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NICe協賛 復興支援イベントレポート


東日本大震災復興支援企画

〜新しい街、コミュニティーの創造〜



   

  

●実施日/2012年10月20日

●内容
2012年10月20日(土)、NICe正会員の古屋文隆氏が代表を務める「志成会」主催、一般社団法人起業支援ネットワークNICe協賛による東日本大震災復興支援イベント「〜新しい街、コミュニティーの創造〜」が開催された。プログラムは2部構成で、第1部では復興支援活動に尽力されている3名の講演を。第2部ではその3名のパネルディスカッションと、会場参加者との質疑応答が行われ、そのすべての様子がUSTREAM配信された(現在も視聴は可能 URLはこちら)。

開会のあいさつに、主催団体・志成会代表の古屋文隆氏より、志成会の説明と当イベントの開催目的が述べられた。志成会とは、人のため国のために企業経営する同志の会で、世界を視野に、激動していく世の中を照らす“志を成す”ことを理念に、2005年から活動している経営者・後継者の会だ。古屋氏は、東日本大震災から一年半が経った今、政治・経済は混迷を極め、未だに解決されない課題が山積しているが、私達、中小企業経営者ができることは何か。継続的な支援活動に、経営感覚が試されているのではないか。組織に頼らず人と人とのつながりの中で行えることは何か。それらを考え、実際に行動し、新しい価値を提供している人たちが共に語れる場を設けることで、意識をより喚起し、共に行動していける仲間を増やしていくためにこのイベントを企画したと語り、3名のパネラーと、司会進行役の品川一治氏(東日本支援ネットワークはぐみ代表)を紹介した。

3名の講演では、それぞれプロフィールと活動のきっかけ、そしてこれまでの活動報告、今後の予定などが語られた。(登壇されたみなさんの詳細プロフィールはこちらを参照)

  
▲鎮魂のために被災地各地で一斉に花火を打ち上げるプロジェクト「LIGHT UP NIPPON」代表理事・高田佳岳氏。震災翌月に東京湾の花火大会中止が決定し、「それじゃ、その花火は余っているだろう。それを鎮魂のために被災地で打ち上げたい」と花火をあげるプロジェクト・LIGHT UP NIPPONを起ち上げ、2011年に10カ所で、今年も13カ所で、そしてこれからも、花火を打ちあげ続けたいと語った。講演後に参加者から、「人間としてどのような変化があったか?」との質問に対し、「ちょっと人に優しくなった、仲間が好きになった」と語った
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▲続いて登壇したのは、合同会社OHガッツOH!GUTS!(オーガッツ)発起人、一般社団法人SweetTreat311 代表理事、一般社団法人東の食の会理事、兼漁師見習い中・立花貴氏。仙台に暮らす母親と妹の安否を確認しに行き、そのまま炊き出しなどの支援活動をしているうち、縁もゆかりもなかった漁村・雄勝町に住み着き、住民票まで移して漁師見習いをしながら地元漁師たちと新しい漁業を目指す会社「OH!GUTS!(オーガッツ)」を牽引している。「湧いてくるままに動いてみようと思った」と述べ、これまでの活動経緯と展望を語った
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▲3人目は、主催代表の古屋氏がどうしても招きたかったという大阪の永山仁氏。神戸で被災し、その恩返しも兼ねて矢も楯もたまらず支援物資運搬や炊き出しなどを始めるうち、東北の人に惚れ、東北応援隊を結成。さらに、「支援する側・される側」ではない関係を築きたいと、東北と末長いお付き合いがしたいとの思いで、大阪市東淀川区に東北食材を提供する「居酒屋・楽笑(らくしょう)」をオープンさせたいきさつを語った
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●パネルディスカッション

第2部のパネルディスカッションは、司会進行役の品川氏から3人へ質問が投げかけられた。
品川氏:継続できた動機、モチベーションについて

高田氏:やっている感はあまりない、これが普通。感じたところで動いているのかと思う。

立花氏:人間のエンジンは2つあって、湧いてくるエンジンというのがあるのだと思う。それに触ったら動き出している、そういうエンジンは意識しないでも動き続けるのではないかと思う。

永山氏:惚れてしまった、東北の人たちに。なんて奥ゆかしいのだろう、我慢強いのだろうと。ご縁ができたそういう人たちにまた会いに行きたい。自分はご用聞きで、必要なものを持って会いに行くだけ、と考えている。

品川氏:中にいるから見えること、外だから見えること。何か意識していることは?

