第5回 野菜や肉を煮込むことなく柔らかくする技術

凍結含浸法により野菜や肉、魚介類を短時間に形状を保持したまま、適度な軟らかさに調理・加工する技術。

【イラスト】 銀杏早苗

技術概要・ポイント

従来、咀嚼・嚥下が困難な高齢者や被介護者に対しては、誤嚥による肺炎や窒息の恐れから、ペースト状の食材を提供する傾向がある。しかし、その食材は見た目の美味しさを損ね、適正な食塊の嚥下の楽しみを阻害し、結果、食欲低下を招いている。
それに対し、適度な食品の凝集性やすべりやすさを付与するためトロミを調整する増粘剤やゲル化剤溶液を使用する方法があるが、それには見た目の問題に加え費用や時間がかかる課題があった。
本シーズは、食材を凍結・解凍後,真空下で分解酵素を食材内に導入する技術であり、食材本来の形状、色、味、香り、栄養成分を保持しながら、硬さを自由に調節できる形状保持軟化技術である。
これにより、高齢者や被介護者の食欲が増進され、咀嚼が容易で、誤嚥を抑制できる安全性の高い食品を、短時間で、無駄なく、簡単かつ安価に製造できることを可能とした。

技術の横展開、マーケットの状況、規模

2007年度厚生省の報告によると、食べ物を喉に詰まらせ死亡する事故は年間4,000件を超え、年々その件数は増加している。
その内、65歳以上が全体の76%を占めている。対象食品は、餅やおにぎり等の穀類が1位で50%を超え、次いで菓子類、魚介類、果物、肉類と続く。今後の高齢化社会を見据え、事故の予防措置は大きな社会問題となっている。
本シーズの特徴は、冷凍後解凍し圧力処理を加えることで分解酵素のみならず栄養成分等も簡易に食材内に染み込ませることができるので、ペットフードへの応用やこの調理方法自体を装置(製品)化するビジネス、未利用食材の利用や廃棄食品の分解装置(製品)などにも応用可能である。

ユーザー業界・活用アイデア

ユーザー業界 業界キーワード 活用アイデア タイトル / 活用アイデア ガイヨウ
食料品製造業
飼料・有機質肥料製造業
産業用機械・装置製造業
犬、猫、ペットフード、病気、
介護、安全、栄養
老犬・老猫・回復食用のペットフード
人間と同じ様に咀嚼能力が衰えてきた老犬・老猫等のペットや、何等かの病気の後、食欲の回復していないペット用に、安全で、柔らかい食事を提供する。一般向け、動物病院向け。
電気機械器具製造業
生活雑貨製品製造業
飲食店・宿泊業
野菜スープ、調理器、加圧、冷凍、解凍、安全、安心 なんでも簡単に柔らかく調理できる調理器
野菜などの食材と、分解酵素剤の粉と調味料をこの調理器に入れ、スイッチをONにすると、1時間後には美味しい半液体状の料理ができる調理器。調味料や増粘材(多糖類)との組み合わせで、硬い食材の味や軟らかさを調整可能に。
電気機械器具製造業
食料品製造業
産業用機械・装置製造業
食品廃棄物、未利用食材、
リサイクル、産廃処理、
食品加工
未利用食材・食品廃棄物の再利用装置
サイズ・形状・硬さ等の問題で一般流通経路に乗らない食材を、エキス状や一口大の食品素材に加工する。また、食品衛生上問題のない未利用食材を加工し、エキスや調味料(ソース、醤油、料理酒等)として再利用する。

用語解説

咀嚼
摂取した食物を歯で咬み、粉砕すること。これにより消化を助け、栄養をとることができる。噛む。

嚥下
飲み下すこと。食物を認識して口に取り込むことに始まり、胃に至るまでの一連の過程を指す。

誤嚥
間違って食べ物を気管内に飲み込むこと。喉周辺の筋肉や嚥下中枢(延髄)機能が衰えた高齢者に事故が多い。


発明の名称 植物組織への酵素急速導入法
特許権者/出願人 広島県
出願番号(出願日) 特願2002-90535 (2002.3.28)
公開番号(公開日) 特開2003-284522 (2003.10.7)
特許番号(登録日) 特許第3686912号 (2005.6.17)
FI A23L 1/212
関連特許情報 特願2007-264554、 特開2007-252323 (2007.10.4)、 特開2008-11794 (2008.1.24)
問い合わせ先名称 広島県立総合技術研究所 食品工業技術センター
郵便番号 732-0816
住所 広島県広島市南区比治山本町12番70号
電話 082-251-7433
FAX 082-251-6087
URL http://www.syokuhin-kg.pref.hiroshima.jp/