第18回 冷凍カニ脚の殻とカニ肉の分離装置

冷凍されたカニ脚を、冷凍状態のままで殻とカニ肉に分離し、良好なカニ肉を取り出すことができる。

【イラスト】 銀杏早苗

早わかり!ディスプロの見た脳勝考連携

寒くなってくるとカニしゃぶがおいしい季節になりますよね。中国地域ですとやっぱり鳥取県が有名です。この技術は広島ですが。

さてこの技術ですが、例えば仕出しなどのお弁当屋さん。カニ弁当を大量受注。この時とばかりに注文に応えたい。原料はあるのに殻剥きは時間もかかるし人では限られている。
ジャ?ン、カニ殻分離機…!!
となるわけです。
いろいろな地域でカニ弁当が増えることを期待したいものです。

ディスプロ 桑原 良弘

技術概要・ポイント

国内で消費されるカニの多くは、ロシア・カナダ・米国等からの輸入冷凍カニである。輸入される冷凍カニは、ボイル後に脱甲し、2つに裁断された半製品状態で入荷され、それを国内の加工業者が剥き身、爪、棒状といった製品に仕上げ、国内市場に販売している。この国内加工業者の作業は多くの場合手作業で、結果、多くの労働力を必要とする(=人件費がかかる)作業のために、ある程度解凍するのでカニ肉の品質劣化をもたらす。同時に雑菌の繁殖を促進してしまう、等の問題が発生していた。
本シーズは、これらの問題を解決するための冷凍のカニ脚から殻とカニ肉を機械的に分離する装置に関するものである。
そのポイントは、冷凍カニ脚の殻とカニ肉が凍結温度に依存する破断ひずみと破断応力の特徴を持つことに起因している。-17℃より温度が高いとカニ肉から水分が出てしまい、-40℃より温度が低いと殻と一緒にカニ肉が破壊されてしまう。-18℃?-40℃の間が最適であることを突き止めた。

技術の横展開、マーケットの状況、規模

日本の輸入カニ量は、2006年95,551トンで、その内冷凍カニは約48,000トンである。国内での漁獲量は減少傾向にあるものの、世界的な漁獲量は増加しており、日本もその輸入カニの割合は年々高くなっている。
また、水産加工機の国内市場規模は、2002年212億円から2006年192億円へと少しずつではあるが、減少傾向にあり、ツネザワ商事・タイヨ-製作所・秋山機械など、カニ脚加工機械を製造販売しているメーカーは健在である。
本シーズの装置は、冷凍状態のまま加工ができるので、生産性の向上、品質の安定、原価低減が期待できる。ニッチ市場ではあるものの、リプレイスチャンスは十分にあると期待できる。

ユーザー業界・活用アイデア

ユーザー業界 業界キーワード 活用アイデア タイトル / 活用アイデア ガイヨウ
産業用機械・装置製造業
機械・同部分品製造業
漁業
冷凍貝、貝肉、加工 冷凍貝から貝肉を分離する装置
冷凍カニと同様に冷凍貝を対象として、貝殻と貝肉の凍結特性を抽出し、その温度差を利用することで、冷凍状態のまま貝のむき身を取り出すことを可能とする。
産業用機械・装置製造業
機械・同部分品製造業
漁業
冷凍ロブスター、ロブスター、
加工
冷凍ロブスターからロブスター肉を分離する装置
冷凍カニと同様に海外から輸入する冷凍ロブスターを対象として、ロブスターの殻と肉との凍結特性を抽出し、その温度差を利用することで、冷凍状態のままロブスター肉を取り出すことを可能とする(伊勢海老、うちわエビも同様)。
産業用機械・装置製造業
機械・同部分品製造業
漁業
冷凍エビ、海老、加工 氷から冷凍エビを分離する装置
冷凍カニと同様に海外から輸入する氷中凍結エビ等を対象として、エビと氷との凍結特性を抽出し、その温度差を利用することで、冷凍状態のままエビを氷から取り出すことを可能とする(ブラックタイガー、車エビ等も同様)。

用語解説

破断ひずみ
材料工学・材料力学において、材料の破断時に発生する形状変化(変形)そのものを意味する。

破断応力
破断時に、その外力とつりあいを保つ為に内部に生じる力の大きさや作用方向を表現する物理量。

 

発明の名称 冷凍カニの加工方法および加工装置
特許権者/出願人 国立大学法人広島大学
出願番号(出願日) 特願2004-93836 (2004.3.26)
公開番号(公開日) 特開2005-278423 (2005.10.13)
特許番号(登録日) 特許第4078428号 (2008.2.15)
FI A22C 29/00
問い合わせ先名称 広島大学 産学連携センター 国際・産学連携部門
郵便番号 739-0046
住所 広島県東広島市鏡山3丁目10番31号
電話 082-421-3631
FAX 082-421-3639
URL http://www.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html