第20回 圧力による静菌作用で魚介類のエキスを生産

酵素分解工程を食塩無添加で短期間に実現する技術。魚介類等を1日でエキス化することが可能。

【イラスト】 銀杏早苗

早わかり!ディスプロの見た脳勝考連携

今回の技術は商用化された実績ある技術です。とはいえユーザーやアイデアは無限です。公的機関の特許を活用することはとてもお得でかつ地域のためにもなると思います。レストランなどの現場での調理や化粧品にも使われています。
環境にも安全にも役立つ優れた技術です。
今回は動画サイトのご紹介で皆さんのご理解を深めてもらえれば幸いです。

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ディスプロ 桑原 良弘

技術概要・ポイント

従来、魚介類の発酵・熟成(エキス化)は、食塩を添加し長い期間をかけて行ってきた。
例えば、魚醤油等は、腐敗を防ぐために20%以上の食塩を添加し、半年から2年掛けて製造している。出来上がった調味料等の製品には、高濃度の塩分を含み、その後の利用方法が限られることになる。
本シーズは食塩の代わりに圧力を用いて腐敗菌の増殖を抑え,自己消化酵素または添加酵素によって短期間で食品素材を分解し調味料となるエキスを得る技術である。魚分解エキスの例でいうと、食塩を添加することなく、わずか1日で魚からエキスを得ることができた。しかも、既存製品と比較し、全アミノ酸が1.5?2倍、グルタミン酸が1.3倍と旨味、こく味が増しあと味が強いのが特徴となっている。 なお、本シーズは魚介類に限定されるものではなく、肉・野菜等のエキス化にも応用可能である。

技術の横展開、マーケットの状況、規模

農水省のエキス生産実態調査結果によると、加工エキス生産量は2004年度約88,165t、05年度約81,946t、06年度約93,176tと推移している。これは安心で安全な天然調味料の人気回復や、健康志向によるサプリメント摂取量の増大に裏付けられていると考えられる。
本シーズにより、塩分の入っていない天然調味料などの製造が可能であり、これからの長寿高齢化社会で様々な食料品への適用が期待される。また、酵素分解工程の短時間化技術を応用すれば、食品廃棄物の分解、バイオ燃料の分解、藻・苔・クラゲ等有害動植物の分解などにもその可能性は広がる。

ユーザー業界・活用アイデア

ユーザー業界 業界キーワード 活用アイデア タイトル / 活用アイデア ガイヨウ
飲料・酒類製造業
産業用機械・装置製造業
各種サービス業
焼酎粕、搾り粕、食品廃棄物、分解、エキス化、発酵、熟成、リサイクル 焼酎粕、搾り粕のエキス化装置、及びそのエキスの販売
法改正による海洋投棄できなくなった焼酎粕等の搾り粕は、産業廃棄物で大きな課題となっている。そのような食品廃棄物を本シーズでエキス化し、再利用できない廃棄物の最小化を可能とする。また、生産したエキスを販売し収益化する。
生活関連サービス業
産業用機械・装置製造業
漁業
バイオ、燃料、海藻、分解、
発酵、メタン、コジェネ、
自然エネルギー
バイオ燃料生成装置
食物に依存しないバイオ燃料として、食用できない海藻類がクローズアップされているが、植物系燃料の発酵を促進する仕組みに本シーズを適用する。短時間で発酵・熟成しガス化効率アップに結び付ける。
食料品製造業
調味料製造業
電気機械器具製造業
味付け、調理器、浸漬、
エキス、熟成、短時間、高圧、料理
短時間に味付けできる調理器
さまざまな味付け(ダシ・エキス状)を肉類・穀類等に短時間に浸漬する調理器。圧力ガマの要領で短時間に味付けできる調理器。業務用、一般用。

用語解説

発酵
酵母等の微生物が嫌気条件下で有機化合物を酸化して、アルコール、有機酸、CO2等を生成すること。

熟成
魚肉・獣肉などが酵素の作用により分解され特殊な風味・うま味が出ること。発酵の後、更に味をならすこと。

 

発明の名称 調味料の製造方法
特許権者/出願人 広島県
出願番号(出願日) 特願平11-304958 (1999.10.27)
公開番号(公開日) 特開2001-120219 (2001.5.8)
特許番号(登録日) 特許第3475328号 (2003.9.26)
FI A23L 1/227
問い合わせ先名称 広島県立総合技術研究所 食品工業技術センター
郵便番号 732-0816
住所 広島県広島市南区比治山本町12番70号
電話 082-251-7433
FAX 082-251-6087
URL http://www.syokuhin-kg.pref.hiroshima.jp/