第12回 生物系界面活性剤の生産方法

従来、量産化できなかった糖脂質を生産できる微生物(酵母)を特定した。

【イラスト】 銀杏早苗

技術概要・ポイント

バイオサーファクタントは、環境問題を伴う化学合成由来の界面活性剤と異なり、生分解性が高い(=安全性高)、抗菌性や免疫賦活性の生物活性を示す等の利点を持っている生物系界面活性剤であるため、食品、医薬品、化学工業等への応用が検討されている。 バイオサーファクタントの一種で糖脂質から生産されるマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)には、A,B,C,Dの4つの種類が知られており、既にA,Bを量産する酵母は発見されているが、Cを生産できる酵母は発見されていなかった。CはA,Bに比べ水溶性が高く産業利用しやすいというメリットがある。 本シーズでは、このMEL-Cを主成分とする生産物を効率よく生産する酵母を発見し、この酵母により生産したMEL-Cが水性媒体に容易に水和し、ラメラ液晶など各種リオトロピック液晶を形成できることを突き止めた。これにより、化粧品や医薬品の安定化剤としても有用であることを裏付けている。

技術の横展開、マーケットの状況、規模

2007年度界面活性剤関連の国内生産は100万tを超え、市場規模も2,100億円を超えている。 1992年頃、生産量のピークを迎え、その後国内市場の飽和、海外進出にともなう国内空洞化が進み、2005年その縮小に歯止めが掛かり、現在は年間100万t強で推移している。 しかし、化学合成由来の界面活性剤は環境問題、環境ホルモンが与える影響など、社会的に敬遠される傾向にあり、コストの関係上、簡単には生物系界面活性剤に置き代われないものの、そのニーズは依然として高い。 本シーズにより量産化できるMEL-Cは、化粧品・医薬品・日用品・工業用品と適用できる市場は広い。

ユーザー業界・活用アイデア

ユーザー業界 業界キーワード 活用アイデア タイトル / 活用アイデア ガイヨウ
農業サービス業
調味料製造業
機械・同部分品製造業
界面活性剤、撥水剤、
防曇・展着剤、潤滑剤、
帯電防止剤、媒染剤、
防錆剤、金属圧延油、生物系
生物系表面処理剤
多方面の工業分野で使用されている表面処理剤を生物系表面処理剤に置き換える。量産効果により価格をできるだけ落とす。日本国内に限らず、中国・アジアへ輸出する。
生活雑貨製品製造業
石油化学製品製造業
飲食店・宿泊業
洗剤、除菌、抗菌、滅菌、
消臭、無臭、生物系、家庭、飲食品、ホテル、旅館
生物系洗剤
一般家庭向け洗剤。生物系であることを前面に出し、排水のクリーンさをアピールする。同時に、除菌・消臭効果をうたう。あわせて、飲食店・ホテル等の接客業にも展開する(環境配慮によるイメージアップ)。
生活雑貨製品製造業
病院・医療・福祉
生活関連サービス業
除菌、抗菌、滅菌、消臭、
無臭、安全、衛生、生物系、ペット、介護、病院、
生物系消臭・抗菌スプレー
病院、介護施設、ペット、ペット施設等をターゲットに、生物系で口に入れても安全な消臭・抗菌スプレーとして販売。特に、高齢化、ペット増加を市場ターゲットにする。

用語解説

界面活性剤
分子内に水になじみやすい部分(親水基)と、油になじみやすい部分(親油基・疎水基)を持つ物質の総称。

バイオサーファクタント
レシチン、サポニン等の生体成分由来の界面活性剤。

リオトロピック液晶
ある種の物質を液体(溶媒)に溶かして、その濃度を適当に調節した時に液晶状態になるもの。

ラメラ液晶
高分子構造の一つ。肌や毛髪において水分と油分の理想的な配置バラン スのことをラメラ液晶構造という。

 

発明の名称 マンノシルエリスリトールリピッドの製造方法
特許権者/出願人 学校法人鶴学園他
出願番号(出願日) 特願2006-331073 (2006.12.7)
公開番号(公開日) 特開2008-79600 (2008.4.10)
FI C12N 1/14
問い合わせ先名称 広島工業大学 共同研究支援室
郵便番号 731-5193
住所 広島県広島市佐伯区三宅2丁目1番1号
電話 082-921-4222
FAX 082-921-8963
URL http://www.it-hiroshima.ac.jp/