第4回 植物の水ストレスをみる新しい土壌水分量計

土壌の水分量ではなく、植物の水分ストレスで灌水タイミングを判断できる安価な土壌水分測定装置。

【イラスト】 宇田未央

技術概要・ポイント

土壌の水分量を把握する方法として、土壌の体積含水率や含水比などの水分量を測定するものと、土壌水分の圧力水頭(pF値)を測定するものに大別される。
植物の灌水タイミングを計る方法としては、植物により土中の水を吸い上げる力が異なるため、植物が受けている水ストレスを把握する圧力水頭を用いることが望ましい。
しかし、水ストレスを把握する圧力水頭を用いる方法は、テンシオメータや真空計など専用機器が必要で高額になるという欠点や、土壌がpF2.8以上の乾燥状態になると正確に測定できないという欠点があった。
本シーズでは、pF2.8以上の乾燥状態において、下端にポーラスカップが取り付けられている透明な管体のみを用いることで、低水分領域の土壌の乾燥程度を測定できることを確認した。

技術の横展開、マーケットの状況、規模

農地灌水市場は、自治体予算により左右されるものの都市部の屋上緑化などの働きかけもあり、市場規模として2,000億円(2001年)から3,600億円(2010年)と成長が見込まれている。
本シーズの装置は、非常に小型で安価で製造できるため、一般農家・園芸家向けに販売する方法や、散水装置のセンサーの1つとして機能させる方法など、さまざまな用途が考えられる。海外農家への輸出も考えられるが、大規模な工業化された農業よりは、小規模な(むしろ家庭的な)農家への販売の可能性が高い。

ユーザー業界・活用アイデア

ユーザー業界 業界キーワード 活用アイデア タイトル / 活用アイデア ガイヨウ
園芸サービス業
産業用機械・装置製造業
散水機、スプリンクラー、
自動散水、水分量測定、
造園管理、省力化、省人化
樹木の水分ストレス感知式自動散水システム
散水機やスプリンクラー設備に連結し、本シーズである簡易土壌水分計をセンサー代わりにして、樹木の水分ストレス量に応じた散水量・散水時間を自動制御するシステムを提供する。
土木建築工事業
産業用機械・装置製造業
情報処理・提供サービス業
屋上緑化、壁面緑化、
自動散水システム、
造園管理、省力化、省人化
屋上緑化・壁面緑化の自動散水システム
東京都など大都市部では屋上緑化・壁面緑化をっ義務付けているが、土壌量は少なく小まめな散水が必要である。
本シーズは小型・軽量・安価であるため、そのような個々の植生の乾燥状況を監視し、必要量の散水制御を可能とする。
生活雑貨製品製造業
精密機械器具製造業
園芸サービス業
湿度センサー、室内湿度、
ビニールハウス、水収支、
自動散水、省力化、省人化
ビニールハウス内の水収支センサー
本シーズの簡易土壌水分計を地中ではなく、空中に吊るすことで、蒸発量を算出できる。空中に吊することで、ビニールハウス内の植物からの蒸発量を監視し、適切な水分量管理が可能となる。

用語解説

圧力水頭
対象とする位置での水圧(p)の大きさを,水柱の高さ(H)に換算して表したもの。

灌水
水を与えること。

ポーラスカップ
長細い円筒形のパイプの先に素焼きでできた集液カップがついたもの。


発明の名称 低水分領域における土壌水分測定方法及び測定装置
特許権者/出願人 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
出願番号(出願日) 特願2006-10063 (2006.1.18)
公開番号(公開日) 特開2007-192631 (2007.8.2)
FI G01N 33/24
問い合わせ先名称 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター
郵便番号 721-8514
住所 広島県福山市西深津町6丁目12番1号
電話 084-923-4100
FAX 084-924-7893
URL http://wenarc.naro.affrc.go.jp/