第1回 NICe福島・頭脳交換会レポート
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2012年11月21日(水)、第1回NICe福島・頭脳交換会が福島市のパセナカ・ミッセで開催された。2カ月前の9月11日に第13回NICe関東・福島出張版(
レポートhttp://www.nice.or.jp/archives/12409)が実施され、翌10月にNICe福島は正式に誕生したばかり。福島県内のNICeユーザー有志が中心になり、勉強会などの活動をしていくが、(社)NICeの全国活動推進委員会と創業支援委員会も協力して、今後定期的に頭脳交換会を県内で開催する計画だ。この頭脳交換会とは、ひとりのプレゼンテーターが事業プランや課題を発表し、参加者全員が「自分だったら」という当事者意識で建設的なアイデアを出し合い、他者の意見を聞いてまた新たなアイデアを重ねていき、頭脳と頭脳のバトルで解決策を探っていくNICe流の勉強会のこと。記念すべき第1回NICe福島・頭脳交換会には、福島県内を中心に、宮城県、東京都、神奈川県、英国から計16名がかけつけた。
■オープニング
NICe福島の代表を務める
竹内竜哉氏があいさつし、さっそくプレゼンテーターの渡邉正美氏を紹介して頭脳交換会がスタート。
■頭脳交換会
●プレゼンテーション
テーマ:「石材業として新規事業の開拓について」
プレゼンテーター:「石正(いしまさ)」代表・渡邉正美氏
伊達市霊山町で「石正(いしまさ)」を経営する渡邉氏は、まず事業形態と事業説明からプレゼンを始めた。旧中村街道沿いの自宅に事務所を構えて独立したのは2008年1月。墓石施工販売、建築石工事(玄関・キッチン・床・壁などへの石材施工、石小物制作など)、土木石工事、石材卸販売など、石に関する業務全般を、ひとりの個人事業主で頑張っている。これまでの施工例の写真を参加者に回覧し、説明を続けた。墓石施工は、渡邊氏がコンピュータでグラフィック化し、加工は中国へ発注している。主な取引先は、地元の建築会社、設計会社、個人宅、葬祭業者などだ。
続いて、個人プロフィールを述べた。工業高校の電気科を卒業後、コンピュータの専門学校に進学した。石とは無関係だったが、なぜ石屋になったかというと、ちょうど地元の石材企業でコンピュータ職の社員募集をしており、そのままこの世界へ。それ以来18年間、石一筋だという。会社員時代は、企画開発、図面製作、貿易業務、営業職など幅広くキャリアを積み、また同業他社へ転職後には店長職も3年間経験した。その後、「自分でやってみたい」と独立したという。
次に業界の市場動向について。墓石そのものの需要は減少しており、同業者が飽和状態にあるとのこと。また、震災後の建築需要はあるものの、石材のニーズは伸び悩んでいるのが現状。墓石、建築、土木、卸しなど石材に関する全般を得意とする渡邉氏は、「一生、石にたずさわっていきたい」と語った。これまでも、既存の石材製品にとどまらない商品を生み出そうと、一般家庭で身近に置ける石の商品化を模索。そのひとつがペットメモリー(遺骨の一部や思い出の品を入れられるペット墓石)だ。たが思うようには売れなかったという。「石屋なので頭が固く、なかなか新商品のアイデアが思い浮かびません。石を使った新しい商品化のアイデアを、ぜひみなさんからお聞きしたい」と、プレゼンをしめくくった。
●事前リサーチ情報
この後行われる質疑応答を前に、ファシリテーターを務める
小林京子理事が渡邉氏へ事前インタビューしてまとめた“資源の洗い出し”がここで発表された。
「渡邉氏個人ができること、得意なこと」。「石正ができること、得意なこと」。そして逆に、「渡邉氏個人ができないこと、苦手なこと」。「石正ができない、しないこと」を参加者全員で共有した。
渡邉氏個人ができること、得意なこと
・コンピュータ知識と実績
・超プラス思考である
・スポーツ愛好家であり健康
・乗り物好き、メカ好き、リペア好き
・熱帯魚に詳しい
・人と人をつなぐコネクションづくり
・誠実な人柄、親身
・石に関する知識と情熱
渡邉氏個人ができないこと、苦手なこと
・単純な作業
・痛いこと、高いところ
・ネガティブな人と蛇
石正ができること、得意なこと
・石に関する知識と情熱
・コンピュータによるグラフィック化、図面作成
・対個人でも対業者でも営業は得意(人が好き)
石正ができないこと、しないこと
・ひとり事業主なので時間が限られる
そのため大規模工事は、資金と人員確保が難しい
・加工は行わず、中国へ発注している
●質疑応答
Q:従業員を雇う計画は?
渡邉氏:今のところありません。
Q:石正ができない大規模とはどのくらいの規模?
渡邉氏:数千万、1億円クラスになると中間業者の人員確保も必要になるので、その連絡時間がかかります。実の丈にあった規模が嬉しいです。
Q:石を使ったペットメモリーは身近に置いてほしい、とのことだが、具体的にどこに置くものを想定した?
