第22回 茎や枝を曲げて形をコントロールする方法

植物の成長にあわせて伸びる茎を、誘引器具と誘引手順を用いて都合が良い方向へ制御する方法。

【イラスト】 宇田未央

早わかり!ディスプロの見た脳勝考連携

「茎や枝を曲げて形をコントロールする方法」
今回の視点は「つらさ指数」。つらさ指数とは「快適な農業労働実現のために作業姿勢区分」を表すため、立った姿勢で空箱を運ぶような作業を1として、収穫作業や足腰に負担のかかる作業姿勢になるに従って10までの区分をしたもの。10は20kgの収穫品を入れた箱を運ぶ、6は収穫箱詰めと区分されています。確かに重い。つらい。
農作業には腰を曲げて行う作業があり、更に重量がかかる作業の負担は作業しにくい姿勢になるとなおさら大変。このシーズはアスパラをそのまま育てると葉の部分が邪魔になって茎の収穫がしにくい。だから茎を曲げてしまおう。なんとシンプルな考え方。曲がってくれる茎に感謝。
ただシーズ的には正直なところビジネスになりにくいかも。上手な使い方を思いついた方は、まず試してみてください。農機具の開発にはつらさ指数を用いると表現しやすいです。ご参考まで。

ディスプロ 桑原 良弘

技術概要・ポイント

本シーズは、アスパラガスの栽培を例にとって実施している。屋根などの雨除けのない露地でのアスパラガスの全期立茎栽培における労働時間は、10アールあたり358時間で、収穫盛期の5月?9月では269時間となっている。この間の労働時間の約8割は収穫作業が占め、つらさ指数 10の作業が46%、つらさ指数6の作業が27%となっている。具体的には、大きく育成した母茎と収穫すべき若茎が混在するアスパラガス圃場で中腰姿勢になり何時間も収穫作業を行っている。
本シーズは、この母茎の立茎位置と若茎の発生位置を分離させるように、母茎がまだ若い時期に半円筒状資材と傾斜角を保持するU字型ピン(針金)を用いて、地際に押し倒して、母茎を立茎させる栽培方法である。
母茎を押し倒さない従来の慣行栽培に比べ、誘引時の若茎の折れや受光量不足から規格品収量は1割減少するものの収穫作業の負担は大きく軽減されている。
誘引器具を用いた植物の成長方向の制御技術はアスパラガスに限らず植物の成長方向を制御したい分野で活用できる。

技術の横展開、マーケットの状況、規模

日本におけるアスパラガスの作付面積は、6,390ha、収穫量は28,000tである。県別収穫量で見てみると、長野県が全体の23%を占めて第1位、ついで北海道(16%)、長崎県(10%)、佐賀県(9%)と続く。国内生産量が減少する10月?3月まではオーストラリア、フィリピン、メキシコ、アメリカなどから輸入される。世界でみると、その生産量は6,571千トンで中国が約88%、5,806千トンを占め、ついでペルー、アメリカと続き、日本は第10位となる。
本シーズは、アスパラガスに限定するものではなく、広く植物の茎の方向制御方法と捉えれば、その市場は造園分野、花・果物分野等への広がりを見せる。

ユーザー業界・活用アイデア

ユーザー業界 業界キーワード 活用アイデア タイトル / 活用アイデア ガイヨウ
園芸サービス業
生活雑貨製品製造業
盆栽、松、樹形、植木、園芸、造園、曲がる 茎や枝を好きな方向へ制御する盆栽用具
誘引器具および誘引方法(対象植物、その誘引時期、誘引角度等のノウハウ)をセットにして販売する。盆栽好きなマニア向け商材。ホームセンター等で販売しても良い。
園芸サービス業
百貨店・総合スーパー
生活関連サービス業
フラワーアート、造園、生け花、鑑賞用、お花、華道、
フラワーアレンジメント
生け花用の花の育成用具
主に、鑑賞用として飾られるお木花の商材開発用具として、造園業者に販売する。自然ではありえない創造的な形状(例えば、螺旋状・四角状等)をした木花をこの用具で創造し、花屋等へ販売する。

用語解説

露地
屋根などの覆いのない地面のこと。露地栽培、露地いちごなどという。

つらさ指数
工場等の作業評価・改善のために、作業負担に対応した姿勢分類に基づき作業工程の姿勢を評価する方法。

 

発明の名称 アスパラガスの若茎の誘引方法およびそれに用いる誘引具
特許権者/出願人 広島県
出願番号(出願日) 特願2007-66973 (2007.3.15)
公開番号(公開日) 特開2008-220330 (2008.9.25)
FI A01G 1/02
問い合わせ先名称 広島県立総合技術研究所 農業技術センター
郵便番号 739-0151
住所 広島県東広島市八本松町原6869号
電話 082-429-0522
FAX 082-429-0551
URL http://www.pref.hiroshima.lg.jp/page/1199767413375/index.html