高田氏:自分は中に入ると感情移入し過ぎてしまうと思った。海に生きてきて海しかないのと同じ。あえて離れて、入り込まないようにすることによって、いいところを見つけ、次のステップにつなげようと。広く浅く、横のつながりを広げていけるのではと今は思っている。

立花氏:どこが良い悪い、何が良い悪いではなく、小さな事例を積み上げていくことが一番早いのではないかと思う。ほかの浜の漁師が『どうやっているのか?』と来るが、一緒にやってみて、というと、『こうか!』と体得する。小さな事例がうねりになっていくということが、これから大事かと。共感していただけるような事例を積み上げていくことが大事ではないかと思っている。

永山氏:自分は南三陸を支援するなんて大それたことではなく、個人的に少しでも力になればとやってきたこと。その一心。このご縁を広げたいなと思った時に、『私も連れて行って』という声もある。今日参加している長柴美恵さんは収納の専門家(COMFORTABLE代表)で、仮設住宅のお手伝いをしたいけれど、どこでできるか?と、じゃ一緒に行こうと。一度行ったら次はもう自らチーム組んで行くと。こういう縁がまた次につながっていけばいいと思う。

品川氏:僕は今年、現地に行かないということを決めましたが、行かない・行けないという考え方を変えて、みなさんのような人を応援すればいいんだと。それはこういう会にもつながっている。いろんな形でできることがあると。今後大事だと思うこと、今後の目標は?

   

永山氏:印象的だったのが、仮設住宅に物資を配るお手伝いをしていた時、年配の男性が、『いつまでこんな施しを受けなくちゃいけないのだろう』とため息まじりに……。助けるというと、助けられるほうもつらい。もっと対等に、お互いいい思いをしないと。それにはビジネスでつながっていくことかと思う。

立花氏:人が必要。元に戻るだけであれば見た風景の中で集めるが、新しいものをつくるとなれば、見たことがないものをつくるわけで、それには人の力が必要だと思う。人がいれば資金も集まる。『御社で一番優秀な人材をお願いします』とお願いしたら、本当に僕の右腕になる人が来てくれた。

高田氏:よそ者の活用。元通りにするのではない気がしていて、それ以上の先を見ながらやらないといけないと思っている。長年海を見てきて、漁業はこれから新しいカタチをつくれる可能性もあるし、東北の基幹産業でもある。海の使い方、生き方、海に飲まれた地域から“オール三陸”で発信ができたらいいなと思う。

品川氏:よそ者、ばか者、若者、今の話はまさにそうだと思う。震災は、もともと地方が持っていた様々な問題、ほかの地方都市にも共通する日本の今後を考えるに重要な問題に共通する。僕は横のつながりが広がったらと思うが、それぞれの活動で、ほかと連合するという考えは?

高田氏:去年様々なイベントが行われたが、今年は減ったと感じている。地元の伝統的なものは復活しても、よそからのイベントは減った。いろんな問題があると思うが、僕らは『来るものは拒まず何でも連帯します』と。こだわらず、つながればいいと思う。難しいなと思ったのは、連合すると、複数の企業や団体でどちらの名前が上か下か。団体をつくると、誰がリーダーかとか。大きな目標が見えているのだから、いろんなジャンルの人が一緒に迎えればいいのに。組織体をつくるといろいろ大変。情報交換をもっとして、できること、使えることは使ってやればいいなと思う。

立花氏:同意見。これまで小さな事例つくってきたが、いろんな人と関わって、つながっていく。継続的していくと、いつか、同じような志でやっている人は会うべきタイミングで会うのだと確信している。目の前のことを丁寧に、関わった人が心動くことをやっていくこと。それが結果的につながっていく。日本はとかくカタチから入ることがあるが、震災を機に、動きが変わっているんじゃないかなと思う。