渡邉氏:室内です。
Q:自分も愛犬を亡くして、自宅用は可愛らしいものが欲しいと思っている。ペット霊園では立派な墓石もあるので、何だろうと一瞬思った。
渡邉氏:「何なの?」と言われるようなものを考えました。売れるのはピンクの桜御影です。大切なペットですから高級な石が喜ばれるかとクリスタルブルーも揃えましたが、それは石屋の固定概念だったと思います。
Q:室内ということですが、洋間・和室どちらをイメージしていた?
渡邉氏:洋風で、リビングをイメージしました。年配の方は、ペットが亡くなってもお墓をつくることが少なく、若い層を想定しました。そのため、置き場所も固定せず、自由に置いてほしいということで考えました。
Q:パンフレットには製品の写真はあるが、どこに置くのかイメージ写真がないので質問しました。
Q:石は色を染められる?
渡邉氏:染めると石の質感が損なわれるので染めませんが、色のある石はあります。
(石材のパンフレットを回覧)
Q:どんな石でも扱えるのか?
渡邉氏:はい。
Q:加工や施工は?
渡邉氏:用途や施工場所に合わせて好みをお聞きして、様々な石の種類から適したものを説明します。
Q:四国の銘石で、庵治石(あじいし)というのがあり、用途の相談を受けたことがある。そこは照明器具に使用していて素敵だった。渡邉さん石でつくれると良いな、と思うものは?
渡邉氏:大理石は光を通すので、とても美しく、ステンドグラスのようなものをつくってみたいです。厚さ12、13mmでも光を通します。石の問題は重さです。
Q:石のメリットをもう少し教えてほしい。
渡邉氏:きれいなこと。自然な美しさは石でしか出せません、そして強度、丈夫さもあります。
Q:きれいに掃除もできますよね? いかんせん高価なので断念しましたが。
渡邉氏:はい、対薬品性に強い石、消臭、抗菌などの効果も様々あり、風合いもざらざらした砂岩やマット調などありますし、水をはじく、水を吸う、などいろいろあります。用途に合わせて相談・提案できます。
Q:お皿なども可能?
渡邉氏:はい、できます。
Q:そばに置く新商品とは、持ち運べるということ? もう少しイメージを。
渡邉氏:身近に置くもの、身につけるもの、1軒にひとつ、というように枠なく考えていただければと思います。これまでにないアイデアを言っていただき、何かネックがあればそれをどう解決していくかを考えたいです。
Q:長い目で見て、墓石などは今後排除して石オンリーにしていきたいのか。それとも、墓石などもやりながら融合していきたいのか?
渡邉氏:融合です。一生、石にたずさわっていきたいので。
●第1ラウンド
テーマ「石を使った新しい商品、どんなアイデアがある?」
3グループに分かれて10分間のディスカッション!
発表タイム
Aチーム
・ひとつ目は飲食店向けの商品開発。渡邊さん自身のメリットとして挙がっていた「人と人とのマッチング」をしていただき、個人ではなくチームを組んでやっていく。商品はたとえば、寿司屋のカウンターのネタを置くところに、光を通す利点を生かし、ライトアップしたらより美味しそうに見える。ほかにも、石でつくれる食器や小物などのアイテムを配して統一させる。
・石は冷たいイメージもあり、実際に冷却効果もあるので、ノートパソコンの冷却シートはどうか。
・公共事業にも生かせる。椅子のオブジェ。車道の中央分離帯にも配して光をはめ込む。交通標識にも活用できるのでは。
・ペット墓石から発展させて、消臭効果のあるペットの首輪を開発する。いきなり墓石ではなく、ユーザーの入り口をライトにする作戦。
・ペットだけでなく人の墓石にも応用できる。まず生前は花瓶などのインテリアを入り口にし、亡くなったらお墓に設置できるなどのセットにする。
Mチーム
・3案考えた。石の様々な特性を生かす商品として、まずはインテリアグッズ、キッチングッズ。飲食店や料理好きな人向けの商品は展開できる。遠赤外線効果のある石で調理器具としても可能。同じく、ヒーリング、花粉症対策にも効果がある石を使って、大人向けの高級玩具。石でつくったパズルやチェスなど、インテリアとしても映える。
・2案目は、一生石にたずさわりたいということから、お墓はなくならないのだから、新規よりも古くなったお墓のリフォームに注力してはどうかという案。家屋外壁のリフォームにあるような新築そっくり的な商品が墓石でもできるのではないか。
・3案目は商品化とは別の話題づくり案。加工の際に出る石材の破片を生かして、県内に石の公園をつくる。渡邊さんはその手配と公園設計をし、実作業は県内の美術専攻の学生につくってもらう。地域の活性化にもなり、話題にもなる。一生石に携わるということを広くアピールする。
Fチーム
・1案は、薄く加工した石材をカバー商品にする。たとえば家具、厨房設備、家電に貼れば、インテリア性が高まる。自分なら冷蔵庫の全面ではなく、ラインで貼ってほしい。石調は人気がある。
・2案はメモリアル系。子どもが生まれたらコンクリで手形足形をとるのがあるが、コンクリでは耐久性がない。が、石ならば耐久性がある。
・同じく耐久性と機能美から、家庭用のピザの石釜、フットライトもできる。
・町おこし系として、境港の鬼太郎や敦賀の宇宙戦艦ヤマトのオブジェを石でつくって町おこしをしている。福島県須賀川市は円谷英二監督の出身地。怪獣などの石製オブジェはどうか。またオブジェだけでなく、店の看板なども石でつくり統一したらどうか。
●グループ発表を聞いて、さらにフリートークでアイデア出し!
