE」がいかに効果的か、次第に理解を深めていった。
また、参加者の中から、「“ありがとう”と言われた時に、とても違和感を感じることがある」との発言も。確かに私たちは、“ありがとう”さえ言っておけば(言わないよりはマシだが)相手に感謝の気持ちを伝えたつもりになっており、便利に、そしてかなり安易に、“ありがとう”を使い過ぎているかもしれない。【自分の気持ちを表すのに本当に相応しい言葉】を適切に使いこなせているのだろうか……。そんなことも改めて全員が考えさせられる場となった。
こちらが正直に、本当の感情に基づくメッセージを送れば、相手もこちらの感情に対し、建設的に対処してくれる可能性が高まる。こちらから正直なメッセージが送られてくれば、相手もこちらの感情に対応しやすくなるだけでなく、理解しやすい人間、親しい関係を持ちたくなるような人間として、受け入れてくれるようになる。最後に、I MESSAGEの重要な考え方をまとめて、第4回の会を締めくくった。
●スイーツ&BGM
▲今回のスイーツは、新百合ヶ丘にあるリリエンベルグのザッハトルテ。
BGMは会場の雰囲気に合わせてJAZZ BOSSAの隠れた名盤、KENNY BARRON『CANTA BRASIL』をセレクト。
(写真はリリエンベルグ
HPより転載)
▲写真右から、小林京子氏、菱田邦宏氏、宮本俊光氏、中野啓子氏
▲参加者に配布された12ページのレジュメ
●参加者の感想
「感情的にならない」「感情表現は避ける」ということが私にとってのビジネスでの心がけでした。自分の感情を害されても平然としていられる、感情を害したことを気取られないことがビジネスシーンにはスマートなことのように思っていました。違うんですね~。今回のテーマで学んだことは真逆で、自分の感情と向き合うことの大切さ、自分の中に沸き立つ感情を自覚することの大切さを理解できました」
●参加者の感想
「テクニック論の域を超えて、他人との関わり方、自分との向き合い方までを改めて考えさせられる内容でした。営業とは、最終的には人と人との関係性において成り立つ活動である以上、そこまで踏み込んでいくことが求められるのだと感じました」
●主宰・講師の鬼頭秀彰より次回の予告
「第4回目の今回は、営業の7つのポイントの中の主導権と性格力の強化について問題点を把握し、「I MESSAGE」の重要性から対立状態にある顧客への対処法までを学んでいただく会でした。全シリーズに参加せずとも、単発で参加しても十分に醍醐味のある1テーマの掘り下げをしますし、同時に7ポイントの重要性の再確認を毎回目指しています。ただ、次回の3月9日と次々回の4月13日は2回にわたるシリーズで、「性格力」アップのための科学的な心理学交流分析についてです。商談の場面でいかに説得力を高められるかをテーマに、自己性格分析と自己開示、他者相互理解のワークも行います。ふるってご参加ください」
取材・文・撮影/
鬼頭秀彰氏