●質疑応答

古屋氏と品川氏の指名により、会場参加者から、自身のこれまでの活動についての報告と、パネラーへの質問がなされた。
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・被災した酒蔵を支援する活動「呑みマス!ニッポン!」を仲間と実施し、今秋には現地ツアーも行ったという弁理士の茅原裕二氏は、今後、日本酒と魚介類のコラボの可能性について質問
・東北のお酒を飲んでいただくとお客さんから1杯100円寄付という活動を続けている「銀しゃりとひもの炭火焼 こころむすび」店主・石田洋司氏からは、地域行政との連携について質問
・今年8月に新宿東口で行われたフェスティバル「SHINJUKU SMILE」の次年度実行委員長を務める森口つかさ氏からは、復興支援を継続するに当たって組織の枠を超えた活動について質問

  

・水道水に不安を抱いている福島県内の幼稚園や保育園へ、500ml入りのオリジナルミネラルウォーターを無料配給し、協賛シールの貼付けを県内の障害者の作業所へ委託して雇用創出支援もしている「ハッピープロジェクト」代表の竹内香織氏は、協賛・協力を募るにあたってのアドバイスを求めた
・炊き出しをはじめ東北ライブハウス大作戦など、数々のプロジェクトで活動している「YAKITORI燃」オーナーの阿部敏昭氏からは、支援活動のプラットホームについての情報が寄せられた

  
・社会貢献・寄付の国際プラットフォーム「i-kifu」について、代表理事のNhat Vuong (ナツ・ウォング)氏から説明がなされた。教育、自然災害など7つのセクションがあり、参加者は様々なプロジェクトを選んで応援(寄付やSNSでの投稿)ができ、その応援度によってポイントも獲得できる仕組み。各活動レポートが提出されており、透明性(レート)も示されている。また、英訳版、日本語版もあり、海外からの寄付も活発とのこと
・震災直後、自分の持ち場を離れずに東京で支援活動をするとコンセプトを立て、取り組んできたという関氏。今後は東北での新事業を計画しており、現地での事業をより発展させるためのアドバイスを求めた


▲人とのつながりは会った瞬間の感覚だと思う。これまでよりも可変領域を広げて、何かを吸収しようと意識することではないかと高田氏。カタチにこだわることなく、小さな事例の積み重ねがいつか日本を変えると思う。つながりたいと思えばつながる。心が動かないと継続につながらないし自分も楽しくないので、小さな事例を積み上げていくことだと思うと立花氏。あくまでも自分は脇役で、来た球を、打てそうな球を打つだけ。何々が欲しいというニーズありきで、これは必要では?と考えること自体ひとりよがり。現地からの声をキャッチして、できることをやっていきたいと永山氏


▲最後に古屋氏から、パネラーと参加者、UST視聴者への感謝の言葉が述べられ、志成会の今後の活動予定について案内がなされた。志成会では、講演をなかなか引き受けないような著名人を招いて講演会を定期開催しているほか、2014年6月28日にはサラエボで、戦争に終止符を打つキックオフイベントを指揮者・柳沢寿男氏の協力を得て企画しているという。「今日から新しいことが始まる予感がしています。こうした場をつくることも私の役割かと思っています」と言葉を結んでイベントを終了した。



●感想・課題・今後の予定
「3人のパネラーをはじめ、参加されたみなさんの活動のいきさつや思いは様々で、お話の中に何度か出てきた『継続支援のためには自身が楽しむこと』という言葉の裏に、どれほど多くの涙と怒りと笑顔に出逢っていらしたのだろうと思わずにはいられませんでした。と同時に、心を動かす人との出会い、人と人とのつながりが、次への原動力になるのだと確信もしました。『息の長い支援活動のためには、いかに継続させるか。そこに経営感覚が試される』との古屋さんの言葉どおり、多くの学びがあった濃い3時間でした。このイベントの映像は現在もこちら『東日本支援ネットワークはぐみ』にて視聴が可能です。どうぞ覧ください。urlはこちらですhttp://www.ustream.tv/channel/toboggan-show2

取材・文、撮影/岡部 恵

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