・車内のパネル、マニアック向け。
・石の知識を売る、ストーンカウンセラーで間口を広げる。
・石ソムリエ。いし免許。
・フィギアの台座が石だったらかっこいい。
・こだわりの層を狙ったほうがいいのでは。
・石でできたタバコ入れがあるが、それを灰皿にしている人が居た。
蓋をすると匂いがなくなる。消えるし、消臭もできる。
・石川町には、石の鉱物の研究者がよく来る。
↓
渡邊氏:マイナスイオンが出ている石があります。
殺菌作用、消臭作用もあります。実際、石屋は風邪を引かないと言われています。
私も健康です。科学的な根拠はわかりませんが。
↓ 1ラウンドで渡邊氏が気になったアイデアは?
渡邊氏:インテリア照明、キッチン用品、カバー、大人の玩具
●第2ラウンド
テーマ「チームアイデアから1商品に絞り、それを、誰に、どのように、提案するか?」
8分間のグループディスカッション!
発表タイム
Fチーム
「薄く加工した石材をカバー建材とする案について」
・個人向けではなくプロ用に。高級ホテルの内装に現在は木材仕様が多いが、これを石材にするとより高級感が出る。また木との組み合わせも合う。
・ホテルのほか、ハウスメーカーにも内装オプションとして提案できる。モデルハウスでも、壁だけでなく、オブジェやお皿、小道具も石で揃えたらいい。
・ターゲットは女性。女性は料理番組をよく見るので、ハウスメーカーがスポンサードするテレビなど、石材を使った厨房機具、キッチン用品が映るようにしてもらう。個人ではなかなか難しいが、人のネットワークを使えば辿り着けるのではないか。
Mチーム
「ヒーリング効果がある石を使った大人の高級玩具案について」
・新たなゲームや玩具ではなく、マージャン牌を石でつくる。
象牙での製作ができなくなった今、プラスチックにはない重厚感と感触は魅力。
健康効果も謳えて、竹との組み合わせも相性が良さそう。
・シニアの麻雀ブームが来ているので、身体にもいいヒーリング効果などを強調し、
高級志向のシニア向けに。また、子どもや初心者向けに、ドンジャラ牌も。
・玩具メーカー、麻雀用品メーカーに。
Aチーム
「飲食店向けの商品開発案について」
・キッチン周りの商品展開にプラスして、NICeのメリットを生かす。
たとえばシミュレーションアプリを開発し、ネット上でキッチンのここに石を貼るとい くらというような見積もりも算出する。これは既存にあるので、無料で会員登録してもらい、渡邊さんの石知識を生かしたメルマガを発行する。内容は、記載の先のウンチクが知りたくなるようなものにする。
NICeのメンバーとコラボしていろいろな営業展開ができるのではないか。
●「私はコレで協力できる・応援できる!」
参加者全員ひとり30秒のエール発表
・木材を扱っているので、石と相性はいい。一緒に何かできるかなと思う。
・お墓はもうあるので、お洒落な石の表札をお願いしたい。
・障害施設に勤めているので、子どもたちが使える玩具をぜひお願いしたい。自分は地域FMでパーソナリティをしているので商品化のPRでお手伝いできる。
・料理教室やっているので、石のキッチン用品を使ってYoutubeで発信したい。
・自宅のリフォームしていただきたい。
・中国とつながりが深いので、翡翠とか高価なイメージあるものを石でつくるなどどうか。
・日本のお酒をドイツに紹介しているので、日本の食べ物を美味しく見せるお皿とかあればぜひ。
・建設業なので、知り合いを紹介できると思う。個人の職人さんは技術はあるがCADができない方もいるので、知り合いを紹介できると思う。
・麻雀の試作実験に協力できる。玩具展開があれば子どもも連れで行く。
・石川町は石が売りでもあるので、うちの地域でのゆるキャラとか、催し物などあれば。農家レストランをしているので看板やお皿できたら嬉しい。
・パンをつくっているので、教室用のプレートでモデル販売ができる。犬のボランティアもしているので、何かお手伝いできるかと思う。
・高級バージョンの食品加工を提案したい。たとえばかまぼこの板が石になっていて、そこに名前が掘ってあり、そのまま表札になるような。
・NICeのつながりがあるので、“てくてくま”と一緒に展開を広めよう。
●プレゼンテーター
渡邉正美氏の感想
「みなさん、どうもありがとうございました。後は自分がどう実行していくか、チャレンジしていきたいと思います。固定概念に縛られ、これはできないと頭から度外視していたことが、まだまだ石でできると発見がたくさんありました。みなさんのエール。力強く感じました。一生懸命やっていきます! よろしくお願いします!」
取材・文、撮影/岡部 恵